
17日間東北をぶらついた。いよいよ東京に帰ってきて、人混みにげんなりしつつ、田舎モンが東京出てきて最初に思う「はえー、やっぱ東京ってすげぇなぁ」と思うあの感じを追体験できた。過剰なまでに何でもあるが、やはり過剰にゴミゴミしていて息苦しい。どうして俺たちはこんな街に住みたいって思ってんだろう。
東京と福島は、思ったより近くて離れている。新幹線で1時間半と、とても近い。ただし途轍もなく離れている。
智恵子は東京に空が無いといふ。
ほんとの空が見たいといふ。私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切っても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。阿多多羅山の山の上に
毎日出ている青い空が
智恵子のほんとうの空だといふ。あどけない空の話である。
──高村光太郎『智恵子抄』収録「あどけない話」より
福島を知らない人のために書いておくと、「阿多多羅山(安達太良山)」とは福島にある一番有名な山のことです。安達太良山に限らず、福島には「ほんとの空」があちこちにある。もちろん原発のあった町にも、津波でさらわれた沿岸部にも。