PLAYNOTE 特にない

2013年05月20日

特にない

[雑記・メモ] 2013/05/20 01:18


特にないことを書く。

演出家をしていると、感覚が鋭くなる。演技の嘘やでこぼこは、すぐにわかるようになる。日常生活でも、よくわかる。深層心理や、裏側の思考や、内実、内心、サブテキスト、そういうものも読めるようになる。人の気持ちが、わかるようになる。わかりたくない感情も、わかるようになる。

とてもたくさんの悲しみが僕の目や耳から入って来て、俺は非常につらい気がする。今のプルーフ現場では演出助手にひたすら悪党のように振舞っているのだが、彼らの苦痛もわかるし、俳優たちの内心のつらさもある程度わかる気がする。そういうものを感じ取れるのが演出家の力量なのだが、その能力でとても人生を損している感がある。

以前、ヌードマウスという作品で、触れ合うだけで相手の気持ちがわかるという未来について描いたことがあった。それはきっと、ずっと昔から人間が求めて来た能力だと思う。でも、そんな能力を手にいれたら、人間は破綻してしまうと思う。人の気持ちは、わかればわかるほどつらい。

コップに入る水の量は、限界があるんだ。

言いたいことは、特にない。書きたい矛盾が、あるだけだ。とは、随分以前の私の当日パンフレットに書いたご挨拶内容だが、それだけさ。何もない。何もない。特にない。何もない。

今日はお散歩中のワンワンに手を振った。飼い主のおばあさんは、にっこり笑ってくれた。よかった。僕は今日、きちんと仕事をしたと思うが、一番よくやったのは、あの犬を連れたおばあさんへ手を振ったことだった。

希望を語り、癒しを届けるのが、現代の表現者の使命であるように思うが、僕の中には達観と諦念だけが渦巻いている。何もない。何もない。特にない。

報われないことばかり、と思いつつ、他人様には羨望の眼差し。何もない何もない。特にない。

おおきな菜の花畑に、忘れてきた白い扉を、嘆くだけの夜に、飲み干すアルコールと、分泌される脳内ホルモン。

いつか題材にしたいと思っているのが、異常性欲だ。彼らはあまりに悲しい。自分が心から好きなものを好きであるがために、世の中から糾弾される。誰も小学生をレイプしたいとなんて思っちゃいない。でも彼らはきっと、本当に小学生を美しいと思ってしまうんだ。あまりにあわれ。かわいそう。絶対に成就しない恋を、ずっとずっと抱えている。もちろん、小学生はレイプしちゃいけない。小学生に限らず、レイプしちゃいけない。そんなことは連中にもわかっている。でも、多摩市の底から美しいと思っているものに、手を伸ばさずにいられるだろうか? あいつらは可哀想だ。一生成就しない恋を、生きている。

そんなこと言ったら、ホモだって、レズだって、熟女好きだって、ニーハイ好きだって、年下好きだって、デブ専だって、みんな苦しいよね。

こないだの橋下市長の一番よくねぇ発言は、セックスを性欲と関係づけたところさ。セックスと性欲は、重なる部分が多いだけで、本質的に異なる。セックスの本質は、許しであり、理解であり、愛であり、禁忌の審判である。従軍中の若者どもが求めたのは肉の快楽だけではなく、誰かに抱き締められ受け入れられる安心であったはずだ。

私の仕事も、似たようなところがある。