熱心な読者の方からご質問をいただいたので、お答えします。こういうの、とても嬉しいです。
昨年、谷さんが極端に人と会わなかったと伺いました。
それによりご自身が今までになく変化したことなどありますか?
ええ、それはもう、とてつもなく大きな変化が……。と思いきや、そうでもありません。昔と同じです。
自分の場合、中学も高校も途中から行かなくなり、部屋で徹夜で本を読んだり音楽を聴いたりしてたのですが、最近もそれと変わらないので「あの頃とまったく同じじゃねーか」と苦笑してしまいました。友人のミュージシャンにその話をすると、「わかるよ、わかる。ぼくも今でもそうだもん」と言われて、「僕らのような者は死ぬまでこうなのだな」と笑いあったものです。
あえてちょっと意味深なことを言うと、こういうことは言えるかもしれません。自分の人生に何が必要で、何が必要でないか、よく考えるようになりました。
一度人生をリセットされ、「さてこれから何をしよう」と考えたとき、死を意識しました。これは自殺とは別の意味です。「あなたはあと一年で死にます」と言われた人が「じゃあ残りの一年何をしようか」と真剣に考えるのと同じように、僕も「残りの人生、本当にしたいことは何だ」と考えたのです。
お金持ちになることや、有名になることではないということはすぐにわかりました。一時期そこそこ金持ちにも有名にもなったけど、それは大変むなしかった。モテることとか遊ぶことにももう関心はありません。演劇のことは考えないようにしていたので、考えに入っていません。
それで数学をやったりマラソンをやったり、登山をしたり旅行をしたりしてたわけです。そして「ゼロから物書きをやってみる」なんてこともした(これまでの「2年間のこと」参照)。読みたい本や書きたい原稿を考えると、もうそれだけで残りの人生、足りるかどうか……。あと40年。ああ、いや、僕は煙草もずいぶんやったし、酒は未だに飲んでいるので、あと15年くらいですかね。
手塚治虫ぜんぶ読むとか、源氏物語ぜんぶ訳すとか、忌野清志郎ぜんぶ聴くとか、クラシック音楽の勉強するとか、してみたい。これだけでも2~3年? いや、もっとかかるでしょう。ちょっと前にも「2024年のJAZZの名盤100」なんて記事を見つけて1枚ずつ聴きはじめたのですが、1枚目にドハマリしてしまって残り99枚聴けていません。そして99枚聴けないまま、死んでいく人生な気がする。
なのでバカみたいな話ですが、以前は仕事の用事で溢れかえっていた僕のTo Doリストも今はほぼ空になり、最上段にはこう書いてあります。
「残りの人生で、学問をやる」
本当にそう書いてあります。頑張ります。ご質問、どうもありがとうございました!