Skip to content

2年間のこと⑥ 東南アジア・タイ

ベトナム、カンボジア、マレーシア、フィリピン、ミャンマー……東南アジアの中でもタイはもっとも観光地化されていて、抜群に過ごしやすかった。でもあちこちデタラメだった。上の写真の大仏さまは気品があるが、他にはもうデタラメな金・銀・赤・青・黄、原色で塗られたヤバい仏像が大量にある。

こういうのもある。ピカチュウ、金髪のアラレちゃん、のび太くん……。

ホテルや料理のレベルは一番高くて、トイレやインフラもきれい。観光地では案内や交通もしっかりしていて迷うことはないし、ちょっとお金を出せばリゾート気分も味わえる。食事も夜になれば安い屋台メシから高級なレストランまで好きにチョイスできるし、タイ料理はやはり美味い。一杯飲んだら様々な「遊び」にも簡単にアクセスできる。

タイでは数年前からマリファナが合法化されていて、道端で500円も出せば一巻買える。これを目当てに訪れる人も多いとか。早く日本でも解禁するべきである。中毒性も健康被害もなくて、税収は増えるし観光客は増える、いいことばかりじゃないか。

マリファナの回り方は人それぞれだが、時間の感覚がおかしくなって、俗に言う多幸感、ハッピーなフィーリングが膨らんで、ちょっとしたことが楽しくなる。笑い上戸にもなってきて、道を歩けば屋台のオッチャンオバチャン、大道芸人、浮かれた酔っぱらいなんかが絡んできてお祭り騒ぎだ。

少し先で音楽ライブをやってる店があって、聴き慣れたメロディが流れてくる。これはQueenだ。おお、ウッドベース中心のスリーピースでQueenなんてカッコいいじゃないか……。

明かりを暗くして 君のために 悲しい歌を歌ってあげよう
二人きりでタンゴを 踊るのもいいね
君の心に 優しくセレナーデを奏でて
君だけの ムービースターになってあげる

愛しい君 僕だけの愛の少年
今夜は何をするつもり?
さあ時間だ 今夜も愛を交わそう
君は古き良き 僕だけの愛の少年!

タイの路上、マリファナの匂いに包まれて、100人以上の聴衆がQueenの『Good-Old-Fashioned Lover Boy』のリズムに体を揺らしている。非常に色っぽく、あやしい秘め事の歌だ。僕も大好きな歌で、孤独なイギリス留学中に何度聴いたかわからない。人混みに近づくと真っ黒な顔のオジサンと目が合い、にっこり笑った。二人で「うんうん」とうなずき、「やっぱQueenはいいよねえ」と確かめあって、音楽の続きを聴いた。

もう僕は酔ってクラブや街角で夜を明かすような年でもないし、すっかり興味もなくしてしまったが、この演奏はしばらく、ずっと聴いていた。素晴らしい寺院や自然をたくさん見たが、これが一番よかったな。僕はずっとフーテンで生きてきて、美しいものをたくさん知っている。それが自慢だ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です