先月からやっていた講座「物語を書く技術」、第1期が終了しました。ご参加・見学いただいた皆様、どうもありがとうございました。戯曲の書き方なんていうニッチ過ぎる内容ですがアーカイブ視聴も入れると最終的に2000人近くの方にご視聴いただき、かつ発表会ではかなり個性的な作品が並びました。僕も読んでいて楽しかったです。
その収穫と反省点を踏まえて、さっそく「第2期」をキックオフしようと思っています。以下、振り返りと第2期のご案内です。
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振り返ってみて
まず参加者の皆様の反応を見つつ講座全体を点検し、大きなロードマップは間違っていないと確信できたのはとてもよかった。ただし、ちょっと専門的にしすぎたのは反省点だ。もっと初心者に優しく要点を絞りつつ、高度な内容はコラムやエッセイなどに逃そうと思う。
むしろ最大の問題は、無料にしたためドタキャンが増えたことだった。……これはワークショップなんかでも必ず起きることで、直感に反するけれど、無料にすると人は来なくなる。逆にお金をとると「損してたまるか」心理が働き、出席率が倍増するのだ。それで泣く泣く地上のすべての劇団は当日精算を廃止する。
今回は「戯曲を書く」という個人プレーなので「まあいいか」と思っていたけど、講義の中で他の人の書いたものを読むことが実はとっても勉強になる。それにもともと定員オーバーでかなりの数の人を断っていたのも申し訳なかった。
そんで講義の打ち上げでは参加者の皆様と「次は有料化しましょうか」「お金とるべきですよ、これ」なんて話をしてたんだが、やはり癪だ。面白くない。「ああやっぱり金か」と思われるのも嫌だし、本当にお金に困ってる若い劇作家だっている。
もちろん「数千円なら少しバイトすりゃ稼げるんだから働け」という指摘は正しい。また「知識や技術はタダで売るべきじゃない」というのも演劇界ではよく言われる。でも今や世の中はフリーミアムやオープンソースなど知財を無料で行き渡らせ、社会全体を発展させつつ、きちんと事業としても継続させる。そういうビジネススタイルが広がっている。
そして今僕がやってるのは、脚本の技術をどれだけ凝縮したコンテンツにまとめるかということと、どれだけ多くの人にリーチできるかということだ。有償化すれば安定はするが、それらの目的と相反してしまう。
そこでこんな「ネクストプラン」を考えてみた。
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ネクストプラン
まず講座全体をいつでも見れる20分程度の「講義動画」と、週に一度オンラインで質問できる「質疑応答&宿題添削ライブ配信」にスプリットする。宿題ができた人はどんどん次のコマへ進んでもらい、つまづいた人やより詳しく知りたい人に時間を使う。こうすることでより多くの参加者が、自由なタイミングで参加できるようになるだろう。もちろんどちらも、誰でも無料で視聴・参加できる。
ねらいはいくつかある。
まず今回の講義中、「いつでも割って入って質問してくださいね」と繰り返し言ったが、やはり人の話を遮って質問するのは難しい。案の定、最後の質疑応答にだけ大量の質問が集中した。ならば講義は事前にそれぞれ好きな時間に見てもらい、質疑応答の時間を分離させればいい。
そして質問と添削の時間では、書ける人や経験者はどんどん先に進んでもらいつつ、むしろうまくいかなかった人、つまづいてしまった人に時間をかけてあげる。
また宿題も「いつでも提出してね」というスタイルでやっていたが、そうすると人間、どうしても先延ばしにしてしまう。別に面倒見る義理はないのだが、〆切は設定した方が良さそうだ。僕も〆切のない原稿は書けない。今もそうだ。作家にとって〆切は敵じゃない。一番の味方なのだ。
こないだ喋った3本の講義動画も、自分で言うのも何だがよくまとまっていて市販の脚本指南書に圧勝してると思う。しかし1時間半もの講義をYouTubeで見るのはかなり苦痛だ。「本気で目指すならそれくらいの努力は当然」と言う人もいるかもしれないけど、なんかもうそういう世の中でもないよねって思う。後継者のいない伝統工芸の親方が「最初の5年は掃除と飯炊き。これも大事な修行。できるヤツだけ弟子入りを許す」と言ってるのと近いものを感じる。そういうことしてると、滅ぶ。
これらの第2期プランは「どれだけリーチできるか」という僕の目標にも合致する。演劇に興味のない人にも見てもらいたい。そもそもこの講義の名前は「物語を書く技術」だ。戯曲に限定していない。
演劇に限らない。僕の野心はそういうところにある。
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告知
というわけで、以下のような感じで、全5回くらいの動画&宿題提出に再編集し、第二期戯曲講座をスタートしてみよう。
講座「物語を書く技術」第2期
参加条件:無料、どなたでも
最終目標:箱書きを完成させ、5~10分ほどの短編戯曲を書き上げること。
1.戯曲の構造を分析する 宿題:構造分析
2.旅と対立を理解しよう 宿題:ログラインを書いてみる
3.キャラクターの作り方 宿題:人物表
4.人の登退場こそすべて 宿題:箱書き
5.実用執筆テクニック集 宿題:短い戯曲を書いてみる
※必要に応じて補足やスピンオフの動画やエッセイ・論考など
ちょっと今週いきなりは難しそうなので、来週くらいを目掛けてやろうかなと思います。鉄は熱いうちに打てとも言うしね。
そこで「ぜひ参加したい」「見学したい」、「案内を聞き逃したくない」という方は、こちらのメールグループにご登録ください。僕しか投稿できない設定になっており、かつ他の参加者にお名前や連絡先などが漏れることはないようになっています。今回、完全匿名orペンネームOK、オンラインだけで参加できたことも評判がよかったので、良いところは引き継ぎたいと思います。
講座「物語を書く技術」メールグループ
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人の作品を読むのは本当に楽しかった。また古い友だちや作家仲間も参加してくれていて、技術論に花を咲かせたのも良い時間であった。次はもっと楽しく、もっと深い講座にしたいと思っているので、難しそうだな……と思った人もぜひ参加してみてくださいね。「物語が書ける」って、いいもんですよ。
