PLAYNOTE Théâtre des Annales vol.2『従軍中のウィトゲンシュタインが、(略)』公演告知

2013年03月13日

Théâtre des Annales vol.2『従軍中のウィトゲンシュタインが、(略)』公演告知

[公演活動] 2013/03/13 06:05
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チラシ

昨年『ヌード・マウス』でデビューした、谷賢一(DULL-COLORED POP)×伊藤達哉(ゴーチ・ブラザーズ)×野村政志(青年団)ら好奇心わくわくトリオによる演劇ユニット・Théâtre des Annalesの第2回公演が約半月後に迫りました。第1回のお題は「脳科学」でしたが、第2回に我々が選んだテーマは、20世紀、いや全世紀を通して最大かつ最変態な哲学者であるウィトゲンシュタイン! 舞台は第1次世界対戦のヨーロッパ東部戦線。生前に彼が唯一発表した哲学書である『論理哲学論考』は、何と戦場で執筆されていたのです。

「難しいことをやさしく やさしいことを深く
深いことを面白く 面白いことを真面目に
真面目なことを愉快に、そして愉快なことはあくまで愉快に」

とは故・井上ひさし先生の有名な座右の銘ですが、「哲学」という一見ぼくたちに縁遠い学問が、実はぼくたちの「生き方」と密接にリンクしていて、ウィトゲンシュタインの一見難解な哲学が、いかに人間臭く、祈りに満ちたものであったか、を描きたいと思っています。

以下詳細。

Q. ウィトゲンシュタインってどんな人?

Wikipediaでも引きやがれ。と言うのはあんまりなので、俺が思う「ウィトゲンシュタインのここがやばい」を書いときます。一切ネタバレなしです。

彼のまずやばいところは、まぁ戦場で哲学書とか書いてる時点で相当やばいんだけど、27歳とかで「この本で哲学上の問題はすべて解決した」なんてぶちあげて、しかも有言実行、哲学者やめて学校の先生になったりする。まぁ哲学はすべて解決したんだからしょうがない。でも生徒とトラブル起こして学校やめて、今度は庭師になったりする。Wikipediaかどっかに「20世紀最大の哲学者は、庭師になった」とか書いてあって仰天したのを覚えている。

生き方がもはやほとんどパンクロッカーなんだよね。「完璧な本を書く」って言って5年も10年もかけて『論理哲学論考』書いて、かと思ったら「解決したからやめる」。で庭師やったり陶芸やったり、わけがわからず、んで10年後とかにまた考えることが見つかったらしく、復帰。「完璧なアルバムができたので解散します」って言って解散して、10年後にソロで活動再開するパンクロッカーと何も変わらん。30歳も年上の大学の教授を「お前はバカ」と一刀両断したり、何億って遺産を「俺に金はいらん」って言ってポーイと相続放棄したり(詩人や文学者に寄付したりした)、学校の先生時代には教育熱心が生き過ぎて生徒を殴ってクビになり、しかしそのことをずっとずっと後悔してて、15年も経ってから「あのときはごめんなさい」なんてノコノコ謝りに行って門前払いにあったりしている。哲学書はくだらないから読まないが、探偵小説を一所懸命読んでたり、大学の研究発表会には行きたがらないが、当時のB級アクション映画を見て「これこそ芸術だ」なんて喜んだりしてる。わけがわからん。

大体、彼の書いた哲学書自体が、よくわからん。箇条書きで書いてある。何の説明も補足もない。この本を理解することができるのは、自分と同じ問題を共有している人だけだろう、なんて書いて、ぽーんと放り投げている。大学の恩師に「あなたに理解できるとは思えませんが」なんて手紙を添えて進呈したりしている。わけがわからん。

そんな、わけがわからんところに惚れて、こいつのことを本にしました。

執筆の大きな助け:従軍中の日記

わけがわからん! けど、わからんことは書けない。ので、いろいろ調べたら、やっと助け舟が見つかった。ウィトゲンシュタインの従軍中の日記。これがまた凄いんだよ。左のページに哲学の考察、右のページに日記、というスタイルで、従軍中の4年間、ずっと書いてた。ただし右のページは暗号文で。どういうことだ。

ここが面白い。右のページにはひたすら、個人的なことが赤裸々に書いてある。「同僚がバカで死にたい」みたいなことや、「オナニーしちまった、ちくしょう」みたいなこと、「こんな夢を見た」みたいなこと、「砲弾が飛んできて超ビビって逃げた、俺は動物だ、人間以下だ」みたいなこと、「神よ助け給え」、ただし神はいないと思ってる、みたいな。

あ、こいつ、人間だな、と思ったし、ドラマに満ちていた。以上に書いたことは、すべて戯曲中のネタバレではない。まだまだ書ける。だけど、ほんとに大事なとこだけ、書きました。ぎゅっと詰まったウィトゲンシュタインの核のとこ。たった1時間半のお芝居です。以下、公演情報。

Theatre des Annales vol.2『従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行──およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならないという言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか? という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語』

作・演出 谷賢一
出演 伊勢谷能宣、井上裕朗、榊原毅(三条会)、西村壮悟、山崎彬(悪い芝居)
会場 こまばアゴラ劇場
日程 2013年3月29日(金)~4月7日(日)

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チケット料金
前期(3月31日まで) 3000円/当日券 3300円/U25 2500円
後期(4月7日まで) 3500円/当日券 3800円/U25 3000円

詳細
http://www.theatredesannales.info/

チケットについて

公演日程が長いので、前半日程が500円安い、プレビューとは言わないけどお得なチケットになっています。ぜひここで観に来てね! 僕が毎日いるよ! アフタートークも毎日あるよ!

出演者について

男5人の濃密芝居です。一言ずつコメントします。

伊勢谷能宣
「ぼく哲学きらいなんです」と言いつつ一番哲学してるアンビバレント俳優。元燐光群の帰国子女。とっても素直だが熱き血潮で人を殴る。料理が上手。
井上裕朗
超賢い人なので今回はバカ役を振っときました。人生においては東大卒・大手証券会社というキャリアを棒に振り、俳優道に血道を上げてる、演劇バカ。結局バカ。セシウムベリージャムのゴゴ兄さんだよ!
榊原毅
三条会が東京に送り込んだ怪物。存在そのものが脅威。『ひかりごけ』で一目惚れしてラブコールしたら出てくれちゃった。必見。
西村壮悟
新国立劇場俳優養成所出身のシャイな実力派。さわやかお兄さんからクソ悪党まで何でもやるので、今回はとても難しい役を振りました。
山崎彬
劇団・悪い芝居のカリスマ主宰。俺の相棒にしてアイドルなので、超重要な役を無茶ぶり。

ひどいコメントですが、しょうがない。あまりに出自の違う5人なので、ミーハーに紹介するしかないのです。この5人を共通に知っている人はいくら東京の狭い演劇界と言え、いないんじゃないかな? それぞれ、みんな、違う畑で、それぞれ、みんな、自分の足で、歩いてきた人たちです。

男ばっかり5人芝居、というのは初なので、稽古場が汗臭くて死にそう、とかそういう事態になるかと思ったけど、そうでもない。みんなとっても爽やかに、制作のガールズがいれてくれたコーヒーや紅茶を飲んだりしている。レモンを入れて飲んだりしている。昨日はエロ本とヌードトランプ持ってったけど、みんな冷静でした。さすがだね。

見どころ

結構おもいっきり第1次世界大戦の話なのです。第1次世界大戦ってすごいんだよ。近代と現代の境目の戦争だから、あまりに混沌としている。機関砲の登場により、銃剣突撃によるシンプルな人VS人の対決が完全に姿を消して、人は機関砲や迫撃砲や手榴弾や有刺鉄線や戦車や毒ガスやその他もろもろにより、玩具みたいにぶっ飛ばされて、どんどん死んだ。1つの会戦で10万人以上あっさり死んだりする。

その辺が、お芝居の背景にもなっています。そして、そこから、『論理哲学論考』という、哲学史における大事件が生まれるのです。

意気込みなど

今年は作・演出と両方やんのは、これとあと1本だけの予定なので、大事にしています。去年の4月くらいからずっとウィトゲンシュタイン読み続けて、頭おかしくなる直前でしたが、先週無事脱稿しまして、今は稽古を着実にこなしているところです。

「よくわからなかった」とは言われたくないが、「ウィトゲンシュタインのことがよくわかりました」というお芝居にもしたくない。哲学書と演劇の最大の違いは、哲学書には結論があるけれど、演劇には結論がないところ。ただ、いいお芝居にしたいですね。

そしてウィトゲンシュタインというラブリーな男が、いかに生き、いかに考え、いかに祈ったか、というところを、お客さまと共有したいものです。奇跡の実現を目指して。頑張ります!

ご予約はぴあ・イープラスほかから受付中。僕の友達は僕までご連絡くれても対応しますっ。ぜひ観に来てね。