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凧を上げてやろうと思ったが、失敗した。何度やってもくるくる回って落ちてしまう。スマホで調べ、糸やオモリのバランスを変えてみたが、うまくいかない。ええいこれでは親の威厳が……と思って振り返ったら、子供は思う存分ゲーム機をやれて満足そうだ。

まぁいい。凧揚げなんて学ばずとも生きていける。

「昼めしは何がいい」と聞くと、あいかわらず「ラーメン」と答える。「よしここは一つ珍しいものを食わせてやろう」と思い立ち、ちょっと立派な中華料理屋に連れて行った。これはアヒル、これはサメ、これはすごく辛いやつ……と説明して、「さぁ何がいい、好きなものを選べ」と言ったら「ラーメン」と言われた。

まぁいい。俺も結局ラーメンが一番好きだ。

電車に揺られていると、「宇宙は膨張しているんだよ。誰が見に行ったの?」と訊いてくる。これこそ俺の得意分野!――いいか息子、貴様もゲームをしていると、「予想」をするだろう。「敵がレーダーから消えた! さっきまでこう動いてたから、この辺にいるはずだ」。そうやって見えないところを見るだろう。それと同じだ。えらい学者さんたちは、見えないくらい遠くの星や宇宙の動きを、見に行ったんじゃない。予想しているんだ。お前の嫌いな算数を勉強しまくると、見えないものの動きが見えるように……。という説明の途中で、もうYouTubeを見ていた。

まぁいい。学問は素晴らしいが、もっと素晴らしいことも、世の中にはたくさんある。

親が子供に教えられることなんて、何もないのかもしれない。僕も親父から学んだことは、そういうこまごましたことではなかったはずだ。

じゃあ何か?と言うと、大変てれくさいが、「お前が好きだ」ということだったと思う。仕事に夢中で、3日も4日も帰ってこないことが当たり前の親父だったけれども、酔っ払ったときによく「お前が生まれたとき、俺は本当に嬉しくてな」と言っていた。それを今でも覚えている。

えー最後に、高田渡で、『系図』。お聴き下さい。

ぼくがこの世にやって来た夜
おふくろは めちゃくちゃに
うれしがり
おやじはうろたえて
質屋に走り
それから酒屋をたたきおこした

その酒を 飲み終るやいなや
おやじは いっしょうけんめい
ねじりはちまき
死ぬほど働いて
死ぬほど働いて
その通りくたばった

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