インドネシアに来ています。私の『福島三部作』が現地のドラマリーディングフェスティバルで上演されるからです。

もともとインドネシアという国は、演劇が非常に盛んでした。さらに20世紀初頭に、演劇の歴史の中で最も重要な3人の演出家のうちの1人に数えられるアントナン・アルトーという人に、大きな影響を与えた国でもあります。
私はここぞとばかりに、現地の影絵芝居や舞踊劇、ガムラン音楽などの要素を吸収しています。というのも、インドネシアの演劇の特徴と、今私が作ろうとしている演劇『僕ら4人』の特徴が、実はとても響き合うものがあるからなのです。

アルトーはフランス人ですが、テキスト中心の文学的な演劇というものにうっすらと反発を抱いていました。そんな時、バリ島からやってきた舞踊劇の集団を見てインスピレーションに打たれたんだそうです。
「これはすごい。言葉はない。しかし、手や振り付け、身体の動きが雄弁に語っている」
「そうだ! ここには身体言語というものがあるんだ。私たち、テキスト偏重主義に陥った現代人が忘れてしまった、豊かな演劇の可能性がここにある!」
そして彼は『演劇とその分身』という狂った演劇理論書を書き、それが日本の小劇場・アングラ演劇に大きな影響を与えました。少し前にお亡くなりになった唐十郎さんも、その影響を受けた1人です。彼の主著『特権的肉体論』にもアルトーの影響が見えます。
このあと、ジャワの演劇の中心地、バリ島にも行く予定です。
それから。

観光のため、毎日1〜2時間は歩いています。長距離の時は Grab やバイクタクシーを使いますが、歩いていること自体が観光のようなものです。街角のおっちゃんや、遊んでる子供たち、店先のおばちゃんとおしゃべりするのもとても楽しい。
歩きながら、『僕ら4人』のプロットを考えます。もう8割は完成しているのですが、最後のピースはここインドネシアではめようと決めていました。
インドネシア演劇とアルトーの影響を受けたかったからというのもあります。もう一つには、ちょっと頭で作りすぎている、手癖で書けている感じがあったので、偶然の出会いに賭けてみたのです。

現地の食堂で出会った親子との会話。バーで出会った、大学で経済学を学んでいる青年との会話。タクシーをシェアして寺院を一緒に回ったアメリカ人との会話。どちらも強いインスピレーションをくれました。人の悩みは、インドネシアでも日本でも、変わりません。