豊橋にて、『白蟻の巣』ツアー最後の土地。いま、明かりづくり中。
照明家と照明チームが張り切ってやっているので、僕はただ指をくわえて横から見ている。見ているのもバカみたいだったので、今はバックヤードに来て次の仕事の先鞭をつけている。本当はとても気持ちが悪い。これから本番があくというのに、別の芝居のことを考えているのだから。
1月からずっと『白蟻の巣』をやってきて、つまり2017年は1月から3月まで、1年の1/4をこの作品に捧げていたということになる。鳥居みゆきの台本を書いたりリトル・ヴォイスの翻訳をやったりと、同時進行していたものも確かにあったが、三島と付き合う1/4年であったから、いよいよ終わるとなると何だか不思議な気持ちがする。
『白蟻の巣』をやるために、周辺情報としてずいぶん三島由紀夫の文章は読んだし調べもした。彼の書いたものや考えたことは、たしかに自分の血肉になった実感がある。彼の峻厳さ、精神の高貴さには挑発された。君はそんな惰弱なことを考えているのかね。と問われている気が、今でもする。
自分は今年で35になる。人生の折り返しに来たわけだ。これまでの35年で作ってきた自分からは、そう簡単に逃れられないだろう。これからは言葉を弄することではなく、行為としての言葉が求められるし、自分の作風や文章を変えたり作ったりしていくためには、考えることよりも行為・行動をすることが重要になるだろう。それくらい自分というものが固まってしまった実感がある。年をとるというのは恐ろしいことだが、生活を変えることでまだ僕は変わっていけると思っている。
さあもう一度ぼくは青春をはじめるんだ。やっと通行許可証をもらえたんだ。右は僕にとってしか右でないし、左も僕にとってしか左ではない。