PLAYNOTE 串田和美演出『兵士の物語』

2013年08月27日

串田和美演出『兵士の物語』

[演劇レビュー] 2013/08/27 23:46
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いよいよ稽古が始まる『最後の精神分析 -フロイトVSルイス-』でご一緒する石丸幹二さんが出演しているので、はるばる松本くんだりまで観に行ってきた。快作。傑作。お芝居の楽しさと、まつもと市民芸術館という劇場の素晴らしさを夏の青空に叫びたくなる、素晴らしい観劇体験であった。

開演前のロビーから、串田和美は仕掛けてきていた。本番にオケピで演奏するベテランミュージシャンたちに、安っぽいズラやつけヒゲつけて、「お集まりの紳士淑女の皆さま~」とMC入りでどんちゃん騒ぎをやっている。旅一座の呼び込み、という風情だ。その音楽と声に誘われて、僕の近くで小さな子どもがお母さんと手をつなぎながら、ぴょんぴょん飛び跳ねてた。この光景だけでもう、ホラ劇場って素晴らしい場所でしょう? と、胸を張って言える。

客層は幅広い。白髪まじりの老夫婦もいれば、石丸幹二・首藤康之・白井晃のファンと思しき女性客、子ども連れ、演劇ファンなのかな、若い男女。演出が串田和美で音楽監督が小澤征爾だからね。松本市という「おらが街」に、世界最高峰のアーティストが集って、松本市のために作品を作っている。その価値を、みんな、誇っているし、楽しんでいるんだ。

開演すると、旅一座の座長と見える石丸幹二が朗々と語り出す。とある兵士の物語──。紗幕の奥で、首藤康之が上手から下手へ向かって歩いている。ただし、足踏みで、背景の書き割り幕がゆっくり流れて、ストラヴィンスキーの音楽に乗せて、兵士が草原を歩いているのだ。すると悪魔が現れて彼を誘惑する。「この本を持っていれば、財宝が、ざくざく、ざくざく……」。

もともと童話とか童謡とかが好きな自分にとっては、たまらない導入だったし、演劇のフィクショナルな、あるいはシアトリカルな魅力を、鮮やかに使いこなしている、見事な演出だった。その後も、紗幕にシルエットを大写しにして歪ませたり、旅一座の面々が黒子のように道具を動かしたり、水笛や打楽器を使って鳥の鳴き声や電話の呼び鈴を効果音として生でいれたり、照明機材を上空からバトンでゆっくり下ろしてきて風景を変えたり。

リアルに近づけてお客さんを劇の世界にいざなうんじゃなくって、これは演劇、演劇の楽しさ、音と光と人間が生み出す魔法、みんな好きでしょ? 楽しいよ! と、連れてってくれる。ワクワクしっぱなし。

特に、たった3秒のラストシーンのために凝らされた趣向は、もう、串田和美71歳の天才を、崇拝したくなった。

俳優も皆よかったし、音楽も素晴らしかった。ぜひ再演して欲しいし、また松本に行きたい! と思わせてくれた。地方公共劇場の理想を見せてくれた、お見事なプロダクションでありました。