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10月31日(月)ワイルダーお前まちがってるだろ

作成中の年表

今日は午前中ひたすらデスクワークと書き物をして、午後は新国立劇場演劇研修所シーンスタディ授業。今日のテーマは「ニューハンプシャー州におけるグローヴァーズ・コーナーズの位置を特定する地図を作ろう」&「戯曲の中にある年号・日時・季節・数字、全部拾って年表を作るぞ」。基本中の基本ではあるが最近これを特に大事にしている。

どうしても頭に先入観というものがあるので基本的なことを見落としていたりする。「自分はわかっている」と思わずに当然と思えることでさえ一度は辞書を引いたり地図で調べたりする。今日も劇中の地名や距離を分析していくことで、グローヴァーズ・コーナーズの置かれた場所・地理・風土などが立体的に見えてきたし、年表を細かく作成していく中で多くの発見と矛盾が見つかった。劇中の年代を信じるとエミリーとジョージが2〜3歳差になってしまい、同じ宿題を解いたりしている一幕の台詞と矛盾が生じる。年号を信じるなら2〜3歳差があるがそれはどうも直感に反する。僕がテキトーに「ワイルダーが数字まちがって書いたんじゃないか」説を提唱したが、普通偉い作家はそういうことしない。僕のようなズボラな作家は「上演中に辞書引きながら見てるわけじゃないんだからさ」と数字や年号などちょこっと誤魔化して書くこともあるが、ワイルダーは偉い作家だ。きっとそういうことはしない。

と思ってたらさっそく劇中で「火曜日」と書かれている日付が史実(カレンダー)では「土曜日」だったという例が出てきた。ワイルダーお前まちがってるぞ。グローヴァーズ・コーナーズがグレゴリオ暦以外の暦を採用していたなら話は別だがまさかそんなこともあるまい。僕の中で「ソーントン・ワイルダーといえどもテキトーに書いてたとこある説」が再び可能性をもたげてきた。焦って結論を出さずにもうしばらくじっくりあれこれ資料をあたり読み解いて行く。

今日は学生が1900年ごろのニューハンプシャー州の古地図を持ってきてくれていて、そこには当時の鉄道の路線図や駅の位置なども記されており大変役に立った。こういう地道な調査をした上で、無視する、誇張する、誤読する、それは演出家と俳優の自由だ。しかし一度原点をじっくり読み解く。最近(こないだの『戦争劇集』とか「プルーフ/証明』とか)ではそういうことを大事にしている。明日も頑張ります。

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