PLAYNOTE 内田樹×岡田斗司夫『評価と贈与の経済学』

2014年03月09日

内田樹×岡田斗司夫『評価と贈与の経済学』

[読書] 2014/03/09 21:15

年末に、「資本主義」をテーマにしたお芝居を書こうとしている。貧困ではない。格差でもない。デフレでも税制でも金融政策でもなく、資本主義そのものがテーマのお芝居だ。付け焼き刃では当然太刀打ちできないので、去年の春くらいから、コツコツと資本主義や経済、貨幣に関する書籍を読み漁っていて、そんな中で出会った一冊。

対談形式でとても読みやすく、経済や贈与論に関する知識なんかなくっても読めて、まさに「目からウロコ」な考え方が次々出てくるので、電車で読書なんかしたいときに是非おすすめ。

内田樹は、僕にとって「カッコいい左翼」「カッコいい言論人」の代表格だ。読みやすくて、ユーモアがあって、ダンディで余裕がある。裏返すとダメな左翼、ダメな言論人にそのままあてはまるでしょう? 読みづらくて、ユーモアがなくて、ダサくて余裕がない。そういう左派論客を見ていると、「お願いだから、引っ込んでて」と懇願したくなる。内田樹の文章は、明快で読みやすく、本当に大事なことだけを話しているから好きだ。きちんと考え尽くして書いているから、そうできるんだろう。文章が不明瞭で読みづらく、余計なことが書かれているのは、筆者が実はその問題についてきちんと理解していない場合に限られる。

岡田斗司夫については、「有名な人だよなぁ」というくらいの認識で、実は全然知らなかったんだけど、何だか面白そうな人だね。GAINAXの発起人で、オタク文化の急先鋒の論客、というイメージだったようだけど、今はその領域に留まらず、幅広く活動しているらしい。

贈与論といえば、マルセル・モースとレヴィ=ストロースであります。……なんて言いつつ、僕はどちらも原著にはまだあたってないので、素人同然、よく知らない。だからまず導入に、読みやすそうなこの本を手にとってみたんだけど、これが正解だったな。中学校高学年くらいの頭があれば十分読めるし、僕たちの身近な問題に引きつけて書かれているから、実感がある。

僕自身、「どうやって儲けるか」「どれだけ効率的に稼ぐか」という資本主義社会のチキンレースに巻き込まれて、考えれば考えるほどタコツボに追いやられていく感覚を感じていた最中だった。だから、「贈与」? え、どういうこと? あり得なくない? そんな余裕も時間も、ないんですけど? そういう人ほど、読むといいと思う。

「贈与」という概念の、ふんわりとした手触りだけでも知れたことで、僕は今、少し生きるのが楽になった。内田樹では、「利己的になれ」ということをどこかで書いていた。徹底的に利己的になれ。利己的になるということは、自分に利益のあるように立ち回るということだから、その場の感情や衝動に流されて、自分が損をするような振る舞いをするはずがない。中途半端に利己的だから、「あの人は利己的だ」なんて後ろ指を指されるのだ、と。どこかリアリストな部分があるというか、現実に根ざしている感があるから、内田樹はカッコいいのかもしれない。

そんな彼が語る贈与のお話だから、「受けるより与える方が幸福である」なんて宗教じみた言い草では決してない。贈与という「パス」の行為が、どのように人間の経済活動や思考・生き方の根底に敷かれているのか、ということについて、噛み砕いて書いてくれている。いや、喋ってくれている。「俺が俺が」「俺だけが」、「市場経済バンザイ」「損をしたくない」という考え方が、どれだけ僕らの幸福を害しているのか、ということを考えさせられた。そして僕らが知らず知らずのうちに行っている「贈与」という行動について光を当てることで、もしかしたら僕らはこうして幸福になっていけるかもしれない、という予感を感じることができた。

「嘘でしょ?」と思う人ほど、読んでみるといい。読まずに批判するのは、ナシね、この場合。