PLAYNOTE TUSK TUSK、稽古を終えて

2015年12月06日

TUSK TUSK、稽古を終えて

2015/12/06 22:30
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俺とあいつら

あうるすぽっと『TUSK TUSK』の稽古が終わった。今日、まさに終わったのだ。この5週間、まさに死力を尽くして戦ってきた。その戦いの第一幕が終わった。演出家である私にとっては、明日からの仕込み・場当たり・GPこそが本番であり、最後の調整になるわけだが、何かを「作る」という時間である稽古場が終わったというのは感慨深い。

出演者は2人の大人(しかも1場面しか登場しない)を覗いては、4人が子供。9歳〜16歳の俳優たちだけで、休憩込み2時間30分の正統派ストレートプレイをやり切るという、これ自体が”異常”な趣向だ。子役扱いでもない、飛び役でもない、彼らが主役の2時間半。正統派会話劇。

これをやるにあたって私がまず真っ先に心がけたのは、俳優を子供扱いしないということだった。しかし、「子供扱いしない」という言葉の正しい意味に行き当たるまでに随分と時間がかかった。大人(成人)の俳優と同じように扱う、というだけではうまくいかないのだ。時と場合によっては、「てめぇ、それはガキのやることだぞ」「おいおい、それはアマチュアのやる仕事だ」と指摘せねばならん。一人前の俳優として扱うためには、子供めいたことを言ったりやったりした瞬間に、それを「それはいけない」と指摘せねばならない。その芝居はヌルい、その言葉は嘘だ、その返しは相手の言葉を聞いていない。エトセトラ。

「それはいけない」ということをきちんと指摘する。それこそが、人を子供扱いしないという本当の意味なのかもしれないし、それこそが、大げさに言えば今の日本社会に必要なことなのかもしれないとさえ思う。誰もがみんな見て見ぬふりの知らんぷりで、お前はお前、俺は俺、自己責任だからどうぞご自由に、というのは、本当に他者を尊重することと言えるのだろうか。本当に自由だということなのだろうか。そんなことを考える一ヶ月だった。

これは演劇の現場だから、俳優を子供扱いしないでやろうという思いはあった。だがしかし、同時に子供はまだ子供なのだから、子供らしく自由にしていろと思うこともある。きちんと子供をやれなかった子供は、逆説的ではあるが、子供のまま大人になってしまう。きちんと叱る、ということをやるためには、「そこは子供でいいよ」というところと、「そこは子供ではいけない」というところを、切り分けて考える必要があるようだ。

日本全国の子育て中のお父様お母様、そして学校の諸先生方が、いかに大変な仕事をしているのかということがわかりました。こりゃあ大変だ。全力でサポートしてあげねばならん。

そして全力でサポートするためには、子供の問題というものを、家庭や学校だけの問題としてではなく、社会全体の問題、ないし共同体内の問題として捉え直す必要がある。これほどまでに地域の共同体というものが破壊されてしまった社会というのは、長い歴史の中でも今の日本が初めてだっただろうと思う。お前はお前、俺は俺、それが自由だ、という単純安直な思想だけでは、不幸になる人間が出てきてしまう。不幸になる人間? それはつまり子どもたちのことだ。いつだって、子どもたちはただ社会の被害者で犠牲者だ。

* * *

なんて話はさて置くにしても、とにかく稽古した。稽古して稽古して、シェイクスピアの前口上ではないが、お見苦しい点もございましょうが、しかしこの二幕、「これぞ谷賢一の演劇だ」ときちんと言える内容には仕上げられたと思う。ぜひ、観に来て頂きたい。

演出ではなく「演技指導」にとられる時間も莫大に多かったが、最終的にはきちんと「演出」できたから、これで文句が出るのならそれはもちろん私の責任だし、私の思う「こいつぁおもしれぇ」ということを多々盛り込めた作品になりつつある。

『TUSK TUSK』で私が考えていたことは、こうだ。──果たして現代演劇とは、一体何をすべきなのか? 数カ月前から、いや半年前くらいからだろうか。既存の純文学・ファインアート・現代演劇の有効性について、考えない日はなかった。端的に言えばそれは、「誰も今更サルトルは読まない」ということである。「サルトル」の部分は、お好きなように、19世紀以降の大文豪・劇作家の名前を当てはめてもらえればいいと思う。私にとっては、エンターテイメントや娯楽との仲直り、と言ってもいいかもしれない。

もう少し詳細を書きたいし、書こうと思ったが、やはりそれは上演物の成果を持ってご判断いただくのがフェアだと思うので、やめておく。しかし私が今やっている仕事は、そういう作家的・演出家的問題意識と繋がった仕事である。ぜひ、ご覧頂きたい。

あうるすぽっとにて、12/10から。始まったと思ったら終わっちゃう、長短期スケジュールです。どうぞよろしくお願いします。