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準備書面6(全文)

令和6年(ワ)第34626号 名誉毀損損害賠償等請求事件
原告 谷賢一
被告 株式会社東邦出版

準備書面(6)

令和7年11月5日

東京地方裁判所民事第1部合議2係 御中

[黒塗り]

真実性の争点に関しては、大内氏との別件訴訟^1における主張立証内容とほぼ重複するため、まずは別件訴訟の経過状況も含めて結論付けられた判断を総括する。別件訴訟では、裁判所が作成したペーパー(「セクハラ行為等について)大内氏が迎合的な態度を示すことがあった」「(レイプ被害について)大内氏の立証に隘路がある」(甲15)があるが、この判断につきる。なお、この中身も当然に和解交渉の中で両者の合意を得た内容である。

その上で、次回に第3準備書面の内容に対しても、必要な範囲で反論を行う予定である。

第1 結論について

本件訴訟で、被告は「動かし難い事実」を自己に有利に設定して我田引水の主張を展開する。

しかしながら、本件で一番重要なのは、大内氏の証言の信用性である。大内氏の証言の信用性を一切検討せずに論じても結論には辿り着かない(薄い灰色をいくつも集めても黒にはならない)。

そして、別件訴訟の過程において、大内氏の主張には中心かつ重大部分で明らかに虚偽があったことが判明した。とりわけ「レイプ被害直後に谷氏が入ってこないようにシャワールームから友人にSOSの意味で送信した」という印象的な描写^2及び当該LINE(午前3時11分。乙56・1枚目、別件訴訟甲3)の証拠提出があったところ、谷が自身のGPS記録(乙54、別件訴訟乙11)を証拠提出し反証が成立した。実はその時間は大内氏宅に到着した直後であり、それ以外にも詳細に説明した経過事実(甲20、別件訴訟第1準備書面47?50頁)が全くのデタラメであったことが明らかとなった。

また、セクハラ行為等についても、谷が劇団主宰者の権威を利用して、大内氏が嫌がるところを無理やりに迫ってそれに耐えるしかなかったというストーリーであったが、以下の第三者の複数証言及び谷と大内氏とのLINEのやり取りにより、当該ストーリーは根底から崩壊した。

  • 「大内さんが谷さんに強く抗議していたのを見たことがあるかと問われると、その記憶はありません。この裁判で谷さんが主張しているような、『「減るもんじゃない」触りたきゃ、ちょっとだけならどうぞ』というように聞こえることを大内さんが言っていた記憶もあります。」(乙63・2頁、別件訴訟甲34)
  • 「『触っていいですよ』と言っていたのになあ、ということです。触ったらそれはセクハラですけど、でも『触っていいよ』って本人がその時には言っていたのに、そうなっちゃうんだなって。でも、それは時間が経って、他の第三者的な人に『それおかしいよ』って言われて、その通りなのかもしれませんが、その時は、少なくともその瞬間は、そうではなかったです。」(乙64・2頁、別件訴訟乙7)
  • 「谷さんの前に立って、彩加ちゃんがこういう感じ(左右の手をそれぞれ腰より上に当て、肘を外側に突出すポーズを示す)だった。・・・(言葉は)『触っていいですよ』と言っていました」(乙64・2?3頁)
  • 「谷に限らず、胸を触らせてコミュニケーションを取るというか、『触っていいですよ』みたいなノリがあったと思います。『おっぱい乗せて触っていいよ』というくだりはあったと思います。」(乙65・7頁、別件訴訟乙8)

このように、大内氏の致命的な虚偽説明をも踏まえて、大内氏の証言が信用できないということで別件訴訟の趨勢は早々に決した。谷は、2023年9月6日付「別件訴訟準備書面(3)」(甲9)以降、和解が成立した翌年11月27日まで、新たな準備書面を提出していない。それ以上、積極的に主張する必要もなかったからである。

なお、後出しで出された[黒塗り]氏(以下「[黒塗り]氏」という。)の陳述書(乙60、別件訴訟甲35)についても尋問の必要性なしとして、証人採用されていない。

この間、尋問の実施及び判決に消極的な裁判所による和解の積極的な勧めがあり、裁判官交代後にようやく尋問期日が決まった。そして、尋問後にも和解の勧めがあり、裁定和解に至る考えをまとめたペーパー(甲15)の文案を含めて、大内氏は当初和解を拒んでいたが、谷が名誉毀損での反訴・別訴予定であることを伝えると、大内氏の代理人の熱心な説得もあり最終的には和解に応じた。

和解直後の大内氏及び谷の公表文をみれば、かかる経緯は明らかである。谷は「性行為の強要がなかったことが受け入れられた」と明確に述べているが(甲14)、他方で、大内氏は「谷氏からレイプされた」旨は一切述べていない(乙23)^3。仮に大内氏がその旨を発言すれば、新たに名誉毀損行為が成立するからである。

以上のとおり、大内氏がレイプ被害経緯の中核部分及びセクハラ行為のきっかけ部分等につき虚偽説明を行った点で別件訴訟の心証は固まっていたのである。後は、大内氏を嘘つきとして最後まで追い込まないように、例えば、大内氏が一部のみしか証拠提出しなかったLINEにつき、谷が求めた文書提出命令による全面開示が棄却されたことからも分かるように(甲21、甲22)、裁判所、大内氏代理人、谷側が配慮して和解で解決したのが実情^4である。

なお、被告指摘のとおり、谷は大内氏和解金を支払っている。しかし、これまでに述べたように、名誉毀損を理由に損害請求を行えば認められたであろうが(裁判所からも金額交渉の余地がある示唆はあったが、あえて減額交渉は申し入れていない)、自己に非があった部分(仮に「おっぱい触っていいよ」と言われても触るべきではなかったこと)について潔く責任を認め、また訴訟を早期に終結させるためにかかる交渉は行っていない。谷は反省すべき点について公表文で謝罪しており(甲14)、当事者間の終結の仕方であるので守秘義務がかけてあるが、むしろきちんと責任を取るべき部分は取ったのであり、別にことさらに隠す意図もない(閲覧制限の申立ても行っていない。)。

本件騒動で残る始末は、正義感からなのか、それとも閲覧者数稼ぎのためか判然としないが、大内氏の主張について十分な裏取りもせずに、無責任かつセンセーショナルに流布した者が、その責任をきちんととることである。

第2 別件訴訟におけるセクハラ行為等の外形事実について

1 はじめに

前述のとおり、別件訴訟における谷の準備書面(1)?(3)及び第三者の目撃証言による反論で足り、少なくとも、大内氏が主張するような嫌がるところを無理やりに迫ったという外形行為^5の存在については、否定されている。

2 大内氏の主張及び谷の反論等の内容について

別件訴訟における主要部分の大内氏主張及びこれに対する谷の反論の概要等は、以下のとおりである。さらに細かい論点はあったものの、以下の(1)?(3)のとおり、大内氏主張の信用性が崩れたため、それら細かい論点は問題にならなかった。裁判所も「外形上、嫌がるところを無理やりに迫った」という話は認めておらず、「大内氏が迎合的な態度を示していた」と判断している。

(1)胸を触わるようになったきっかけについて

【大内氏主張】

要求に応じて肩を揉むと、谷は手を伸ばして大内氏の胸を揉むように触ってくるのが常だった。大内氏が嫌がっても谷は本気にせず止めなかった(乙7、別件訴訟訴状2?3頁)。

【谷反論】

大内氏のほうから「おっぱい触っていいよ」と迫ってきたのであり、嫌がるところを一方的に触ったわけではない(甲10、別件訴訟準備書面(3)14頁)。

⇒ 前述のとおり、谷の反論を裏付ける第三者の目撃証言あり。

(2)2018年6月29日のセクハラ行為の有無

【大内氏主張】

2018年6月29日、劇団の稽古後の飲み会が終わって電車で帰宅中、駅のホームで、谷は大内氏を後ろから羽交い絞めにし、服の上から胸を揉むように触った(乙7、別件訴訟訴状3頁)。

【谷反論】

当日の飲み会は中座して別の会合に合流しており、大内氏と一緒に帰宅していない(甲10、別件訴訟準備書面(3)32頁)。

⇒ 谷の行動を裏付けるGPS記録あり(甲23、別件訴訟乙12)。

⇒ 大内氏からは、GPS記録が提出されていない。

(3)大内氏と谷とのLINEやり取りの内容・意味

【大内氏主張】

谷が苦痛を感じる大内氏に対して卑猥な言葉のLINEを頻繁に送付してきた(乙7、別件訴訟訴状5頁)。

【谷反論】

証拠のLINE(乙8の2、別件訴訟甲4?6)は切り取りであり、その後の追加開示されたLINE等も踏まえて、大内氏が「谷さんロスなので人手必要であればお手伝いしたいです![黒塗り]さんとか[黒塗り]さんがいらっしゃるのであれば私は不必要でしょうが・・・」(甲24・1頁、別件訴訟甲4の3)、「えーめっちゃ広い良いなあ これはデリヘル呼ぶ」「お薬沢山飲んで寝ましょ」「そして早くさいかちゃんと遊んでください」(甲24・2頁、別件訴訟甲7の3)など発言していることがうかがえ、双方向のやり取りであった(甲9、別件訴訟準備書面(1)12頁)。

⇒ 真実の解明を求め、谷が大内氏に対して全LINEの開示を求めた文書提出命令で、裁判所は「両者間のたわいもないやり取りや、大内氏が谷氏に対して好意的であると受け取れる対応を取ったやり取りなど、谷の主張にも沿うやり取りが含まれており、外形的・表面的な両者の関係性に関しては、当事者間に大きな争いがあるとはいえない」と判断し、それ以上の開示は不要と判断した(甲21)。

(4)2021年3月11日以降の状況

【大内氏主張】

2021年3月11日以降、身体的接触はなくなったが、胸を触るなどの行為がなくなって以降、谷から大内氏へのパワーハラスメントが激しくなった(乙7、別件訴訟訴状9頁)。

【谷反論】

2022年2月の公演で主役に抜擢していることからも、腹いせにハラスメントを働いたというストーリーは崩壊している(甲9、別件訴訟準備書面(1)2頁)。

⇒ 客観的事実によるストーリーの崩壊及びこの当時のハラスメントを裏付けるLINE等の証拠は大内氏から一切提出されていない。

(5)谷による優越的地位の利用行為の有無

【大内氏主張】

故郷である福島の演劇祭に関わるため(登用されるため)には、谷の機嫌を害さずハラスメントに耐えるしかなかった(乙7、別件訴訟訴状3頁)。

【谷反論】

ハラスメントが開始したとされる時点(2018年6月)で、福島の演劇祭について漠然としたレベルの企画しかなく「協力しろ」(甲24・1頁、別件訴訟甲4の3)と一般的に言ったのであり、それを餌にするような具体的言動・利用行為はない。

⇒ むしろ福島の演劇祭参加に人一倍思い入れがあった大内氏が出演できなかったことを強く恨んで、インパクトのある“レイプ被害”という虚偽のストーリーをでっち上げて、当該演劇祭の直前に谷を告発して演劇祭そのものを中止に追い込んだのであり、嘘を付いた動機としても合理的に説明が付けられる(甲10、別件訴訟準備書面(3)31頁)。

(6)関係者等によるSNSによる証言

【大内氏主張】

谷は大内氏以外の女性に対しても胸や尻を触るなどのセクシャルハラスメントを常習的に行っていた。それらについて劇団公演に関わった複数の者が証言している(甲20、別件訴訟第1準備書面6頁)。

【谷反論】

過去に冗談やノリのつもりで胸や尻を触ったことや言動等は否定しないが、ハラスメントが開始したとされる時点(2018年6月)では抑制的になっており、セクハラに関していえば、大内氏以外は[黒塗り]氏に対してのみである。[黒塗り]氏は、谷よりも先輩で長年の関係性があり気心が知れていた特別な存在であった(甲10・7頁。甲26、別件訴訟甲21)。

その他のSNSによる証言等も、谷が自認する範囲での裏付けにはなるが、大内氏が主張するような被害(「優越的な地位にあることに乗じ」「嫌がっても本気にせずやめなかった」「毎回強い精神的苦痛を受けていた」「胸を触るなどの行為がなくなって以降は谷から大内氏へのパワーハラスメントが激しくなった」)とは次元を異にする内容であり、関連性・証明力に乏しい(甲10、別件訴訟準備書面(3)7頁)。

具体的には、①2018年6月以降か以前の話かはっきりしない、②2018年6月以降で、[黒塗り]氏及び大内氏以外の不特定に触ったという事実はうかがえない、③パワハラの指摘についてもその内容・程度が一概でない上に、証言者の主観は分かるが客観的状況の詳細(谷による開けっ広げの言動が多い)が不明瞭であり、社会通念上の許容範囲を超えているか等については疑義がある(甲10、別件訴訟準備書面(3)9頁)。

第3 別件訴訟におけるレイプ被害等の有無について

1 はじめに

これも別件訴訟における谷側の準備書面(1)^6及び(3)^7の内容で、大内氏のレイプ被害状況の核心部分について虚偽が明るみとなっており、その時点で信用できない旨の判断は決している。

当該準備書面(3)後に出された証拠・尋問、本件訴訟で提出された新証拠については、第5項で詳細に述べる。

2 大内氏の主張及び谷の反論等の内容について

別件訴訟における主要部分の大内氏主張及びこれに対する谷の反論の概要等は、以下のとおりである。

(1)自宅に行く前の経緯に関する説明について

【大内氏主張】(甲20、別件訴訟第1準備書面47頁)

東大駒場駅のガード下で、他のメンバーが帰った2018年7月27日午前0時以降からタクシーに乗った午前0時半ごろまで、谷は大内氏の服の中に手を入れて乳首を直接に触るなどしてきた。

大内氏は、「いやすぎます。やめてください」と何度も大声で述べたが、周囲は人通りもなくなっており、通行人に助けを求めるということができなかった。

「(谷が)自宅に帰宅するための終電はまだぎりぎりある時間ではないかと思われたが」、強引に「お前んちいくぞ」とタクシーを止めた。

タクシーに乗ったのは午前0時半頃、大内氏宅に到着したのは1時頃、1時半頃にレイプ行為の開始があり、性交を止めたのが午前2時頃であった。

【谷反論】

翌日は休みであり、深夜遅くまで飲酒する予定であった。駅近くのコンビニで酒を買ってガード下でだらだらと飲んでいた。遅い時間であったので、近くの大内氏宅に泊めてもらうことになった。タクシーに乗ったのは午前2時44分、大内宅に着いたのは午前3時頃である(甲9、別件訴訟準備書面(1)23頁、甲10、別件訴訟準備書面(3)23頁)。

⇒ 谷の主張を裏付けるGPS記録(乙54、別件訴訟乙11)の提出後、大内氏は「記憶違い」であると自らのGPS記録(乙53、別件訴訟甲58)も提出し撤回した(甲25、別件訴訟第2準備書面9頁)。

⇒ そもそも、午前0時半には「明大前行き」の最終列車があり、学生街で夏休み中であることも考えると、0時半に人気が全然ないというのは信用できない。また、0時半と午前3時近くでは風景は全く異なるはずである。さらに、大内氏は、自身が抱いた印象(終電はまだぎりぎりあるのに)などと、時間及び経過について説明しており、単なる記憶違いでは合理的な説明が付かず、虚偽の評価を免れない。

(2)途中にコンビニに寄った事実の有無

【大内氏主張】(甲20、別件訴訟第1準備書面48頁)

タクシーから降りて大内氏宅の近くのコンビニで、谷が愛飲しているスミノフを購入した。大内氏宅に着いてからスミノフを全部飲んでいた。

【谷反論】

コンビニに寄って購入した事実はない。

⇒ 谷と大内氏GPS記録(乙53、乙54)にコンビニに寄った履歴が残っていない。

⇒ 徒歩120m移動した「4分」の記録は残されており(乙53)、当該コンビニ(尋問で「ローソン」と回答)は大内氏宅から広い大通りを渡ったところにあるから、買い物時間・横断歩道を渡る時間等も考慮すると、GPS記録に残っていないのは不自然である。

⇒ 証言の具体性・信用性を増すために、「スミノフ」の話をでっち上げたと推認される。

(3)“レイプ”直後の行動の説明について

【大内氏主張】(甲20、別件訴訟第1準備書面49頁)

性交までされてしまったことが気持ち悪くてならず、シャワーを浴びた。友人女性([黒塗り]。以下「[黒塗り]氏」という。)に「気持ちを吐き出したくなり、シャワーを浴びた後、万一にも谷が入ってこないようにとドアを閉めたシャワールームから午前3時11分にLINE『谷さんを連れて帰ってほしかったと今切に思っているよ』」(乙56、別件訴訟甲3)を送った。

【谷反論】

午前3時ごろは、大内氏宅に着いた直後であり、レイプを行う時間もない。

⇒ GPS記録(乙54、別件訴訟乙11)により、谷の主張が正しいことが立証された。すると、大内氏は「その後に起きることであろうことの不安を吐露したものであった」(甲25、別件訴訟第2準備書面10頁)と説明を変遷させた。

繰り返すが、シャワーを浴びた経緯、谷が入って来ないように必死な気持ちで送信したという状況等の説明について間違えるはずがなく、虚偽を述べていたとしか説明できない。

⇒ 本件訴訟で、大内氏は[黒塗り]氏に送信した午前2時35分及び午前2時40分のLINE(乙55)を新規に証拠提出しているが、当該時間帯に対する認識・把握があったにもかかわらず、レイプ被害を受けた直後である旨の説明をしていたことになる。

⇒ [黒塗り]氏宛のLINE(乙56)は、被告の記事でも「性被害を受けた翌日の2018年7月27日に、大内さんが女性俳優とやり取りしたLINEの画像」として紹介されている。

(4)“レイプ”最中の経緯の説明について

【大内氏主張】(甲20、別件訴訟第1準備書面48頁)

大内氏は強く抵抗したが、谷の力は強く、下半身の服を全てはぎとってしまうなど強引に性交しようとしてきた。大内氏は暴れ続けたが、本当に性交されてしまうと危機感を抱き「お願いだからゴムをつけて下さい」と述べたが「ゴムなんかつけなくても妊娠しない」などと男性器を押し付けた。その後、渋々とコンドームを装着した。

【谷反論】

そもそも、暴れ続けている大内氏を押さえつけ、強引に服をはぎ取り「ゴムを付ける必要ない」と言っており、さらに男性器は少し挿入されていた状態であった(乙48、大内氏尋問調書31頁)というのに、突然に薄暗闇の中でコンドームを探し当てて、さらに自ら装着したなどの経緯は不自然である(甲10、別件訴訟準備書面(3)30頁)。

(5)“レイプ”直後の朝の友人女性([黒塗り]氏)とのLINE内容について

これについては、本件訴訟で新しいLINE(乙59)も提出されたので、第5の2で詳述する。

(6)“レイプ被害”数週間以後の大内氏と谷とのLINEやり取り

【谷主張】(甲9、別件訴訟準備書面(1)25頁)

“レイプ被害”後、大内氏と谷とのLINEのやり取りにおいて、レイプがあったことを推認させるやり取りはなく、むしろ大内氏が自発的に甘えた内容のLINEを送るなど距離を縮めようとしていたことがうかがえる。具体的には、以下のやり取りがあった(甲24)。

  • 約1週間後の8月3日、大内氏は「エッセイの依頼、おめでとうございます」「谷さんいないのは寂しいですが、頑張ります」と自ら送信している。また、谷から「いま一瞬電話できる?」とのメッセージを受けると、即座に電話をかけている。
  • 約3週間の8月15日、大内氏は「谷さん谷さん」「谷さんロスなので人手必要であればお手伝いしたいです![黒塗り]さんとか[黒塗り]さんがいらっしゃるのであれば私は不必要でしょうか・・・」とのメッセージを自分のほうから送っている。
  • 1カ月経過後の9月1日、大内氏は「お薬沢山飲んで寝ましょ」「そして早くさいかちゃんと遊んでください」と送信している。

第4 B男(別件訴訟での呼称)と大内氏との関係性について

1 はじめに

別件訴訟では、大内氏が提出した[黒塗り]氏宛のLINE証拠(乙56、別件訴訟甲4の3)にB男と谷とを比較したやり取りがあったこと、大内氏とB男との関係性が大内氏と谷との関係性と同様な構図があり、大内氏の証言の信用性の基となるパーソナリティ・行動特徴を明らかする狙いから、谷は、B男との関係性について言及した(詳細は、別件訴訟準備書面(1)5頁及び準備書面(3)16頁)。

そして、別件訴訟においては、当事者間で合意があったためあえて実名を出さなかったが、本件訴訟では関連した新規の追加証拠(乙55)もあり、証拠評価に際して実態を正確に反映させるため、実名を明らかにする。B男とは、[黒塗り]の「[黒塗り]」に参加した俳優で、既婚者の[黒塗り]氏(以下「[黒塗り]氏」という。)である。

2 [黒塗り]氏と大内氏との関係性について

[黒塗り]氏は、[黒塗り]において[黒塗り]と呼ばれる役であり、大内氏は[黒塗り]一緒に登場するシーンが多かった。

このため、二人で一緒に稽古をすることが多くなり、そのうちに2人がいつも一緒にいて距離が近すぎるということで(乙64・6頁「弁当を作って持ってきたり、いつも二人で帰っていた」、乙65・2頁「肩を揉ませていた光景としては見た記憶がある」)、他の出演者である[黒塗り]氏や[黒塗り]氏などから「不倫みたいな感じの雰囲気を出していて、そういうのを稽古場に持ち込まないでほしい」(乙64・6頁)旨^8のクレームが出された。

谷は、大内氏が[黒塗り]氏に無理やりに付き合わせさせられているのかと心配し、自ら、また制作担当の女性の[黒塗り]氏にも確認させると、自らの意思で一緒に帰ったりマッサージをしたりしている旨の回答であった(乙64・6頁)。

谷が、[黒塗り]氏にも確認すると、[黒塗り]氏は「そんな風に思われているとは思わなかった」と非常に驚いた様子であり、「そんなことであれば次回は降板する」ということで続編には参加しなかった。

ところが、[黒塗り]公演[黒塗り]での[黒塗り]氏のキャスティングが決まると、大内氏は周囲に「[黒塗り]氏からセクハラされていた。一緒にやりたくない」と吹聴し始めた。

要するに、少なくとも外形的には、大内氏は嫌がる態度を(不同意)を示していたというよりも、むしろ積極的意思で[黒塗り]氏との近い距離を取っていたように周囲からは認識されていたが、後から本人が否定するようになったのである。谷氏を告発した構図と同様である。

3 交際関係にあったこと

大内氏は、別件訴訟において、[黒塗り]氏との関係性について、「露骨に性的関心を示し谷と同様の行為をしてきたが、それに対して『迎合的な態度をとらざるを得なかった』」旨説明している(甲20、別件訴訟第1準備書面43頁)。

しかしながら、別件訴訟経過後に追加提出されたLINE及び本人尋問等によって以下のことが明らかとなっており、迎合どころから、[黒塗り]氏とは交際関係(不倫関係)にあったと推認できる。

【LINE(乙56、別件訴訟甲3の3。なお、分かりやすいようにマスキング部分に[黒塗り]氏の名前を入れた)】

「[黒塗り]さんは臭くないから大丈夫」

「[黒塗り]さんに会いたいって思う私もどうかしてるけれど、[黒塗り]さんに関しては好きとかじゃなくなんかもう頼れる大人として話聞いてほしい」

「5日まで精神的に支えてくれる[黒塗り]さんの方が何億倍もマシだよ」

「[黒塗り]さんも外でキスしてくるから結局だめなんかもしれない」

「あの人、結局帰る場所にちゃんと帰るし、その方が割り切ってて気楽」

「[黒塗り]さんは舞台終わった後、私の部屋に行かないようにするとか関係終わらせるとか最初言っていたんだけど」(太字は本件訴訟原告による協調)

「彩加が求めるなら、それで俺もタイミングが合えば行くからってなったからね」

「[黒塗り]さんに食べてほしくて作ろうと思ったんだけれど」

【大内氏本人尋問】

「私は身内でさえ自分の部屋に入れるのが、生理的に無理なくらいの潔癖症を持っております。衛生上、自分の部屋に自ら、何かオーケーだって思った人を入れるのが本当にだめ」(7頁)

「私の部屋に行かないようにするとか関係終わらせるとか言っていた人は、[黒塗り]さんであるかについて『はい』と回答」(35頁)

第5 その他の証拠について

1 はじめに

本件訴訟では、別件訴訟で提出されていなかった新たな証拠(乙59、乙61、)が提出されており、別件訴訟での経緯・主張状況も含めて、当該証拠の評価等を中心に論じる。

2 大内氏と[黒塗り]氏とのLINE証拠について

(1)はじめに

“レイプ被害”の証拠として、大内氏と[黒塗り]氏との以下のLINEが提出されているので、それらについて検討する。

A:シャワー室から被害直後に送付したとされる午前3時11分のLINE(乙56・1枚目)

⇒ 前述のとおり、別件訴訟において送信状況・趣旨に関する当初説明が虚偽だったことが判明した。

B:レイプ被害後の朝のやり取り(乙56)

C:本件訴訟での新証拠(乙59)

(2)B:レイプ被害後の朝のやり取り(乙56)の評価について

これらのLINE内容からは、以下のとおり、レイプ被害の存在を推認できない(甲9、別件訴訟準備書面(1)24頁)。

第一に、肝心のレイプ被害について言及がない(その後のやり取りでも、レイプ被害をうかがわせるやり取りはない)。

第二に、谷がいなくなった午前8時58分(GPS記録・乙54)以降も、電話で[黒塗り]氏に直接の助けを呼ぶでもなく、LINEにおいて[黒塗り]氏との関係性等の“ガールズトーク”を午前9時42分まで連続でやり取りしており、レイプ被害直後の恐怖・切迫感・悲壮感その他感情を読み取ることができない。

(3)[黒塗り]氏にLINEを送付した意図

大内氏は、谷氏からレイプ被害を含めて[黒塗り]氏について相談する関係性にあったはずだが、“レイプ犯人”たる谷と「最近連絡を取っているか」と尋ねられたところ、実際には頻繁にやり取りをしていたにもかかわらず(甲24)、「元気かなー忙しそうだなと思って連絡してないや」「ビジネス青春」(甲27・3枚目、別件訴訟甲3の3)などと虚偽の返答をしている。

しかも“レイプ被害”からまだ約2週間しか経過していない。

もしレイプ被害を相談するような間柄(甲2「彼女も谷からパワーハラスメントを受けていました。2人で傷をなめ合うことしかできなかった」)であったのであるならば、嘘をつく必要性はなく不自然なやり取りである。

大内氏が[黒塗り]氏に思わせぶりなLINEを送付した意図としては、冒頭に「あと、●●言ってたけれど嫉妬してたって本当?クズ既婚者二人に愛されたって意味ないから大丈夫だよ!(笑)」と送信しているように、または直後の「私この先ダルからで仕事取っても身体使ったとか思われてしまうんかな」という内容からもうかがえるように、文字通り、自分は谷や[黒塗り]氏と望んで距離を縮めているわけではなく本当は嫌だというアピール(嫉妬を防ぐための予防線を張るため)が主眼であったと推認される(甲9、別件訴訟準備書面(1)25頁)。

(3)C:新証拠について

被告は、本件訴訟において、大内氏と[黒塗り]氏とのLINEのやり取りについて、乙59「[黒塗り]ちゃんにも言ってたけれどさ、谷さんにレイプされたことあったやん」の新証拠を出しているので、それについて証拠価値を論じる。

ア レイプ被害直後の相談を意味していないこと

大内氏と[黒塗り]氏にとって、谷による“レイプ”は衝撃的な出来事であり、「あのできごと」や「あのレイプ」などの表現、あるいは直接に「谷さんにレイプされたことあったやん」で通じるはずである。

ところが、「言ったことがあるけど」と前置きを付けた言い方をしている。

これは、レイプ直後に相談・共有したのではなく、大内氏が谷に恨みをいだくようになってから事後的に[黒塗り]氏に対して「実はレイプされていた」と説明したことを意味している。

イ 別件訴訟では谷の文書提出命令による全面開示(判断は棄却)でも提出されなかった内容であること

別件訴訟において、谷は、大内氏と[黒塗り]氏とのLINEが一部分のみの抜粋で状況を正しく理解できないとして、大内氏に対して全部の任意提出及び文書提出命令(甲22)を申し立てるなど証拠開示を求めたが、乙59の内容については提出されていない。

なぜ大内氏は、別件訴訟では提出しなかったのか。すなわち、当時提出すると、その前後も文書提出命令によって提出を迫られるリスクがあり、自己の主張に矛盾する内容が明るみになってしまうことを恐れたからである(「事情をよく知らないから協力できない」などのコメントがある可能性が高い)。要は、本件証拠は、完全な後出しであり信用できない。

(4)[黒塗り]氏が大内氏に協力していないこと

何より、[黒塗り]氏が大内氏に協力して陳述書の提出や証言をしないことが全てを物語る。[黒塗り]氏を含めて多数の関係者が谷に批判的なコメントを出しており、また谷自身が演劇業界に対して何らのパワーも有していないこと等はこれまでの推移をみても明らかであり、むしろ「水に落ちた犬を打つ」ことは簡単なのであるから何ら躊躇うところはない。

[黒塗り]氏は、大内氏とのLINE内容からも窺い知れるように、真面目で思慮深い性格であり、ゆえに大内氏の人物像もよく知っており、真実を曲げてまで協力することができなかったのであろう。

3 [黒塗り]氏の陳述書(乙60)及びLINE(乙61)について

(1)はじめに

“レイプ被害”の証拠として、[黒塗り]氏は谷からのレイプ被害の相談を受けたと証言しており、本件訴訟においてLINE(乙61)を新しい証拠として提出している。

(2)陳述書(乙60)について

別件訴訟でも弾劾主張を行っており(甲10、別件訴訟準備書面(3)27頁)、証人採用されなかったのは上述のとおりである。

具体的には、[黒塗り]氏の陳述書が訴訟終盤に唐突に提出されたこと、大内氏との関係性も不明であること(実際、乙61をみると単なるバイト仲間の親しい友人という関係にとどまらない)、内容自体について不自然さがあること等を反論した。

(3)LINE(乙61)について

ア 谷からのレイプ被害を意味していないこと

第一に、そもそも大内氏の送信内容は「私はあんたらが付き合ってる間に楽しくレイプされてしまった~~~爆笑」という記載で、深刻な内容ではなく、レイプ被害にあって心配を共有していたという陳述書内容(乙60)とは心象風景が合致しない。

第二に、こちらがより重要であるが、[黒塗り]氏は「それは俺のせいじゃないとか言いそうじゃね元カレ」と返信しているが、この元カレというのは、当時の状況からすると、交際関係にあった[黒塗り]氏を意味している可能性が強く推認される。

そうすると、あくまでも可能性の指摘にとどめるが、大内氏は[黒塗り]氏と距離を縮める中で半ばなし崩し的に性行為をされてしまった、しかし新しい慣れない環境(公演)の中で支えが欲しかったため[黒塗り]氏とその後も関係を続けてしまった、そして、いざ谷に対する恨みを晴らす際に[黒塗り]氏にされたレイプ被害とをすり替えて吹聴した、このため事実関係について虚偽を話してしまい墓穴を掘ったという経緯は十分にありうるところである。

なお、大内氏は、谷以外にも「今まで共演した役者3名からそれぞれ受けた性被害は今でも忘れられませんし、屈辱的で、どれも年配の男性からでした」(甲28、別件訴訟甲46の3)と述べており、これも上記可能性を裏付ける。

イ 別件訴訟で提出されなかったこと

谷は、別件訴訟で[黒塗り]氏陳述書を弾劾するにあたって「本件では原告(大内氏)と[黒塗り]の間のSNSやメールが証拠として提出されておらず、・・・親しい友人として被害の詳細を聞いているのであれば、2018年8月以降現在に至るまでの間に、被害の詳細に言及するやり取りがあってしかるべきである。その証拠が一切提出されず、[黒塗り]の陳述書のみで提出されているということは、・・・信用できない」(甲10・28頁)と反論している。

しかしながら、この反論を踏まえても、乙61は別件訴訟において証拠提出されてない。なぜ大内氏が提出しなかったのかは、前述のとおり、文書提出命令による開示を恐れたからである。

4 [黒塗り]氏へのLINE(乙55)の評価について

被告は、当該LINE内容「谷さんが恐ろしいことになってます」について「谷氏によるアプローチが執拗なものであったことが推認できる」と主張する(第3準備書面14頁)。

しかしながら、そもそも駒場東大前駅付近で、嫌がっているのに羽交い絞めにされて服の中に手を入れて胸を揉まれているような状況であったのであれば、端的に助けを求めるメッセージを送信するのが自然であろう。[黒塗り]氏は[黒塗り]氏が主宰する有名劇団に所属しており、谷に対して遠慮する必要性もない。

大内氏は、[黒塗り]氏との“レイプ被害”後のLINEにおいて「[黒塗り]さんは夜中に送った私のLINE返さない限りこっちからは連絡今日しない」(乙56・3枚目、午前8時45分)と、[黒塗り]氏宛LINEを意識していることからも、むしろ谷の存在をぶつけて[黒塗り]氏の反応・フォローを求める意図があったことが主眼であることが推認される。

以上

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