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PLAYNOTE Posts

11月4日、移動・観劇など

双葉の家に盛大な忘れ物をして朝は8時半から13時半までずっと運転していた。ちと疲れているのかもしれない。やれやれ。夜は文学座『欲望という名の電車』観劇。もともとすごく好きな本でずーっと観てきたが今回も良かった。言葉の切れ味が本当にすごい。ウィリアムズ自身の怒りや劣等感、美への憧れ、様々なものが詰まっている。己の内なるコンフリクトを描く。やはりそれこそ劇作の真髄なのかもしれぬ。

おたより返し、11月3日(木)

午前中ひたすら双葉の家で執筆をする。本当に静かなので筆が捗る。原稿を2つくらい脱稿。その後冷蔵庫の余り物を悪魔合体させて謎の焼きうどんを作って昼食を済ませた後、車で20分ほど南下し富岡町を訪れ市民芸能祭を観てきた。僕と同じく「演劇でなら何とか浜通り復興できるんじゃ」と同志である青木先生が作品を出展していたので観てきたのだ。富岡演劇祭、上演団体募集中です。製作支援金最大50万円

このブログ、10/1から毎日更新するぞ……ということを宣言しまして、病気や二日酔いの時を除いて今んとこちゃんと毎日更新してんですが笑、驚いたことに僕が毎日更新しているように毎日「支援」=課金してくれている方がいる。頭が下がる。たまに1000円とか5000円支援してくれる方もいて(中には最大で一度に5万円も支援してくれた方もいた)、本当にありがとうございます。

そんで「支援」すると同時にメッセージを送れる仕組みになっているんだけど、そこで寄せられたコメントのいくつかにここでお返事を返してみようと思う。以前返信したら「返信なんていいからお仕事に専念して下さい!」なんて恐れ多いコメントもあったので全てのコメントに返信をするということはやっていないのだが、すべて目を通してはいます。中には鋭いコメントもあるので、それにいくつかお答えしよう。

いつもブログ更新、ありがとうございます。(略)もう福島に住み始めて1ヶ月になるんですね。相変わらず、お忙しいようで、あっという間に過ぎたのではないでしょうか? 色んな活動をなさっているのが、ブログを通じて、実際に比べたら少しだと思いますが、伝わってきて、今後の展開がとても楽しみです。谷さんきっかけで、福島に連れて行ってもらえるのを、今から楽しみにしております!

ありがとうございます。この方はもうずっと、三部作上演の頃から欠かさず観にきてくれている方です。「僕が福島に連れていく」、谷賢一による福島ツアー、今、企画しているところです。僕が福島の見どころをご案内し、車であちこちお連れして、夜は鍋でも囲みながら『福島三部作』の映像を観る、地元のアーティストたちの話を聞く……そんなツアーにしようと思っています。きっと楽しいだろう。↑のAさんは是非ご招待させて頂きます。

浜通りに様々なアーティストや戦略を持った人達が集結して熱いですね! 特に官庁などは利用されるかさせて貰うかのせめぎ合いが楽しく、谷さんなら今後の国政の方針などにもお詳しいと存じますので国の予算や制度利便も利用できるよう頑張ってください。

仰る通りで、国、県、官公庁、そういったところとの連携が非常に重要になります。今は自己資金、つまり持ち出し(僕の自腹)で大体のことをやっていますが、これではもちろん長続きしません。そしてよく言われる「自己責任」「自助努力」、これではこの地域は復興できるわけがないんです。ただただ市場原理・自由競争に任せていたら、一度住民ゼロになった町では商業でも工業でも農業でもインセンティブがあるわけない。戦えない。何かのテコ入れは必要です。僕は自身の作品や表現を通じて自力で誘客することももちろん考えていますが、同時にどれだけ行政と足並みを揃えられるかが鍵になるだろうと考えています。

Webメディアでの連載楽しみです!
白虎隊敗北後新政府にいじめられてその後も損な役回りを担って来た福島にはいつかリベンジして貰いたいですが、以前中通りで車の運転をしたとき怖い思いをしたり西と比較してやっぱり嫌な側面も有るので福島の様々なディテールに迫った展開を期待しております。

「車の運転をしたとき怖い思いをした」ってどんなんだかすごい興味ありますが笑。それはさておくとして、Web連載ぜひ楽しみにしていて下さい。11/15くらいに公開できるんじゃないか、という話で進んでいます。ブログは毎日更新して、気軽に近況報告書き散らかしていきますが、Web連載の方では「100年後の人に伝えるつもり」というテーマで書こうと思っています。

今日の記事で谷さんが書いていたことと壁画アートの写真に感動しました! 双葉、行ってみたいなあ。未来が本当に楽しみで記事を読んでワクワクしました。希望をありがとうございます。谷さんが双葉でどんな未来を思い描いているのか、いずれ記事に書いてくれたら嬉しいです。

ありがとうございます。僕は本当に、この双葉町で最先端の演劇が生まれる、アートで盛り上がっている、世界的に見ても価値のある作品が生まれている……そういう町にしたいと思っています。来てもらえたらわかりますが、そしてエアコン取り付けにきた電気業者さんも取材に来た雑誌の人もみんな口を揃えて言いますが、「双葉は難しい」。本当に難しい町なんです。普通に戦ったら勝てない。でも今、演劇に限らず美術や音楽、その他さまざまな文化の力でこの町に少しずつ追い風が吹いているのを感じます。住む人にとっては懐かしくあたたかい、訪れる人にとっては珍しいものがたくさん見れる、そういう町にできたらいいですね。

いま福島県浜通りが一番面白い、11月2日(水)

6時半起床、8時まで寝床でゴロゴロしつつアイディアメモの整理など行い、銀行業務、役場にて家賃を払う、デスクワーク少々、ウェブ連載の原稿を何度も何度も推敲したのち送付、その後ダルカラ演劇学校の講義準備&教科書執筆。わかりやすくて読みやすい。専門書ほど難しくなくWikipediaよりは整理されてる。そういうバランスを目指して執筆している。読み物として面白いって大事なことだ。たまに読み物として面白い上に勉強になるなんて書物がある。そういうのを目指したい。

午後、新聞取材一件、僕の年末の公演までの足跡を追っかけたいという嬉しいお申し出。企画会議通るといいな。その後雑誌取材一件。演劇雑誌でも福島の新聞でもなく、とあるライフスタイルの雑誌から。県の職員さんも同行されていたが彼曰く僕は双葉町の移住者第一号で確定らしい。ありがたい!

取材後ぐったり疲れて30分だけ仮眠。その後浜通りのアーティストたちが集まるアーティスト・ネットワークの決起集会へ参加。

現地参加27名、オンラインでの参加も加えればもっと。僕は演劇の人間だが映画の人や現代美術の人もいたし、町おこし、地域づくりのNPOや一般社団法人などの他に、アート・ディレクター、キュレーター、デザイナー、プランナー、フォトグラファー、ビデオグラファー、ライター、ディレクター、ヨガの人、シェアハウスやコワーキングスペースの運営、障害者福祉、公共劇場の人、役場の人、内閣府の人……。本当にいろんな人がいた。

福島県浜通り地方というのは原発事故により「全員避難!」と言われて一度もぬけの殻となり、どの町もそこから町を復興するという無理難題にトライしている。なので自然とアーティストやベンチャーの人が増える。今回の議題は「アーティストみんなで連携することでそれぞれの事業や効果を強化・効率化できないか」というものだった。旗振り役を務めてくれたmaruttりかちゃんは本当に賢い女性だ。素晴らしい引き合わせだ。僕もアートで町を立て直そうと考えている若者や同業者たちと出会えて刺激になった。こんなに面白い人が集まっている地域は日本中どこを探してもないだろう。全ての町がフロンティアなのだ。野心家ばかりうごめいている。

興味ある人は是非ご連絡を下さい。このアートネットワーク連携が成功した暁にはマジで福島浜通りが芸術的に言って最も新しい地域になっている可能性が十分にある。そしてそうならなければならないのだ。私は何も「地方にしては面白いよね」なんてレベルのものをやろうとしてるわけじゃない。国内でも最高峰の、そして国際的にも戦えるレベルのコンテンツを発信しようとしている。福島浜通りは大変なビハインド、難しさを抱えてしまった町だ。「それなりに面白い」なんてレベルのものでは戦えない。「世界的なレベルで面白い」コンテンツを作り、発信する。そうでないと勝ち抜けない。僕はそういうものをこの地域に持ち込むつもりでいるのだ。

11月1日(火)、ふたばふたたび

AM9時、銀行業務。また月末締めに間に合わなかった僕はポンコツだ。AM10時、ファミレスで執筆・事務作業など。進行中の企画について進展が見えて嬉しい。AM11時、再来年の執筆作品についてZoom会議。会議は踊り何だかよくわからん着地をする。卵が先か鶏が先かとよく言うが、やはり私は先にテーマを話すということが不毛に思える。「面白い」と思えるプロットや題材を見つけたのちにテーマが出てくる。炙り出されてくる。テーマ優先で書き出すと説教じみた話になりがちだ。あれは6年前だったか、デヴィッド・ルヴォーにアドバイスをもらって以来、社会的な問題について書くことをためらわなくなったが、それでも「テーマ性よりも芸術性」「意味より面白さ」という芸術至上主義を忘れずにいたい。何かを言うために演劇をやるのではなく、演劇をやるために何かしら言う……そう言っていたくにおんちゃんの言葉に僕は今でも深く共感している。

13時半から新国立劇場演劇研修所にてシーンスタディ。各幕を順番に読み合わせし短くダメ出しや意見交換・ディスカッションをする。今日は非常に難しい話題に触れた。観客を感動させるのは俳優にしかできない仕事だ。演出家はお膳立てしかできない、直接観客を動かすのは俳優だけ、つまり演劇創造の主体は俳優なのだ……という話と、共同創作する以上は全員がシーンに責任を持つこと、時として「私はそれには反対だ」「私はそれをつまらないと思う」と意見表明することの意義を話した。相手が僕のような三下でなく宮田慶子だろうが栗山民也だろうが「私はこう思う」「私は違う」と俳優は話していいし話すべきだと伝えた。もちろん「共同作業」は非常に難しい行為でありこんな簡単な原理原則だけではうまくいかない。お互いの領分・領域を認め合い体重を預け合うような信頼関係が必要だ。経験や現場勘も重要になる。しかし俳優は誇りあるクリエイティブな仕事だということは伝えたい。数年後プロの現場に彼らが飛び込んだときに思い返して欲しい。

18時に稽古場を飛び出し3時間半ドライブして1週間ぶりくらいに福島に戻ってきた。若干の寝不足で途中意識が遠のきかけたため大量のブラックブラックガムを買いコーヒーを爆飲みして常に「ワーッ!!」と叫んだりラジオやナビの音声に「なーるほどね!!」「了解!!」「マジでー!!」などとリアクションしながら運転していた。駐車場で仮眠しようとすると眠れないのに運転していると眠くなる、こういう時はこれくらいしか対策が思いつかない。

双葉につくとあまりの静けさに驚いた。全く人気がない。完全な静寂だ。寂しくも思うが同時に「帰ってきたな」という感覚もある。入居が10/1だったから気づけば今日で入居後1ヶ月が経った。当初はかなり意識して「東京へ行く」「双葉へ戻る」という表現をするように気を付けていた。気を抜くと「東京に戻る」と言ってしまうので。今ではすっかり「双葉に帰ってきた」と意識せず言えるようになった。そして、ちょっと落ち着いている僕がいる。ビジネスパートナーの菊池さんと短く雑談をして別れた。この短い会話も何だか「双葉で友達と会う」という小さな喜びに満ちていた。彼女の話によれば近所に小学生の兄弟を子供に持つ世帯が越してきたらしい。早く彼らの騒がしく遊ぶ声を耳にしたい。

10月31日(月)ワイルダーお前まちがってるだろ

作成中の年表

今日は午前中ひたすらデスクワークと書き物をして、午後は新国立劇場演劇研修所シーンスタディ授業。今日のテーマは「ニューハンプシャー州におけるグローヴァーズ・コーナーズの位置を特定する地図を作ろう」&「戯曲の中にある年号・日時・季節・数字、全部拾って年表を作るぞ」。基本中の基本ではあるが最近これを特に大事にしている。

どうしても頭に先入観というものがあるので基本的なことを見落としていたりする。「自分はわかっている」と思わずに当然と思えることでさえ一度は辞書を引いたり地図で調べたりする。今日も劇中の地名や距離を分析していくことで、グローヴァーズ・コーナーズの置かれた場所・地理・風土などが立体的に見えてきたし、年表を細かく作成していく中で多くの発見と矛盾が見つかった。劇中の年代を信じるとエミリーとジョージが2〜3歳差になってしまい、同じ宿題を解いたりしている一幕の台詞と矛盾が生じる。年号を信じるなら2〜3歳差があるがそれはどうも直感に反する。僕がテキトーに「ワイルダーが数字まちがって書いたんじゃないか」説を提唱したが、普通偉い作家はそういうことしない。僕のようなズボラな作家は「上演中に辞書引きながら見てるわけじゃないんだからさ」と数字や年号などちょこっと誤魔化して書くこともあるが、ワイルダーは偉い作家だ。きっとそういうことはしない。

と思ってたらさっそく劇中で「火曜日」と書かれている日付が史実(カレンダー)では「土曜日」だったという例が出てきた。ワイルダーお前まちがってるぞ。グローヴァーズ・コーナーズがグレゴリオ暦以外の暦を採用していたなら話は別だがまさかそんなこともあるまい。僕の中で「ソーントン・ワイルダーといえどもテキトーに書いてたとこある説」が再び可能性をもたげてきた。焦って結論を出さずにもうしばらくじっくりあれこれ資料をあたり読み解いて行く。

今日は学生が1900年ごろのニューハンプシャー州の古地図を持ってきてくれていて、そこには当時の鉄道の路線図や駅の位置なども記されており大変役に立った。こういう地道な調査をした上で、無視する、誇張する、誤読する、それは演出家と俳優の自由だ。しかし一度原点をじっくり読み解く。最近(こないだの『戦争劇集』とか「プルーフ/証明』とか)ではそういうことを大事にしている。明日も頑張ります。

10月30日(日)、本広監督たちとトークセッション

丸ビル1階のイベントスペースというめちゃくちゃ目立つ場所でトークイベントがあり、出演してきた。登壇者は『踊る大捜査線』『幕が上がる』ほかあれもこれも撮ってる本広監督ほか映画界で映画製作および映画祭執行にキャリアのある人たちばかり。演劇畑からは僕だけ出張っていたがこれから映画業界とも仲良く連携してやっていきたいので万難を排して駆けつけた。本広監督はが演劇マニアでもあることは有名だがまだ動員1000人にも満たない頃からダルカラを観てくれている。大先輩ではあるが古い友人と会うような喜びがあった。さぬき映画祭の話を諸々伺ったがいくつかの名案を全て福島で企画しているフェスティバルでパクらせてもらおうと思った。「パクらせてもらいます」と言ったら本広監督も目を細めて喜んでいた。たった1時間半しかないトークイベントだったので話したいことの半分も話せなかったので、言えなかったことを少しだけここに書いておくが、各地の映画祭が成功を収めているように今後はコンテンツ事業が地方の鍵になることは間違いない。人口がどんどん減っていく地方都市が工業や商業で勝ち上がるのは逆立ちしたって無理なのだから、文化芸術あるいは技術を用いてユニークな発信をする他ない。僕はこれは日本そのものにも当てはまると思っている。来たる少子超高齢化&人口減少社会において、規模感やマンパワー、資金力はアメリカ中国インドそういった国々に勝てるわけがない。これもやはり文化芸術あるいは技術の力を伸ばすことでしか戦えないだろう。元々日本が持っている文化芸術そして技術の資本力はすごいものがある。今ひとつそれを伸ばしきれていない現在の教育や政策を見直し、浮世絵が19世紀の美術をひっくり返したように、SONYやトヨタや松下が20世紀の産業を引っ張ったように、コンテンツ力で戦うことは可能だ。そして地方でも最高峰の演劇は作れる、それは……この先はまたいずれ書きます。東さんの『コーダ あいのうた』上映@請戸漁港マジで行きたかったな! あれホントいい映画だったよね。

山奥で書き物をする10月29日

今度、某ウェブメディアで連載が始まる。さてその第一回原稿をそろそろ……と声をかけられ断頭台に登った。故・井上ひさし先生も「書き出すまではみんな傑作」「構想を考えてるうちが一番楽しい」と言っていた。つまり、楽しい時間は終わりだ。書かねばならぬ。傑作になるか駄作になるか結果も見える。ああ怖い。

左は伊藤さん 右は長男くん

そこで山奥へキャンプに来た。心が弱るとすぐ山奥へ行く。しかしこうして新鮮な空気を吸い、小川のせせらぎを聞き、ビールなんか飲みながら晩ごはんの支度なんかしてるといいアイディアが出るんだよ。なんてうそぶいてたが、車で嘔吐し、森で行方をくらまし、バーベキューの網をひっくり返す長男氏の相手をしていたら、晩ごはんが終わるまで一行も書けなかった。

タコ糸とスルメで「ヤマメを釣る!」と息巻いていたが、何も釣れなかった

夜、息子が寝静まり、バーベキュー焼きながら考えてたことを少しずつ文字にしてみた。ここに日記で書いていることとは全く違う筆致で書きたい。こないだイギリス人の劇作家に福島を説明したときのように、福島のことを全く知らない若い世代や外国人、あるいは未来将来の人が読んだときに、今の福島の問題が克明に伝わるようなものにしたい。また僕に書けるのはやはり「ここに住む私」の実感でしかない。この日記は割とカジュアルにやりたいと思っているのだが(でないと続かない)、連載の方は結構ヘビーな内容でやりたい。書きづらいことや物議を醸すようなことにも勇気を持って切り込んでいかなければ物書きの名折れだ。

というわけで第一回の原稿は、移住の話の前日譚として、僕が初めて双葉町を訪れたときのヒヤリとした体験を書くことにした。近日中に発表になりますのでお待ち下さい。

青春、10月26日(水)〜10月28日(金)

すみません、体調不良でバテたりしてました。体調不良と言っても二日酔いなのですが、一昨日の夜にしこたま飲んで二日酔い……どころか何なら三日酔い、今日の昼過ぎまでずっと具合悪かった。↓にその盛会の様子を示します。

新宿歌舞伎町にある居酒屋「うまいもん 本店」。日本酒三種を同時に楽しめる「利き酒セット」メニューが10種類以上、いやもっとかな? とにかくたくさんある店で、私は午後7時から飲酒し始め、4時間くらいで記憶を失くしているのだが、どうやら深夜2時くらいまで飲んだらしい。日本酒をがぶがぶと。「冷酒と親父の小言は後から聞く」とはよく言ったものでひどい2日酔いに苦しめられることになる。いい大人が7時間も飲んじゃいけない。

なぜそんなに飲んだのかというと、上の写真、ここに写っているメンバーが悪いのだ。店は新宿。しかし集まったメンバーは福島県・浜通りに活動拠点を持つ演劇やデザイン・現代美術のアーティストたちである。「文化芸術の力で浜通りに力を」ということで会議をしていたわけだけれども、こんなに熱心に語り合う夜を僕は久々に味わった。劇団を旗揚げして間もない頃、20代にはそんなことばっかりしていたわけです。終電逃して、一体何の役に立つのか、演劇論や夢、次回作の構想やお互いへのダメ出しなんかを飽きずにずーっとやっていた。そういう青春を思い出す夜であった。

しかし確かにそうなのだ。浜通り、特に双葉町は、これから青春のときを迎える。我々アーティストだけでなく町役場の人や飲食業の人、農家さんもビジネスマンもみんなこれから「さぁ新しく町を作ろう」という大きな仕事に取り掛かる。それは夜明けと言ってもいいし、青春でもある。僕は人生で2回も青春をやれるのかと思うと嬉しい。

なので飲み過ぎた。2回目の青春だからと言って、愚かしさまで繰り返す必要はないのだが。初めてお会いする方もたくさんいたが「マジで福島浜通り、喧嘩してる場合じゃないよね!」と意見が合った。演劇、美術、デザイン、映像、それぞれのアートが手を取り合えば、さらなるシナジー(相乗効果)が生まれる。

新国立劇場・演劇研修所での授業にはちゃんと行っている(2日酔いでも行く)。「まずは徹底的に、戯曲のわからないところ、知りたいところを掘り下げよう」「自分の好きなとこ調べてきておくれ」と生徒に振ったら、ある生徒が劇中に出てくる飲み物を試作してきてくれた。素晴らしい仕事だ。その飲み物はちょっとトリッキーな書かれ方をしている上に、日本語に訳語が存在しない単語が使われていたりするのでイメージが掴みづらい。おまけに100年前の飲み物だからもう手に入れることもできない。そこで「近いもの」を「近い食材」を使って自作してきてくれたというわけだ。

信じられないだろうけれどもこの台詞、「ストローベリー・ソーダ」は正確にはソーダじゃないし、「クリーム・ソーダ」は日本のものとは色も味も全然違う。そして最終的に注文する「ストローベリー・クリーム・ソーダ」は「ストローベリー・ソーダ」とも「クリーム・ソーダ」とも違うものなのだ。わかるか、そんなもん。でも僕らは上記の写真のように実物でイメージを掴んだので絶対に間違えない。この3つの飲み物の「違い」がわかることで、エミリーがジョージを、そしてジョージがエミリーをどう思っているのかが読み取れる。

こういう小さな調べごとをするのは大変だけれど、きちんとやっておくと必ず演技に生きる。本当に楽しくやろうと思ったら楽をしてはいけない。むしろつらい、面倒な仕込みをたくさんして、苦しい苦しい時間をたくさん味わうことでしか、本当に「楽しい」演劇体験はできない。それは演劇屋でもラーメン屋でもビジネスマンでも同じだろう。

ま、なんかそういう標語を意識高い系のラーメン屋でこないだ見たのでそのままパクって書いただけです。意識高い系のラーメン屋はどうしてすぐポエムを壁に書いてしまうのか。カレー屋とかうどん屋で見たことないからラーメン屋特有の現象な気がする。

二日酔いも治ったので明日もバリバリ働きます。

2022/10/25、新国立劇場演劇研修所シーンスタディ授業

年に一度、新国立劇場演劇研修所でシーンスタディの授業を教えている。毎年どの戯曲を題材にするのか大いに悩む。今年も事務局と相談を重ねていくつかの案を出し、最終的に「生徒たちと一緒に発見しながら創る」ことをテーマにソーントン・ワイルダー『わが町』を選んだ。シーンスタディとはシーンを創ることを通じて演技演劇を教えることなので、最初のうちは戯曲の読み方、演技の立ち上げ方など「教えられること」から始まる。この「教えられること」にはセンスも才能も必要ない。技術は教えられる。しかしやがて「本当に面白いシーンになったのか」という壁に行き当たる。ここは「こうやったら必ず面白くなる」という方程式はない。俳優一人一人の個性が違うのだから「こうやればいい」という正解はない。どうしたら面白くなるのか、観客の共感や関心を買えるのか? ここは「教えられないこと」だ。一緒に創ることを通じて考える。それがシーンスタディだと思っている。生徒たちはまだ若くハタチそこそこの者たちばかり。『わが町』は来年3月に上演予定だが初めて上演する戯曲なので僕も不案内だ。僕自身「どうしたら面白くなるのか」という答えのない洞窟の探索を始める。

福島県庁&へたれガンダム

毎日ブログを更新するなんて言って昨日も更新してないじゃないか、というご批判は甘んじて受けます。またしても山奥で電波の入らないところへ行ってしまい、今日は朝から晩まで大忙しで全く更新する暇がありませんでした。今日は県庁へ伺い「なぜ演劇が福島の復興の役に立つのか」ご説明差し上げておりました。

すさまじい逆光 福島県庁

自分の作品は勝手に作るのでほっといてもらっていいんだが、今計画しているアーティスト・イン・レジデンス事業、来年夏の開催を目指している舞台芸術祭、そして演劇公演を使った文化発信と誘客、この3本柱を達成するには広く県民の理解が必要になる。今んとこすべて自己資金=持ち出しでやってるが、それでは10年20年と続く事業にならない。やがては賛助会員を募って資金を集め、事業化して収益も生み、県や文化庁の助成金だのみでない運営ができるようにという形を目指しているが、そのためにもスタートアップの段階では各自治体・市町村との連携や協力が重要になってくるわけで、県のえらい人たちにビジョンとプランを熱弁してきた。ハコモノではなくソフト、演劇というコンテンツとアーティストという人間の力を使って人流を生み出す。持続可能なスキームを作り上げ、何なら僕が死んだ後でも勝手に続いていくようなサイクルを作り上げる必要がある。福島の人たちに「なるほど、演劇があると町が楽しくなる、盛り上がるな」「地元のお店にお金も落としてくれるんだな」「それに、震災の悲劇の町としてではなく、楽しい町として見てもらえるかもしれないんだな」……とわかってもらえるまでは僕の自己資金と人脈をフルに使ってワイワイ頑張るつもりだが、僕という個人に属人的な事業にしてしまうと長く続かない。きちんと持続可能な事業形態を作り上げる必要がある。1~2年のうちには達成したい。やれると思っている。

おそらく来月半ばくらいには僕たちのプランとビジョンをすべてオープンにできると思うので、それまで待っていて下さい。あっ!と驚くすごい話がたくさんあって、マジで福島楽しいんじゃない?と思わせてやります。

閑話休題。福島県庁は県北、福島市にあるのだが、同市内にはこんな観光名所がある。お台場には等身大ユニコーンガンダムがあり、横浜には動くRX-78初代ガンダムがいて、博多にはRX-93νガンダムがいるのだが、福島にもガンダム立像があるのだ。

これだ。

通称「へたれガンダム」。一度見たい是非見たいと思っていたが車じゃないと行けないところにあるので、今回はじめて見に行くことができた。

凄まじい逆光の中、ピース
後ろ姿 そしてよく見ると……
これは! テム・レイの回路だ!
逆光を浴びて立ち尽くすガンダム
シュール

県中心部から車で20分くらいかな? 見れてよかった。めちゃくちゃセンスいい。ちなみに奥には野菜の無人販売所がありました。

きゅうりとなすが安かったよ