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上手に話すためのたった1つの方法

こちらは明日開催される、演劇の創作セッションの参加者の方に向けたご案内です。

ご案内メールで何度も書きましたけれども、明日は何の準備もいりません。持ち物も、暗記もありません。なるべく楽しい、リラックスした気持ちで来てください。僕はプロの劇作家ですから、うまくいかなかったら「お前のせいだ!」僕のせいにしてください(笑)。それくらいがちょうどいい。

それでも、「どうしても不安だ」「心配です」「自分は本当に、本当に、本当に本当に本当に本当に初心者だから!!」という方もいらっしゃるので、一つだけ。過去に初心者向けのワークショップもたくさんやってきた経験上、僕は、うまく喋れない原因はたった一つだと思っています。それは……。

「何を伝えたいのか」を忘れて、「上手に話す」ことばかりを優先してしまう。これです。

「上手に話す」と聞くと、抑揚、滑舌、声量、構成、身振り手振り、レトリックなどが思い浮かびますよね。まずこういうの、一切考えるのはやめましょう。無理です。これはだいぶ高度な訓練が必要なもので、会得には何年もかかります。内容もテキトーでいいです。難しい四字熟語とか、コアコンピタンスとかわけわからない横文字なんかは特にいらない。テクニックばっかの薄っぺらいスピーチ。一番やばいのって、ああいうのじゃないですか?

しかし。演劇は、絵筆や楽器を通じてではなく、人間をそのまんま、自分の体と声で表す芸術です。つまり、実はあなたは普段、正解をやっているはずなんです。さらに我々は、判で押したような「よくできた」スピーチは面白いとはまったく思わない。その人らしさが滲み出ているような、へったくそなスピーチの方がよっぽど面白い。だから二重の意味で、上手に喋らない方がいい。

話すうえで必要なのは、「これだけは伝えねばならぬ」という真ん中のイメージだけです。他は些細な問題です。伝わっていないなと思ったらもう一度言えばいいし、言い忘れたら後から足せばいい。間違えたら言い直せばいいし、「絶対伝えるぞ」と思って喋ってれば、我々は適切に自分のスピーチを修正できる。

人前に立つと話せなくなるのは、「上手に喋ろう」という意識ばっかりが前に出て、「本当に伝えたいものが相手に伝わったか」という視点が、どっか行っちゃうからです。だから早口になったり、上滑ったりする。

今回、皆さんに話してほしいのは、「あなただけが知っている何か」という極めて特権的なものです。忘れられない友達の変な一言。あなただけが知っている妙な風景。体験。言葉。自分だけが見たことのある、家族や恋人のエピソード。そういうものですから、つまり、あなたしか知りません。正解はあなたしか知らないので、誰にも不正解と言われる筋合いはない(!)。ちょっとくらい間違っても大丈夫です。

ただし、あなたしかそれを知らないので、あなたにはそれを伝える責務がある。それをまず、自分の中ではっきり思い浮かべましょう。あとは、相手に伝わるまで、何度も喋ればいい。

(実は劇作もこれと同じなんですね。世界中で自分しか知らないものを、みんなに伝わるように喋る。自分しか知らないからこそ、世界中に伝える責務がある。伝わるまで、何度も書き直す)

上手に喋る必要はないんですね。むしろ、ぜったい上手に喋ろうとしない方がいい。逆説的ですが、上手に話すためのたった一つの方法は、上手に話そうとしないことです。明日は、ぜひそんな気持ちでお越しください。

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