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未上演戯曲『家を壊す』他・短編、無料公開

2022年末に上演中止された戯曲『家を壊す』他・短編5点を、無料公開します。以下、自由にダウンロードできます。どれも私の作品ですが、上演や出版に関するあらゆる権利を放棄します。ご自由にお楽しみください。

戯曲

『家を壊す』 1時間ほどの短編戯曲。5場、出演者4人

リーディング上演用短編小説

『高校の校庭』 短編小説、2ページ

『子供の声』 短編小説、2ページ

『朝』 短編小説、1ページ

『住民懇談会』 短編小説、4ページ

『この町のいいところ』 短編小説、1ページ

ㅤ→戯曲+短編5本まとめてダウンロード!

解説

これらの作品は、2022年末、福島で上演する予定でした。

当時僕は、原発事故による強制退避で人口ゼロになってしまった町、福島県双葉町に移住し、町に密着した作品を書いていました。双葉町は、岸田國士戯曲賞・鶴屋南北戯曲賞をダブル受賞した『福島3部作』の舞台となった町です。これらはすべて、現地住民の方に聞かせてもらったエピソードを元に作られた、ドキュメンタリー的な演劇作品です。このあとも、双葉町に住みながら、こういった作品を発表し続けていく予定でした。

「話題作を上演して、お客さんを双葉に呼ぼう!」「演劇で福島を盛り上げよう!」という僕の呼びかけに、「ぜひ協力したい」として集まってくれた、士気の高い、仲のいいメンバーで準備していました。キャストもスタッフも、みんな、福島を応援したいという思いを持っていました。

またこれは、福島県とも協力して進めていたアーティスト・イン・レジデンス事業のプロトタイプでもありました。みんなで一軒家に泊まって共同生活し、稽古や食事を一緒にしながら、地元住民とも交流していました。上演するだけでなく、双葉の声や実態を、演者たちにも知ってもらいたかったからです。

みんな、人の消えた町の光景に言葉を失いながらも、「よし、ここを演劇で盛り上げよう!」と、双葉に泊まり、頑張ってくれていました。イスラエルやイギリスの著名な振付家や劇作家、劇団チョコレートケーキなどの参加が内定していました。

めちゃくちゃ、めちゃくちゃ面白い企みだったと思います。当時、双葉はまだ人口80人とかでしたが、そこで世界最先端の演劇が観れる。海外のアーティストやバイヤーも注目していました。今、Fukushimaは、TokyoやKyotoと同じか、それ以上に有名です。僕が恐る恐るオファーの連絡をすると、海外のアーティストもみんな原発事故に心を痛めていて、「ぜひ現地を応援したい」と言って参加を快諾してくれていました。僕の残りの人生は、その架け橋に使うつもりでした。

僕がこれらの作品を無料公開するのは、そこに理由があります。これらの作品は、当時の福島で上演するために生み出された作品です。どれも面白いですが、今、東京で上演しても価値はありません。これらは当時、福島で上演されるべきだった。再演の可能性もないので、ここに無料公開します。

ゲネプロ(最終リハーサル)を終えたタイミングで、例のレイプ告発があり、上演は中止されました。告発は本番初日の前日を狙って、一斉にネットやSNSで発表し、関係各社やマスコミに一斉FAXを送るという念の入れようでした。僕を訴えるのはともかく、公演を巻き添えにするやり方は今も許せません。演劇を愛する者には、とてもできない行いだと思います。

後にレイプの訴えは、裁判所も「原告の訴えには隘路がある(ムリがある)」として退けましたが(→参照)、公演は中止になったままです。キャスト・スタッフ、そして双葉町の皆様に、本当に申し訳がありません。

今、ここにこうして作品を公開するのは、せめて誰かに読んでもらえたら……というだけの理由です。どれも、だいぶ面白いと思うので(笑)、読んで楽しんでもらえたら幸いです。

さっきちょっと読み返したら、結構、ユーモアのある作品が多いんですよね。双葉は悲劇の町でしたが、僕はあそこを、悲しい町、破滅の町としてではなく、楽しくてカッコいい演劇が観れる町にしたくて、いろいろ準備していました。だから悲しい話ばかりじゃなくて、どの作品にもユーモアがあるんだと思います。3年半ぶりに読み返して、そんなことを感じました。

そのことはまた改めて、ブログに書こうと思います。

作品解説

ちょっとだけ、解説させてください。アンダーラインの引いてあるところをクリックすると、本文が読めます。PDFでダウンロード可能です。

『家を壊す』 短編戯曲、1時間ほど。5場面、出演者4人

当時、双葉町は家屋の建て壊しラッシュでした。震災から11年経って、残った家はどれもボロボロ。法律の都合で、今壊せば助成金が降りる。でも住み慣れた家はどうしても壊しづらい……。そこで、みんな悩んでいたんですね。しかもみんな、震災と原発事故のせいで、別の町で生活をはじめていた頃でした。

家を壊すかどうするか……というのは、当時の双葉町の最大のメイントピックだったんです。

この戯曲は、どうしても元の家に帰りたいお父さんと、もう別に仕事や生活のある家族が、家に帰るか、どうするか。家を壊すか、どうするか。話す話でした。

物語のラストはベケットの『ゴドーを待ちながら』のパロディです。市川しんぺーさん演じるお父さんが、「絶対に妻は帰って来る!」と信じて待っている。南果歩さん演じるお母さんが、本当に来るのか、来ないのか?というところで、だいぶギャグをやっていますが、不条理演劇とはこういうものです。『ゴドー』も、あれは喜劇ですからね。その哀愁が、素晴らしかった。

市川しんぺーさんの、ユーモラスだけれど哀愁のある演技。素晴らしかったです。本当にみなさんに、お見せしたかった。冒頭でしんぺーさんが、たった一人、10年ぶりに家に帰って、家族の座る椅子の位置を決める、セリフのないシーンがあるのですが、僕は稽古で毎回そこを見る度に、このシーンだけで泣いていました。しんぺーさんの表情や息遣いから、家族の姿が、見えたんです。そういう演技を、してくれていました。

他のキャストたちも、佐藤みゆきちゃんはじめ、福島に思い入れのある人たちばかりでした。僕が起因となって、上演中止になってしまったことを、あらためて深くお詫びしたいと思います。本当に、観てほしかったよね。僕はこれ、本当に好きな作品だったよ。全ステージ、満席完売だったようだしね。みんなに、苦しい、嫌な思い出として、記憶に残してしまったことが、心から申し訳ないです。みんな、大好きでした。どうも本当にありがとう。

『高校の校庭』 短編小説、2ページ

当時、双葉町のガイドツアーをしていた男性から聞いた、町の記憶の話です。南果歩さんがとてもこの作品を気に入っていて、本番ではリーディングしてくれる予定でした。東電、青春、野球部の思い出、アトム寿司……。原発事故の爪痕がわかります。これも現地で聞くと、ひとしおですが、想像するだけでもだいぶぐっとくると思います。

『子供の声』 短編小説、2ページ

僕と新聞記者さんと、それぞれの子供の間でかわされた、死ぬほどくだらないエピソードです。11年半、この町には、子供の声がしなかった。やっと子供の声がした。しかし、その子供の声は……。しょうもない話ですが(笑)、これが、人が生きているということなんだと思います。最近では、双葉にも小学校ができたそうです。すごい!

『朝』 短編小説、1ページ

当時僕は双葉に住んでいて、本当に誰もいないんです。コンビニすらない。駅にも一人も人がいないんです。でも毎朝、台本が書けなくて、散歩してると出会うおばあちゃんがいたんですね。そのことを書いた、一番短い短編です。町に1つだけの音。

『住民懇談会』 短編小説、4ページ

当時僕は、政府とか内閣府の人たちとも繋がりがあって、いろんな話を聞かせてもらってました。町帰還のための住民懇談会が、いかにカオスで、悲痛で、複雑か。同じ町の人たちどうしで、こんなに揉めていたの? 上の3つと違って、だいぶビターでシリアスな話です。こういう話を聞かせてもらえたのは作家としてありがたかったですが、発表できなかったのは残念です。

『この町のいいところ』 短編小説、1ページ

これはどうしてもやりかたった短編ですね。ジッタリンジンの「あなたが私にくれたもの♪」じゃありませんが、町のいいところをただカウントしていくだけの短編です。すべて現地住民の生の声を採録したものでした。

これを、福島に集まって、みんなで聞く。それは、すさまじい体験だったろうと思います。ゲネプロで果歩さんがこれを読んでくれて、僕は、泣いていました。

僕はしんぺーさんとは初めてだったし、みゆきちゃんとも久々でしたけれども、本当に素晴らしい演技をしてくれていました。家久来さんとか、久留飛くん、東谷なんかの、熱意のある芝居も多くの方に見せたかった。

ㅤ順序が入れ違いましたが、前回や前々回に予告していた内容は、次回以降に書く予定です。本当に、これらの作品が、双葉の地で、上演できなかったことを悔しく思います。『福島3部作』以上の、素晴らしい上演成果になっていただろうと思います。

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