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出演契約書ひな型の公開について

DULL-COLORED POP次回公演のオーディション告知では、出演契約書の雛形を公開し、稽古日数やギャランティーの詳細などについても明記しました。

今は改善されていると思いますが、僕の経験上、演劇界ってホントに契約書を結ばないんですよね。かなり大きなプロダクションや公共劇場でもそうです。僕も何度か「契約書がほしいんですが……」と言ってみたことはありましたが、「いやあ、初日あけてからってのが通例でね」と流されることが多かったです。演出家の僕でさえこうなんですから、若い俳優やスタッフはもっと言いづらかろうと思います。

でも本来、仕事を始める前に「何をするのか」「いくらもらえるのか」「いつ支払われるのか」を確認するのは当たり前のことです。今ではフリーランス法もでき、発注する側にはこうした取引条件を明示する義務がはっきり明記されました。

今回公開した雛形は、2022年夏の『岸田國士戦争劇集』の際に作ったものです。当時、若い俳優たちとよく俳優の労働環境や契約について話していて、「じゃあまず自分たちからやってみよう」ということになり、作りました。

僕がそれまで結んできた契約書類を参考に原案を作り、出演者全員に読んでもらいました。その後、「こんな条項が欲しい」「俳優としてはこうだったら嬉しい」など、意見を集めて作ったのがこの雛形です。「稽古は7時間まで」「演出家の方から稽古の延長を求めてはいけない」「俳優も有給休暇を取得できる」など、かなり面白い内容だと思います。

ただし、ここからが一番大事なところです。契約書があるから安心、というわけではありません。本当に大事なのは、俳優が自分の権利や要望を主張できること。そして、それを言ったからといって不利にならないということです。契約書は、そのための道具の一つにすぎません。

もちろん、こういう声もわかります。――そんなこと、怖くて言えない。何か言ったら、次から呼ばれないんじゃないか……。僕だってプロデューサーや劇場職員を前にして同じようなこと思うんですから、若い俳優がそう思うのは当然です。

でも、俳優は弱い、というのは本当でしょうか? 今はそうかもしれない。でも、変えていくことはできるはずです。

昔、国鉄ではよくストライキがありました。あれだけ大きな会社でも、働いている人たちがみんな「今日は行きません!」と言えば、列車は動かない。会社は交渉のテーブルに着くしかなくなる。そうやって少しずつ、労働環境というのは整備されてきました。戦って勝ち取ってきたんですね。

演劇だって同じです。数なら実は、俳優たちの方が圧倒的に多い。一人では戦えなくても、俳優やスタッフ一人一人が「自分たちには権利がある」「本来、対等な存在なんだ」と意識するようになれば、これはなかなか手強い。俳優たちがいなければ、演劇は絶対に上演できませんからね。

だから若い人たちには、まず知ってほしいと思っています。自分には条件を知る権利がある。意見を言う権利がある。交渉する権利がある。そして、演出家やプロデューサーと対等な立場で作品を作っている。法律やガイドラインを整えることも大切ですが、僕はそれと同じくらい、一人一人が「自分は言っていい」と知ることが大切だと思っています。

その小さなステップの一つとして、この契約書雛形を公開しました。なかなか面白い契約書だと思うので、ぜひ読んでみてください。もし使いたい人がいたら、自由にコピーして使ってくれて構いません。ただ、今なら「フリーランス 契約書」とか「芸能従事者 契約書」とかで検索すると、さらに詳しい情報やテンプレートが手に入ると思います。

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