※以下、めちゃくちゃ生々しい話です。演劇に夢を見ていたいお客さまなどは、見ない方がいいかもしれません!
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ダルカラ次回公演オーディションの要項では、ギャランティと稽古期間を明記しました。
1ステージ1.5万円、稽古期間は2週間。
これ、業界的にはとんでもない設定で、よく裏事情を知ってる人ほど「どうやってるんだ?」と思うはずです。
俳優がきちんと生活できて、稽古に集中できるギャラを出しつつ、作品クオリティも落とさない。そのために、だいぶ工夫しました。少し説明します。
ギャラについて
演劇の俳優ギャラは、1ステージ1.5万円というのが一つの基準です。助成金をもらってる舞台や、商業演劇がこれくらい。もちろん何万人も動員するミュージカルや、俳優自身が人気、あるいはベテランだったりする場合は、2万円、3万円と上がります。
(僕が聞いた中で、最も高いギャラをとる俳優は1ステージ50万円でした。これはもう、例外中の例外です。結構意外な人なので、当ててみてください)
しかし小劇場ではノーギャラ、あるいは1ステ3000円なんてのも珍しくありません。あるいはチケットバック、1枚につき500円とか。これじゃあとても生活できない。だから多くの俳優は稽古後、深夜にバイトをしたり、公演のない期間に貯金をしたりする。あと「実家が太いと続けやすい」と言われるのもこのためです。
今回ダルカラでは、俳優の出演料、1ステージあたり1万5,000円を実現しました。15~20ステージ前後を予定しているので、トータルの出演料は約30万円。助成金なし・僕個人の持ち出しもなしでです。めちゃくちゃ頑張りました。何度も予算を組み直し、徹底的にコストを削って、何とか達成した額です。
大切なのは、「演劇は俳優がいなければ成立しない」という当たり前の事実です。しかし実際には、俳優への支払いが一番後回しにされがちです。スタッフにはしっかりギャラが払われてるのに俳優はノーギャラということは珍しくなく、過去何度もこのことについて論争が起きてきました。
たとえば。
「舞台監督や照明のプロがいないと、安全に幕が開けられない」
「制作がいなければ、どんないい作品でも観客に届けられない」
これらはすべて、本当にその通りです。僕も、これらスタッフの専門性やその対価を軽く見ていいとは思っていません。
ただ、同じように俳優にも支払われるべきだというだけのことです。
舞台監督がいないと安全に上演はできないし、制作がいないと上演はお客さんに届かない。でも俳優がいないとそもそも上演自体ができない。……はずなんだけど、俳優ギャラは、実際は一番低く設定される。
その理由は、経済学、需要と供給のバランスで説明できます。俳優をやりたい人は多すぎる。明らかに過当競争です。すると需要と供給のバランスが崩れ、どうしても単価は下がる。そういう仕組です。
でも、そこで開き直っていいのか。あくまで演劇の中心は俳優のはずだ……ということで、今回はこう設定しました。また過去の劇団公演でも、多いときは2~3万円のギャラを出していました。最近「俳優の労働環境整備」が叫ばれるたび、いろいろと権利や安全のことが語られます。そういったことはうちも契約書の中に盛り込んでいますが、そもそも普通のお仕事だって、報酬って超大事なはずです。ここを低く設定したままで、いいわけがない。
ただし今回の公演は、財政的にかなり苦しい。助成金はゼロ、以前と比べて集客力も落ちているはず。ただし今回、作品内容が「何もない空間を俳優の力だけで変える」というテーマだったので、照明や音響をカットした他、あらゆる点でコストカット&効率化し、俳優のギャラだけを残すことで、1.5万円を実現しました。
稽古に集中できる、尊重されていると思える条件で、俳優たちにいい仕事をしてもらいたいと思っています。
稽古期間について
今回、稽古期間はたったの2週間と設定しました。これは別に、僕がサボってるわけじゃないんです。僕も本当はもっと稽古したい。やってよければ2ヶ月くらいやりたい。稽古好きなので。
でも、そうすると何が起きるか? ……また俳優のギャラ単価が下がるんです。
なぜなら上記の通り、1人の俳優に30万円払っていても、本番3週間+稽古2ヶ月あったらどうなるか? 約3ヶ月で30万円ということになるから、月収は10万円まで下がります。今、東京で暮らすにはだいぶ苦しい額です。しかも俳優はよく「失業前提の職業」と言われます。今月は役があっても、そこから半年オーディション全滅、収入ゼロ……なんてことはまったく珍しくない。となると、だいぶ苦しくなってくる。
つまり、稽古期間を短くしないと、俳優の収入は上がらない。稽古を減らさないと、俳優の生活は結局苦しいままなんです。
しかし、何も考えず、ただ稽古を減らせば舞台のクオリティが下がってしまう。
そこで考えた結論が、「稽古開始の1ヶ月前までに完成台本を必ず渡しておく」というやり方です。これなら稽古までの1ヶ月、それぞれじっくり台本を読み込んで、演技プランが考えられる。セリフも覚えておける。初日から全員トップギアでセッションができる。何なら初日にいきなり通し稽古だってできる(過去にやったことあります)。演出家も初日までにミザンスを切っておいて、立ち稽古から入れる。必要なら事前にオンラインで読み合わせをしたり、不安な俳優とは相談する時間をとってあげたり、演出プランを文章や図で渡しておいたり……。やりようはいくらでもある。(本さえあれば)
小劇場ではよく、脚本ができてないせいで、稽古の序盤ずーっとワークショップやエチュードをやってる……なんてことがあります。僕の知ってる某劇団は、3ヶ月稽古をして演出家が現場に来るのは最後の2週間、なんてとこもあります。実際、発見や蓄積も多いし、創作においては豊かでクリエイティブな時間なんですが、若く貧しい俳優にとってはだいぶつらい。
あと、実は俳優の方でも「もっと稽古したい」という人がいるのも確かです。以前ご一緒した某宝塚の某トップ俳優さんは、「稽古は1日でも多い方がいい」「お客さまの前に立つ前に一度でも多くセリフを言いたい」と言っていました。大ベテランになってもそれくらい客前は怖い。俳優の方でも「稽古は多い方がいい」という声があるのも事実です。
しかしここで、「じゃあ時間がある人、稽古したい人だけ集まって、自主的に稽古しよう!」とか言い出すと、また別の問題が出てきます。これ、「本当に来たい人だけでいいからね」といくら念押ししても、若手俳優や「自分は未熟」「お荷物になっている」と思い込んでる人ほど、「自分だけ行かないのは気まずい」「私が断れるわけがない」と考えてしまう。そんで結局、全員強制参加と同じになってしまう。
(本当なら僕はここで「断れる力」を持ってほしいと思いますが、それはもう演劇というより社会や教育の問題です)
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これらすべての事情を組み合わせた結果が、「ギャラは最大、稽古期間は最短」という今回の作戦です。劇作家である僕がちゃんと書き上げれば可能なので、まだ半年前ですが、もうプロットをまとめはじめました。稽古開始の1ヶ月前、12月の中旬には必ず書き上げて渡そうと思っています。
最近の小劇場では、感染症対策とかハラスメント対策、インティマシーコーディネーターをはじめとする専門家の周知はだいぶ進んだものの、「あいかわらず俳優のギャラが出ない」といったケースが多々あると聞きました(友人から)。でも、ギャラは大事です。どんな人でも就職先を選ぶとき、労働環境や福利厚生も気にするけれど、年収はもっと大事です。
僕は、優秀な俳優には、小劇場でもきちんとギャラが支払われるべきだと思います。演劇の核は、俳優だからです。
ただし、演劇や音楽の界隈だと、なかなかこれが言いづらい。「俺たちは金のためにやってんじゃねえ」というのは、やっぱり美談になるし、カッコいい。ただし一歩間違うと、やりがい搾取と紙一重になる。難しいとこですが、うちは今回いろいろ工夫してみて、俳優ファースト、俳優に全振りして、公演をやってみることにしました。
俳優たちにきちんと支払いつつ、徹底的に効率化して、クオリティも落とさない。この辺の工夫をしないと、演劇のチケット代は無尽蔵に上がり続け、いよいよ演劇は死ぬでしょう。俳優を活かすことは、演劇そのものを活かすことにも繋がるはずです。
ぜひ、熱意あるいい俳優たちと、効率のいい、充実した稽古がしたいと思います。「我こそは」と思う方は、オーディションご応募ください。8/23(日)まで受け付けています。
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以下、応援プランの方々向けに、だいぶ生臭い演劇予算の話を紹介します。なんで商業では再現なくチケット代が上がってしまうのか? 気になる方は、ぜひ応援プランご加入お願いいたします。