PLAYNOTE 東野真『緒方貞子 ―難民支援の現場から』

2013年01月17日

東野真『緒方貞子 ―難民支援の現場から』

[読書] 2013/01/17 11:25

ひさびさに、執筆用取材とかとは関係のない本が読めたので、とても楽しい読書であった。新書なのでさらりと通読。

何で急に緒方貞子さんなのか、みんなには全然わからないだろうけど、高校生くらいかな、あの頃からずっと尊敬している方でした。国際政治に関する圧倒的な知性と、内戦の国々で最前線まで出向いて行く勇敢さ。世界平和に最も貢献した日本人の一人だと思うけれど、いわゆる夢想家タイプじゃなくって、現場主義で現実主義なところがすてき。

ステキだった文章。

「官僚的にならず、考え続けてください。ここ(UNHCR)に来たとき、私の最大の強みは官僚出身でないということでした。よく私は人から学者っぽいと言われます。そうかもしれません。しかし、学者の最大の武器は、自由にものを考えられるということです」

(ルワンダ危機の際に緊急対応チームを率いたUNHCRのメンバーの述懐)
「──彼女(緒方さん)は組織の長ではありますが、物事を上からではなく下から見ていくのです。
 たとえば、ある国を訪問したとしましょう。ふつう、初日は首都に行きます。そうすると、緒方さんは『これでは状況がわからない』と言い出します。私たち全員に対してご立腹になるのです。現場に行くまで、私たちを困らせます。そして、自分の目で現場を見るとすべてが落ち着き、解決策がひらめくのです。誰かが書いた報告書を読むのではなく、現場で働いている人々や難民と直接話をしてから出ないと自分の意見をまとめない。(中略)
 ジュネーブの会議でも、いつでもこう言います。『オーケー。あなたの考えはわかりましたが、現場担当者の意見はどうですか。現場の実情を知りたいんです』。政治学者ですから具体的で、かつ現実重視です。質問は『まず原則は何ですか』ではなく『ここの状況はどうなっていますか』なのです」

僕も、世界の平和を守るようなお仕事がしたいなぁ。劇作家としてでも演出家としてでも、いやいっそ肉体労働者でもいいから、本当に苦しい人生を送っている人のところへ行って、何かをしてみたいなぁ。

なんて、ぽやっと言い出してしまう僕のような甘ったれた夢想家とはぜんぜん違う、断固たるリアリストなのです。緒方さんは。でも、そんなリアリストが、やっぱり最後は金ですなぁゲヘヘへ、ではなく、人を救うこと、人間の命が何より重いということを、念じてやっている。素敵な人だ。

巻末に掲載されている講演会の議事録も興味深かった。日本やアメリカがどんどん「閉じた」政治を行い、有権者のご機嫌取りで、短期的な視点でしか政策決定・意思決定をしていないこと。よくない。国家主義では日本は破綻するよ。国際主義という考え方を大事にするんだよ。という、Live and Let Liveなことを、非常に論理的・具体的に論じたスピーチでありました。