PLAYNOTE 『PLUTO』、初日あけて

2015年01月10日

『PLUTO』、初日あけて

[公演活動] 2015/01/10 00:28

シディ・ラルビ・シェルカウイ演出『PLUTO』@シアターコクーン、ぶじ初日があけました。初コクーンもハッピーだったが、ラルビという素敵野郎に出会えたことが何より嬉しい。以下、若干ネタバレつつ回想。

ラルビは本当にチャーミングな人だった。38歳のオッサンのはずなんだけど、子供の瞳をしている。笑うともっと、子供に近づく。そして突然、哲学者の顔に変わり、とても大切なことを語り始める。モノ作りとか、人に何かを伝えるとか、真剣で、大事なことはきちんと口に出して言う、そういう人だった。

洗いたてのシーツみたいに純白で、洗いぐまみたいにチャーミングで、しかし妥協を許さず鉄の意志を持った人だった。

今日は初日だったのでいろんな人が来てたんだが、手塚プロダクション社長サンと手塚眞さんと浦沢直樹さんとに左右を囲まれた席に座らせられて、ド緊張しながら観た。咳を我慢し続けたら喉が異常に苦しくなって、逆にむせた。そういう席だった。浦沢さんも、高校生の頃から読んでいるスーパースター、『MONSTER』初めて読んだときの刺激とか今でもよく覚えているが、とても朗らかな、そして異常に若い人で、御年55歳が嘘のよう。42くらいだろう、あれは。

しかし何より、手塚治虫先生の魂と仕事をしたんだな、と思うと感慨だった。

15歳だったか、一ヶ月ほど入院して、全身麻酔で手術をしたことがあった。大したことない病気だったんだが、初の全身麻酔が恐ろしく、朝起きたら隣のじいちゃん死んでたりして恐ろしく、しかも当時医療ミスや医療事故がガンガン放送されてる最中で恐ろしく、そんなときに『ブラック・ジャック』一気読みして超感動し超励まされたのを覚えている。「俺の担当医は見た感じ七三分けの普通の人だが、あの人、実はブラック・ジャックだ」と思い込んだおかげで、手術もちっとも怖くなくなった(バカみたいだが、ホントにやってた)

それから手塚治虫作品を読みまくり、特に『奇子』や『アドルフに告ぐ』、『きりひと讃歌』なんかの大人向けな作品に深くハマった。こんなにシンプルな絵柄とお話で、こんなに深い哲学を描き取れるということに驚愕していた。後に手塚治虫先生ご本人も演劇や戯曲、純文学を愛していたということを聞いて、どれだけ励まされたことか。

あとはこれもう黒歴史だろうけどこういうのとか読んで余計に意味不明な手塚先生の奥底にただただ驚嘆。聖人というより、ただの芸術家だったのだな、と思って安心した。

2014年はデヴィッド・ルヴォーとシディ・ラルビ・シェルカウイという、どちらもまるでタイプの違う、だがしかしワールドクラスの演出家の仕事に関わらせてもらった。前者は翻訳家として、後者は上演台本として。二人とも、人柄も真逆だし、方法論も真逆だろうが、共通しているところが多々あって、それを俺は勉強させてもらったと思っている。

pluto-premiere.jpg

さよならラルビ、また会う日まで。

やっと2014年が終わった実感が持てた。明日からは『夏目漱石とねこ』稽古に参加する。2/5初日だから、えーと、もう、数えるのはやめだ。ラルビのように誠実にやれば、怖がることは何もない。