谷賢一(DULL-COLORED POP)×山崎彬(悪い芝居)、一ヶ月の共同創作

俺とあがさと彬と酒と

※「俺とあがさと彬と酒と」という名前のユニットです。

[ご報告] 俺とあがさと彬と酒と。無事、公演全日程終了致しました。谷賢一、山崎彬、岡田あがさ共に、大変な充実を感じての終了となり、お客さまからもご好評頂きました。次はいつ? まだわかんない。どうやら2013年中は谷も彬も大忙しで、2人が出会えるスケジュールはないみたい。でもまた、いつか必ず! 珍しくトモダチができた、俺とあがさと彬でした。こんな歳末にも関わらず、観に来てくれた皆さま! 君も僕らのトモダチだよ!



※フライヤーです。

関東で人気を集める劇団・DULL-COLORED POP主宰の谷賢一と、関西で随一の話題と評判を誇る劇団・悪い芝居代表の山崎彬が、お互いの才能と魅力に相思相愛、惚れ込んで、一ヶ月の共同生活&執筆・演出を企画! 「だらだら延々、酒飲みながら、一日中、喋って、書いて、稽古して、最強の演劇を目指す」、東西二大若手劇作家・演出家のコラボレーション企画! (※酒は結局、最初の2日しか飲みませんでした)

主演(玩具)には、美貌と確かな演技力とぶっ壊れた人格で様々な演出家にインスピレーションを与え続けている人気女優・岡田あがさを起用。マクベスとマクベス夫人の関係だけを描き取り、欲望と恐怖に揺れる男と女を描いた二人芝居「ふたりマクベス」(作・演出:谷賢一)に加え、谷賢一×山崎彬の共同製作短編を上演予定。歳末最大の番狂わせ、乞うご期待!

どんどん縦に長くなっていくこのサイトの目次

第1回公演『ふたりマクベス、マボロシ兄妹、ほか短編』公演概要

作・演出:谷賢一(DULL-COLORED POP)×山崎彬(悪い芝居)
出演:岡田あがさ、山崎彬(悪い芝居)、谷賢一(DULL-COLORED POP)、ほか

スタッフ:鮫島あゆ(DULL-COLORED POP)、田中沙織、港谷順、松本大介(照明)、岡田太郎(音楽)、棚瀬巧(舞台)
製作:DULL-COLORED POP、協力:青年団、こまばアゴラ劇場

タイムテーブル

2012/12/27(木)~12/31(月) 全9ステージ

12/27(木)28(金)29(土)30(日)31(月)
10:00~
※おはよう公演
15:00~15:00~15:00~
19:30~
※プレビュー公演
19:30~19:30~19:30~18:00~
※観バラシ公演

会場のご案内

アトリエ春風舎
〒173-0036 東京都板橋区向原2-22-17 すぺいすしょう向原B1
TEL.03-3957-5099(公演期間中のみ)
東京メトロ有楽町線・副都心線/西武有楽町線「小竹向原駅」下車4番出口より徒歩3分

チケット・ご予約

ご予約受付中! お席は全席、自由席です。ご来場の順番に、好きなとこ座って下さい。携帯からの予約はこちらから

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関与者一覧

3人からスタートしたこの企画! 仲間がどんどん増えていくよ! 「私も手伝いたい!」なんて人がいたら、いつでも oaaa@playnote.net まで連絡してね!

谷賢一・顔写真

谷賢一:1982年生。作家・演出家・翻訳家。劇団DULL-COLORED POP主宰。アトリエ春風舎芸術監督。日本劇作家協会事業委員。

日英の大学にて演劇学を学んだ後、劇団を旗編げ。「斬新な手法と古典的な素養の幸せな合体」(永井愛)と許された、ポップでロックで文学的な作品づくりで、幅広い作品を手がけている。

2012年秋、『完全版・人間失格』を青山円形劇場で上演したことを契機に「人間になるくらいなら悪魔になる」と決意。改めて演劇に魂を売り払った。

山崎彬・顔写真

山崎彬:1982年奈良県生。俳優・演出家・劇作家・悪い芝居代表。

大学入学と同時に俳優活動を開始し、2004年に路上バフォーマンスで劇団「悪い芝居」を旗打げ。以後、すべての劇団公演で脚本・演出・出演を担当するほか、劇団外でも脚本提供や演出・出演、ワークショップ講師など精力的に活動を行っている。

2012年「駄々の魂です」で第56回 岸田國士戯曲賞最終選考作品ノミネート。

岡田あがさ・顔写真

岡田あがさ:俳優。生年不肖。小劇場から大劇場まで、ジャンルを問わず活躍する若手実力派女優。確かな演技力とエキセントリックな発想力、そして「演劇 or Die」というくらいの俳優魂で数々の演出家にインスピレーションを与え続けている。近年の代表作に、宮本亜門演出『金閣寺』、柿喰う客『露出狂』『悩殺ハムレット』『絶頂マクベス』、岡田あがさ×須貝英二人芝居『確率論』、舞台『裏切りは僕の名前を知っている vol.2』『vol.3』など。

酒・顔写真

酒:エタノールが含まれた飲料。その歴史は古く、紀元前7000年にはすでに土器を使った醸造酒が作られていたことが考古学調査から判明している。

鮫島あゆ・アイコン

鮫島あゆ:劇団DULL-COLORED POP所属の演劇なんでも屋さん。主に宣伝美術・映像・ウェブ制作などで活躍。現場には滅多に顔を出さずに、携帯電話やインターネットなどの通信機器を駆使してコンタクトをとるIT世代の申し子。父親はアメリカでガソリンスタンドを経営している。かに座。

田中沙織・顔写真

田中沙織:カスガイ所属の俳優。また、宣伝美術からパペット製作、衣裳コーディネートまで手掛けるハイパー演劇クリエーター。「何もそこまで」という熱の入ったこだわりで、演出家をドン引きさせるほどハイクオリティで仕事を成し遂げる職人肌の女子。個人ブログ「おたよりの代わりに」ではニードルフェルト作品を公開中。嫌いな動物はカエル。カエルはすべて死ねばいいと思っている。

港谷順・顔写真

港谷順:1989年生。俳優。
明治大学に入学後、文化プロジェクト(現MSP)で俳優活動をスタートし、以降ユニットで公演を重ね、卒業と同時に同期の仲間と劇団→ヤコウバスを旗揚げ。現在は自身のスキルアップを計り、絶賛俳優トレーニング中。好きな女性のタイプはトリンドル玲奈。

松本大介・アイコン

松本大介:舞台照明技師。㈱松本デザイン室社長。「俳優は出来ません」と自分のTwitterアカウントでも丁寧に自称しているが、誰よりも声がでかい。熱い血潮で明かりを燃やし、舞台に火をつけるボンバーマン。カレー作りと日曜大工、熱帯魚飼育などに造詣が深く、ファミコンでは超絶難易度を誇ると言われる「スペランカー」や「ロックマン2」をノーコンティニュークリアするほどの腕前。

岡田太郎・顔写真

岡田太郎:1988年生。良くも悪くも喜怒哀楽の感受性豊かな現役大学生。普段は自身のバンドJamokashiでの作詞作曲ライブ活動、DJ daTaro名義でレコードを回したりしているが、ふとしたきっかけで悪い芝居を観劇。衝撃を受け、入団。山崎彬をして「僕の作品の音楽は、岡田太郎しか考えられない」と言わしめるナイスコンビネーションの音楽担当さんなんだ!

棚瀬巧・顔写真

棚瀬巧:舞台監督を生業とする演劇LOVER。今回は仕掛け・美術製作アドバイザーとして協力。口癖は「まかしときな」「15分くれ。何とかする」「あとで吠え面かくなよ」など。

あれこれQ&A

Q. 上演時間はどれくらいですか?
A. 途中休憩込み・1時間40分程度を予定しております。
Q. 先行予約の特典にある、「会場にて販売される特製当日パンフレット」って、どんなのですか?
A. 谷賢一ブログより引用します。
「先行予約特典として、『会場にて販売される特製当日パンフレットをサイン入りにてプレゼント』ということになってますが、これはお茶を濁すような当パンじゃなくって、俺と彬で、そうだな、50ページくらいさ、いや100ページあったっていいだろ、演劇論とか、書きまくってさ、こんな分厚い当パン読めねぇよバカ、って感じのを作りたいと思ってんだな。出演者の写真とか、稽古場のラフ写真とか、反吐が出るね。アイドルじゃあるまいし。あがさにはポエムとか短編小説とか書いてもらいたいな。彼女小説も書くようだし」
要は内容はちゃんと決まってないようですが、とてもボリューム大きな、読み応えのあるパンフレットを予定しています。会場では500円くらいで販売予定です。
Q. 27(木)の「プレビュー公演」って、何ですか?
A. 欧米の演劇なんかでよくやる手法で、ホントの初日の前に行う、お客さんの反応や声をもらってお芝居をよくするための試験公演です(内容はその後の本番とまるっきり同じです)。ここでの反応次第では、大幅なカットや変更を加えたりする場合もあります。また、プレビューはあくまで初日とは違うので、劇評は書かない、みたいな、暗黙の了解があったりします。なかなか説明が難しいな、と思ったら、Wikipediaに説明がありました
「わぁ、安いや、ラッキー」くらいの気持ちで来てもらっても全然構いませんが、よかったらアンケートやTwitter、CoRichなんかに、感想と応援をくれると嬉しいな!
Q. 30(日)10:00からの回で書かれている、「おはようサービス」って何ですか?
A. 今のところ、希望者にはモーニングコールをかける、目玉焼きを焼いて配る、コーヒーを一杯サービスする、「おはよう日本」みたいなニュース番組を上演してみる、ただご来場時に係員と俳優が「おはようございます!」と元気に言う、その他いろいろ考えていますが、まだ未定です。ご希望あれば、メールかTwitterでご連絡下さいませ。
Q. 観バラシ公演に興味があるのですが、バラシの経験がありません。ナグリも持っていません。参加は可能ですか?
A. 一切、経験不問です。バラシの内容については当日、スタッフがご案内いたします。特殊な技能が必要なことや、出来ないことを無理に強要するようなことはございませんので、ご安心ください。持ち物はナグリがなければ、その分ガッツをたくさん持ってきて下さい。
Q. 観バラシ公演の「バラシ」は、何時間くらいかかりますか?
A. きっと3~4時間くらいだと思いますが、用事があったら途中で帰っていいです。マジで。気持ちが大事。バラシの後は、打ち上げや、大晦日にちなんだイベントがある可能性があります。鍋の材料とか、持ってきてくれると嬉しいです。

関連文書

「俺とあがさと彬と酒と」をやるための挨拶 / 谷賢一、2012/11/13

最近割と、でかい規模の公演ばかりが続いていて、人間関係に疲れたり、うざったい手続きにくたびれ果てたり、「演劇をやるためのあれこれ」に僕はちょっとうんざりしていて、もっと素直にシンプルに、そして死ぬほどストレートに、演劇の醍醐味だけやれないか。そんなことを考えていて、山崎さんと意気投合しました。

「二人で延々酒飲みながら演劇やら哲学やらの話をして、出てきた何かを演劇にしようよ」と提案して、お忙しい山崎さんのことだからあっさり「無理」と断られるかと思ったら、「わぁいいねそういうの、やりたいやりたい」、と、あっさりOKしてくれました。

二人の作家・演出家の大冒険にお付き合い下さるのは、小劇場から大劇場まで八面六臂に活躍中の岡田あがさちゃん。「イヒヒヒあたし谷さんとだったら、ナ、何でもヤルゥゥゥ」と、本当にこんな感じの即答でOKしてくれて、やります。俺とあがさと彬と酒と。

男たちのピクニック「とちゅうでやめたら死にます」 / 谷賢一、2012/11/26

先日、ライブハウスで公演をやるために上京した山崎彬氏と、打ち合わせをしよう。ということで、新宿に集まった。我々は酒を買い、新宿御苑へ赴いた。打ち合わせピクニックである。

場所は随分悩んだんだ。昼間から開いてる、クズだらけの居酒屋へ行き、じめっとした地下で安酒を飲みながら机をバンバン叩いて怒鳴り合う、という打ち合わせもロマンチックだし、「らんぶる」のような、老舗の喫茶店でウインナーコーヒーをかき混ぜながら黙々と筆談する、なんてのも素敵だ。でもお天気がよかったから、お外にしたんだ。

山崎彬は快男児であった。もう少し訓練を積めば、ナチュラルに男塾に出演できそうだ。打ち合わせは演劇の話に始まり、演劇の話で終わった。関東と関西。でも主宰の悩みは似通っていて、演出家の野心は同じく燃えており、劇作家の苦心は共感できたし、何より二人とも、いい大人がこんな危ない企画をやる、ということに、少年らしいワクワクを燃え盛らせていた。

じっくり、腰を据えて、安全パイを選ぶんじゃなくて、俺達の欲動に誠実に、演劇をやろう。石橋を叩いて渡るなんてもってのほかで、おもしろそうな吊り橋を見つけたら全力ダッシュで、吊り橋落ちたら全力で喜ぶくらいの勢いで。かと言って、悪ふざけや、見切り発車や、馴れ合いはごめんだ。

僕は彬に一筆願った。「途中でやめたら死にます」。

「とちゅうでやめたら死にます 山崎彬 谷賢一

……二人とも文字が下手くそなのが本当に残念だが、魂は正直だ。文筆家の一行は重たい。

僕が彼にこんなことを書いてもらったのは、追い詰めたいからだ。今回はもう、本当に、俳優が死んじゃうくらいにビシビシやりたい。相手を好敵手と認めた上で、ガシガシやりたい。こないだポツドールを観に行って、そのあまりの追い詰め具合に感動したけど、それくらい、山崎彬という俳優を追い詰めたいし、山崎彬という演出家には、出演者を追い詰めて欲しい。

だから彼に、書かせた。とちゅうでやめない。もちろん俺もやめない。瀬戸際まで誠実かつギリギリに、ハードに自分たちを追い詰めたい。

ウェブ用のあれ / 岡田あがさ、2012/11/28

よろしくあがさ

私、寝ました。ええ彼と。
いけませんか?
開き直っているつもりはありません。

魔女狩りにあおうが、2ちゃんで叩かれようが、彼と離れるつもりは毛頭ございません。

みんな暖かい幸せを求めてるのよね。
だけど私は雨に打たれても、
雷直撃されたとしても、
この男だけは離したくございませんの。
行く末心中上等です。

なんて親不孝。
許してパパママ。

母性や本能に勝る欲求の虜になってしまってるのよ。

多分、私と演劇という色男との末路を邪魔してほしくないだけなのね。

おーい、みんな
おめめ、かっぴらいてよくご覧なさい!
待ってろよ!師走!

劇はすでに始まっているし、大晦日に終わるわけじゃなく、ずっと続く / 山崎彬、2012/11/28

僕は、京都を拠点に演劇をしている。それは、これからも変わらないっす。

京都が僕に演劇を与えてくれたし、僕が面白いと思った演劇は京都にたくさんあるし、この土地の人たちも環境も好きだから。

今年もまた、年の瀬に、東京で滞在して演劇を作るわけだけど、これがもし、向こう20年東京で演劇を作ることになっても、僕は上京という言葉は使わず「京都を拠点に東京で滞在して演劇を作る」と言い続けると思う。

谷賢一を知ったのは同い年って縛りからだったと思う。
以前、同い年の彼の存在を知って、彼のブログを読み漁って、勝手に彼のイメージを作り上げたりしていた記憶がある。

以前の僕が作り上げた谷賢一のイメージは……、

と、こんな感じでした。賢一さん、すみません。

この企画は、いや、この劇は、と呼ぼう、そう、この劇は、僕が彼のブログに出会ったその瞬間から始まっていたと思うし、この文章を書いている今まさに進行している。あなたは、すでに、観劇している。年が明けてもこの劇は続く。どうか、後にこの劇のハイライトだったと語られるに違いない、年末の劇場での上演を観てほしいな。

どうぞひと月、よろしくお願いします。

1ヶ月のような4日間、そして、幻について / 山崎彬、2012/12/5

悪い芝居のライブを大阪で終え、その足で夜行バスに乗り込んで、東京着。

12月1日、「俺とあがさと彬と酒と」始動。

最初の2日間は、俺(谷くん)とあがさと彬(僕)の3人+スタッフの田中沙織さんとで、同じ演劇とライブと舞踏を観て、そこに遅れて酒がやってきて、計5人のメンバーで、いろいろ感想などを言い合う。

座組を作っていくような時間。

そして、勢いで取った三軒茶屋の稽古場に、とりあえず行ってみる。
そしてマクベスを読んでみる。感想会から読み合わせ、それらの様子を沙織さんがメモったり。まるで、運動部のマネージャーのよう。

3日目は谷家で、台本書いたり、読んだり、『エイリアンVSプレデター』に感動したりで、朝まで稽古。飲んだくれたわけでなく、マジで稽古。

間に合ってない公演の小屋入り直前かと錯覚したが、いわゆる稽古初日だったことに、震える。そして、みな、演劇バカなのだと思い知る。

大食いの人が、誰よりも食ってやると腹二十分目まで食っちゃうような、坂道で抜き去ったロードレーサー野郎をママチャリで抜き返してやりたくなるような、そんな時間が過ぎていく。終わってみたら、やっぱり疲れていた。しかし心はワクワクしていた。

どうやら僕も完全新作を書く模様。

「今さら、書くとか決まったの?」と言われるかもしれないし、「どうせポーズでしょ?」と言われるかもしれない。まあ、僕は広い世界を見ているので、世界のほとんどは僕たちの存在なんか知らないだろうことを知っているから、そんな意見どっちでもいいのだけど。

理由は純粋に「書きたくなったから」であるので、この企画は「欲望を大きく、欲望を純粋に」を僕の中でのテーマにしているので、もうやろうと思う。

岡田あがさ×谷賢一のふたり芝居になると思います。
幻と兄妹にまつわる演劇になるかと思います。

タイトルどうしようか。

『マボロシ兄妹』でいいかな。

そうしよう。

明日より
「第1回公演『ふたりマクベス、ほか短編』」

「第1回公演『ふたりマクベス、マボロシ兄妹、ほか短編』」
になると思います。

昨日は執筆日。
今日から稽古再開。
小屋入り前日までずっと13時~22時。

アホか!

マボロシ兄妹・稽古感想 / 谷賢一、2012/12/15

今回、山崎彬・作のお芝居『マボロシ兄妹』には、俺(谷)とあがさの2人が俳優として出演する。「え、谷が俳優?」って、驚くだろうけど、そこはもう、どうでもいい。自分でもびっくりするくらい素直に、彬演出に身を任せ、どれだけ信じれるか、レスポンスできるか、必死に食らいついている。3年ぶりの出演だが、3年前も2人芝居だったな。

『マボロシ兄妹』は、とある兄妹と、2人がシェアする幻想のお話だ。2人はとある物体を通じて、ある「マボロシ」を育てていくことになるのだが、登場人物は2人ではない。今んところ、8~10くらい出てて、それを2人でパス回しでもするようにやっていくので、とても頭が混乱する。おまけに意識の置所や重心の置所、見ているイメージ、呼吸などについても数十秒ごとに全く別の状態にズラしていかなければならないので、脳みそは頭蓋骨から剥がれて少しずつ回り出す。何とか追いつこうとして脳みそをぎゅるぎゅる回していると、脳みそが三十度ぐらいギュッとねじれて、元に戻らなくなる。

山崎彬はこう言う。

「それでいい。俳優の頭の中で起こっていることは、お客さんにそのまま伝わる。今、観客の頭は、谷くんの頭と同じ状態になっている。だからどんどんやって、ねじって」

演劇の伝達力と、観客の受信力を、いや、あるいは人間の感応性を、とことん信じたすごい言葉だ。僕はここまで大胆ではない。大胆ではないが、今度ばかりは、山崎彬を信じ込み、俺はただ脳みそをギュルギュル回し続けるだけだ。実際僕は、山崎彬の脳みそがねじれる瞬間を何度か見て、「なるほど確かに」と膝を打ってもいるのだから。

「自分を変えるんじゃなくて、対峙する世界を変えろ」
「そのうちリアクションでしか喋れないようになる」 「常に何かと繋がっていて、そこから」

俺がやってきた演劇論とは本当に根っこが違うので、毎日が勉強だ。今日もたくさん復習しました。

今日は劇場へ行って下見をしつつ、しばらく場当たりさながらに稽古して、ここはこう、そこはこう、と立ち位置や台詞、やり方を確認していった。その時の俳優のさばき方を見て、あ、こいつやっぱりデキる演出家だな、と改めて確認。尻尾振ってついていくぜ。

ホントは戯曲のことについて、マボロシ兄妹という一見ポップ&キッチュに見える戯曲に内在する、ソシュール言語論やウィトゲンシュタイン哲学との連関性について書こうと思ったが、いっぱい書いちゃったのでまた今度にする。

出てこない台詞を言おうとして変顔になってしまう岡田あがさ / 岡田あがさ、2012/12/15

プロンプを拒否して、出てこない台詞を必死に思い出そうとして、結果的に変顔になってしまう岡田あがさ。『マボロシ兄妹』稽古後の自主セリフ合わせ。小竹向原駅前のジョナサンにて。

『マボロシ兄妹』ができるまで(前編)/ 山崎彬、2012/12/15

戯曲は、俳優が書かせるなんて言ったもんだけど、ほんとうににそうで、いい俳優は戯曲を書かせてくれるんだよ。ほんとうだよ。

関西公演に来てくれた際に、拝見している岡田あがさを、女優・岡田あがさとして、自分の作品に出てもらう女優さんとして、客席からは観たことがなかった、し、ましてや谷賢一を、自分の作品に出てもらう俳優として見てなかった、というか、俳優としてなんか見たことない、というか俳優やる人とさえ思ってなかった。

こんな感じだったのは、この二人を出したくなかったとかではなく、谷くんとは出会って3回目くらいが、この企画の稽古初日だったし、岡田あがさっちに関しては、初めて喋ったのがその稽古初日だったわけで、その時は僕も書くなんて決まってなかったからなんだ。

そして、その日、谷くんがやろうとしているマクベスを読んで、あ、僕も書きたいと思ったんだ。そのときは、谷くんには言わなかったんだよ。だって、何を書くかも、なかったから。

そうして『マボロシ兄妹』が生まれた。

以前から考えていた物語、というわけでは、ない。というかそんなもの、ない。そんな器用な作家じゃないし、そんな器用な作家なら、戯曲賞とってる。僕はとってないし、そんな器用な作家なら、発表の電話の出鼻で「ヤマガタさんのお電話ですか?」と名前間違えらて、すでに選外なことを悟りながら、受賞3作のタイトルを聞くことなんてないだろうし。

または、ワークショップを重ねて作りましょう作品、というわけでもない。というかそんな器用な作家じゃない。そんな器用な作家なら、戯曲賞とってる。僕はとってないし、そんな器用な作家なら、推してくださってた選考委員さんが、急用で選考会来れない、みたいな運命にもなってないだろうし。

一瞬だけ、ワークショップのやり方でつくろうかと思ったけど、こういうののパーティー感や泡沫感は大好きだけど、演出家が印象に残って、俳優が印象に残らない感じは、嫌なんだ。

僕は作家じゃなくて俳優なので、やはり俳優が印象に残る作品を書きたいんだよ。
だから、どうしてもふたりから生み出される物語が書きたかった。いや、それ以外じゃ、やりたくなかった。

まず、ふたりの声とか仕草とか、顔つきとか、とにかく目を見まくった。人見知りのふりして、二人に会話をさせ、観察する。そして二人の目を見て、その存在を自分の身体にコピーして、部屋で考える。
ふたりは恋人同士みたいな感じよりは、親友のような、兄妹のような重なり方をした。

兄妹? しかしどんな兄妹だ?

暗殺兄妹?
互いに暗殺者に拾われた孤児の兄妹が、互いを暗殺する依頼を受けてしまう?
岡田あがさがピストルで、谷賢一が刀?
いや、暗殺者は、バレちゃいけない。あの二人じゃ、バレる。

妖怪兄妹?
早く人間になりたい妖怪の兄妹が、街に潜んで人間たちの暮らしを覚えてゆく?
いや、あの二人じゃ、バレる。潜めない。

この企画でしか作れないものはなんだ。この企画でしか成しえないものはなんだ。
どうしようかなあと思いながらも、稽古が始まっては3日経っていた。

帰り道、滞在先へ向かう道に見えるスカイツリーに対面仁王立ちし、ふとつぶやいた。

「この3日は濃かったなぁ。幻みたいな日々だったなぁ」

この瞬間、イナズマが走った。
幻…、兄妹…、マ、マ、マ、マボロシ兄妹や!!

マボロシの見える兄と、兄のマボロシである妹。
ふたりの存在が常に揺らぎ続ける、違和感芝居。

いける。こいつはいけるぞ。
まず、書いてみよう。書いて喋らせてみよう。

こうして最初の一歩は生まれたのだった。(つづく)

岡田あがさイラスト集 / 岡田あがさ、2012/12/19

フライヤー/メインビジュアル用に岡田あがさ画伯が描き下ろしたイラストの数々! クリックすると拡大するよ!

『ふたりマクベス』作品紹介 / 谷賢一、2012/12/19

※この記事は、谷賢一個人ブログ「PLAYNOTE」からの転載です。

年末、12/27~31に上演される、「俺とあがさと彬と酒と」という企画公演で、僕は『ふたりマクベス』という作品を書き、演出しております。昨日、最後の1ページが机の上を離れ、俳優も台詞を覚え切り、あとは調整、という段階に来た。とても、いい本になったと思う。出演は悪い芝居の山崎彬と、小劇場界の悪魔女優・岡田あがさ。

『ふたりマクベス』は、シェイクスピアの『マクベス』を下敷きにして、マクベスとマクベス夫人の二人の関係をだけ描いた作品です。決して二人でマクベスを演じるとか、そういうしょっぱい演出ではありません。

要はこれは、愛の物語なのである。夫婦の物語なのである。僕も一年半ほどではあるが夫婦という奴をやってきて、夫婦ってのに一家言ある感じになってきた。だからマクベスとマクベス夫人、この2人だけの関係を、切り取った。

原作からそのまま使った台詞もかなりあるが、結局のところ、半分近くオリジナルだ。途中はなるべく自分の文章を入れないで構成しようとしていたが、一行、自分の台詞を入れたら、そこがキラっと光ったので、どんどんと書き換えていった。『マクベス』を知らなくてもついていけるし楽しめるけど、『マクベス』を知ってる人にはニヤリとする変更や引用がたくさんあるはず。35~40分くらいの小品だが、きっちり『マクベス』しており、途中から原作を逸脱していて、たまらない。

岡田あがさがたまらなくセクシーでかわいらしく、山崎彬がとてつもなくパワフルでカッコよく、カッコ悪い。台詞は入った。方針も伝わった。残りの一週間で、この2人を夫婦にしなければならん。僕の仕事はそれだけだ。

同時上演の『マボロシ兄妹』では僭越ながら俳優としても出演している俺が、気づいたことがあった。演出家ができることは、俳優を操ることではなく、導いたり、支えたり、気づきのヒントを与えたり、つまりはそっと手を添えて、俳優自身の心と体がゴロゴロと転がり出す手助けをするだけであり、基本的には無力なのだ。だからあがさと彬の魂がゴロゴロと転がり出す手助けを、したいと思う。

今年最後の、最高傑作にしてやらなければ。今年は本当にいろんなことがあったから、最後にこういう、俳優2人、短編という、シンプル&ストレートな作品で勝負できるのが、今とても嬉しい。

oaaa@playnote.net