ふいっと、雑に、酔ってしまった夜なんかには、昔の人にいたずらのような、奇跡を期待するような、そんな連絡をしてみたくなる。
もう帰り道なんてないんだということは、十分にわかっているんだ。交差点を超えてしまった後で振り返ってみたところで、交差点はもう消えている。机の上にただ、アボカドとササミをマヨネーズとワサビで和えたあの料理が乗っかっているかもしれないけれど、それはもう遠い過去の話なんだ。自分の人生とは交差しない食べ物なんだ。
頑張って生きてきたので、今の自分の人生にあまり後悔はない。しかし数多あった可能性を考えると、ときどき胸が苦しくもなる。かと言って帰りたいとはもう思わない。あの動くおもちと仲良く暮らしていきたいと思う。
くだらないことにこだわってしまったのさ、あんたは。つまらないことに人生を賭けてしまったのさ、君は。自分でも気づいているんだろう? 復讐のような、仕返しのような形で君は板の上を生きようとした。それは過ちなんだよ。そんな、その程度の気持ちでやれるほど、演劇は甘くないんだ。君は僕の苦悩をほとんど知らないだろう。何故なら僕は喋らなかったからね。山頂の空気はとても冷たい。流れ星を見つめる夜。
とても幸せな時間を過ごしている、そんな実感を一つ一つ積み重ねていって、だけど、しかし、ついてしまった傷はもう絶対に消えないんだなぁ。僕の人生は、おもしろい経路を辿っている。明日はもっとよくなるし、明後日はずっとよくなるし、再来年にはすごいことになっていると思うんだ。