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長崎原爆資料館がちょっとしんどすぎた日記

自分はかなり旅慣れてる方だが、新しい土地に行った場合の鉄則は、まずは施設の開館時間をちゃんと調べること。その資料館や美術館の開館時間は17時までか、19時までか? 21時までのご飯屋さんと26時までやってる飲み屋。ホテルのチェックインは何時まで。そこを調べる。かつ初めての土地に行く際にはある程度効率は度外視して「本命から攻めろ」が鉄則だ。一番見たいところを最後に回したりすると、途中で旅程が狂って本命に行けなかったりする。

そこで今回の長崎入りでは長崎原爆資料館に真っ先に立ち寄ったのだが、正直、失敗だったかもしれない。展示内容は素晴らしかった。しかしあまりにしんどくて、3時間はゆっくり見れるようにスケジュールを切っていたのだが、1時間見ただけでくたくたになってしまった。

展示は素晴らしい。例えばこんな記述がある。40歳の男性、自分は仕事で隣の諫早市に行っていて助かった。家族は全員亡くなった。こんなものを読むと今、ちょうど同じく40歳である私はすぐさま自分のこととして想像してしまう。さらにその後お母さんと小さな兄弟の話なんか出てきたりすると、うちの妻と二人の男の子のこととして再生されてしまう。その後、原爆の熱戦を食らい焼け焦げた少年の写真を見る。真っ黒に炭化して、顔の造作や髪型などの個性はおろか、表情もわからない。真っ黒な仏様、真っ黒な仏像のようにすら見える。残酷な、苦しい仏様だ。さぞ痛かったろう。苦しかったろう。意味がわからなかっただろう。怖かっただろう……。そしてそれが自分の息子の姿にしか見えない。真っ黒に炭化して個性が消えてしまっている分、本当にそれが自分の息子に見えてくる。まだ6歳の、ひらがなが読めるようになって小学館の図鑑を隈なく読むのとニンテンドースイッチでMinecraftをやるのが大好きなうちの息子が目の前で炭化している。胸が痛い。胸がざわざわして、嘔吐しそうな感じがする。どうしてこんなことが起きているのかわからず、頭の中がぎゅーっとねじれて、自分の顔がぐしゃっと歪む。それは怒りとも嘆きとも違う難しい感情だ。

その後、僕はちょっと泣いた。哲学者のバートランド・ラッセル(ウィトゲンシュタインの師匠だ)とアインシュタインがアメリカの大統領に原爆廃絶の手紙を書いたという展示で泣いた。原子力は確かに人類の叡智、人類を貧困から救い、栄華をもたらすエネルギーになれた可能性だってあったんだ。しかし核分裂連鎖反応の仕組みが発見されてまず最初に行われたのは広島と長崎の何十万という人々を焼き殺すことだった。その後には世界各地で原子力事故を続発させ続けている。2011の福島でさすがに懲りたかと思いきや、今はロシア・ウクライナ戦争でザポリージャ原発が攻撃対象になり、IAEAが警告を出した。さらに日本でも、愚かなことに、40年で廃炉というルールが廃止されて経済のためだけに原発を動かす流れができつつあ流。故郷を奪われた福島の15万人の避難者、難民たちの物語は忘れ去られようとしている。黙殺されようとしている。

これが科学か。21世紀の人間の叡智か。

その後平和公園にも行ってこの有名な像も見てきた。みんな知ってるんだろうけど僕は初めて見たから感動した。天高く伸ばした右腕は降りかかる原爆の脅威を表しており、横に伸ばした左手は平和の象徴、そして優しく目を閉じた表情は神の愛・仏の慈悲・戦没者への哀悼・冥福への祈りを表しているらしい。同公園内にはソ連が送った平和の像も展示されており、それを見た女子大生のようなグループ客の女の子たちがツアーガイドの男性に口々にこんなことを言ってた。

「私、これ見て泣きそうです」
「この像を今のロシアの人たち、プーチン大統領に見せてやりたい」
「ほんと、これ思い出せって感じです……。ウクライナの人たちに、ホント……」

それを聞きながら僕は最悪の想像をしたのだが、実際今後も原子力災害はまだあるんだろう。広島、長崎、福島では足りなかったのだ。ビキニ環礁、スリーマイル、チェルノブイリ、東海村JCO原発事故では足りなかったのだ。もっともっと酷い目に遭わないと人類は原子力をやめられないのだろう。

そこまで考えて怒りも湧いてきた。広島でも長崎でも足りない、福島でも足りない? それは、どういうことだ?

今日の午前中は、ららぽーと福岡に建設された巨大νガンダム立像を見てとても楽しい気持ちだったのだが、観光だのなんだのする気持ちがすっかり失せてしまった。

ちなみに↑のνガンダムが出てくる『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』はこういう映画です。

シャア「地球がもたんときが来ているのだ」

シャアは人類に絶望し、巨大隕石を地球に落として地球を無人の星にしようとしています。アムロはそれを阻止しようとしている。

シャア「地球は人間のエゴ全部を飲み込めやしない」
アムロ「人間の知恵はそんなもんだって乗り越えられる」
シャア「ならば、今すぐ愚民ども全てに英知を授けて見せろ」

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年公開の映画)より
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