PLAYNOTE 俺とあがさと彬と酒と、を振り返る

2013年01月03日

俺とあがさと彬と酒と、を振り返る

[公演活動] 2013/01/03 20:31
2012-12-24 20.49.42

DULL-COLORED POP谷賢一×悪い芝居・山崎彬が岡田あがさを主演(玩具)にしてやりたい放題演劇やりまくるプロジェクト、「俺とあがさと彬と酒と」、第1回公演が無事全日程終了致しました。年末年始の大わらわ、歳末のご予定を殺してまでご来場頂いた皆さま、どうも本当にありがとうございました。歳末のご予定を殺せずにご来場できなかった皆さま、大変、残念なことをなさいました。

俺とあがさと彬と酒と、なんてタイトルにしたせいで、「あいつらふざけてんじゃねぇのか」と思われたようでしたが、結果、ガチの演劇作品が50分×2本並ぶ、大変濃密な演劇時空となりました。少し、振り返ります。

作・演出:山崎彬(悪い芝居)『マボロシ兄妹』 [出演:岡田あがさ、谷賢一(DULL-COLORED POP)]

マボロシ兄妹 GP写真1 マボロシ兄妹 GP写真2
photo by mao

3年振りの役者出演。愚直なまでに素直かつ従順に、お稽古しました。「ふだん、演出家として、稽古場で“俳優にはこうあって欲しい”と思う姿勢を自らやってたんだよね」と彬くんには形容されましたが、その通りで、ブランクがある分、必死かつ前のめりにお稽古に参加し続けました。おかげですごく健康になったよ。また、俳優が感じる様々なトラブルを、久々に身をもって体感できたのもよかった。

『マボロシ兄妹』において山崎彬は、千秋楽前日、恐ろしい至言を残した。

谷「先生、今日はどうでしたでしょうか」
彬「どうだったと思いますか」
谷「落ち着いて、しっかり、やれたとは思いますが」
彬「そうでしょう。それだけです」
谷「どういうことですか」
彬「演劇になっちゃってたね。演劇やってたでしょ。ダメだよ演劇なんかやっちゃ! 奇跡をやらなくちゃ!
谷「……!」
彬「確かに丁寧にやってたね。落ち着いてやれてた。でもね、いいかい、谷くん。舞台ってのはね、やったことしか、ない。だから今日の舞台には奇跡は起きなかった。そういうものさ」

これだけ読んでも、我々のマボロシプロセスを共有していない人は、十中八九、勘違いしているだろう。すべてを補足することは不可能なので、僕にとって一番ショッキングだったことだけ、書いておく。彬は言った。

「俳優が見ているものは、ぜんぶ、お客さんに見える」
「人間が想像できるものは、ぜんぶ、演じられる」

そして僕らは、一匹の馬から海を超え広がっていく世界を見ようとしたり、頭の中で木札を貼ったりインクで書いたり、現実という名の雨に打たれて穴だらけになる傘を目前に見たり、そんなことばかりをやっていた。そして最後は、出演俳優も観客もすべて、輪郭のないマボロシとなって融け合い消えていくことを目指していた。

……演出家としての僕はリアリストもいいとこなので、この発想にはハッキリ言って頭をガツンと殴られた思いであった。想像力に果てはない。これは、僕も認める。しかし、想像できるものは、すべて演じられる、だなんて。ということは、この世に演じられないものなんてない、ということじゃないのか?

今回の公演で、いろんな収穫があったけど、一番おおきな収穫は、この『マボロシ兄妹』への参加による彬ショックであったように思う。こんなに演劇を信じている人がいたなんて。小賢しくなるばかりの僕の演出論を一太刀の元にぶった切る、実に鮮やかな言葉であった。

作・演出:谷賢一(DULL-COLORED POP)『ふたりマクベス』 [出演:岡田あがさ、山崎彬(悪い芝居)]

ふたりマクベス GP写真1 ふたりマクベス GP写真2
photo by mao

岡田あがさ×山崎彬で『マクベス』をやれる。という至福。50分という短編というより中編に近い長さであったが、『マクベス』を完全に二人きりのベッドルーム二人芝居に置き換えての上演、という試みは成功であった。何よりの成功は、最終日の二人の言葉だ。

「もう何十分、何時間でも舞台上にいれるって感覚があった」

個人的な反省としては、もうちょっと書き換えると完璧なオリジナル作品として完璧な美しさを得られそう、という「いい予感」が残ったことである。まぁ、『マクベス』とは一生の付き合いになるだろうから、またいずれ。ね。そのとき、彬とあがさ以上の俳優が必ず身近にいるように、頑張らなくちゃね。

総括すると、俺とあがさと彬と酒と

彬は言った。確か、千秋楽のスタンバイ中のことだった。

「フェーダー上げると照明がつくとか、ボタンを押すと音楽がドーンと鳴るとか、そういうことでさえ、すげぇ!! ってことを、忘れたくないよね」

この一言に僕の感慨は要約される気がする。

もっと簡単に言うと、
演劇ってステキ。
演劇ってスゲェ。
演劇って、何でもできる。
そういうこと。

企画の立ち上げ当初から、こんなことを書いていた。

最近割と、でかい規模の公演ばかりが続いていて、人間関係に疲れたり、うざったい手続きにくたびれ果てたり、「演劇をやるためのあれこれ」に僕はちょっとうんざりしていて、もっと素直にシンプルに、そして死ぬほどストレートに、演劇の醍醐味だけやれないか。そんなことを考えていて、山崎さんと意気投合しました。

「俺とあがさと彬と酒と」をやるための挨拶より)

今回、超・小規模のカンパニーで挑んだので、特にスタッフ陣と、出演俳優には大変な負担をかけた。うん、つまり、俺たち三人+常駐スタッフであるさおりん・港谷の五名は、毎日が戦場であり謝肉祭でありグランバザールであった。でも、みんな、「演劇ってすごいね」「楽しいね」ということを、子どものようにはしゃいでいた。演劇を始めたばかりの学生みたいな気分で、しかし今までに得た演劇知や演劇体力を総動員して、この公演に臨んでいた。

僕は同時に、不安もまた、感じている。次の現場、次の次の現場で、こんなに無邪気に、演劇を楽しめるだろうか? 「楽しいから演劇をやっているんじゃない」というのが、DULL-COLORED POPをはじめて以来の僕の口癖だったし、その口癖は、ここ三・四年、どんどんつぶやかれる頻度が増えていった。責任や負担や規模が、どんどん大きくなっていったから、自然とこの口癖は、連発されるようになっていったし、「楽しそうでいいねぇ」という周囲からの無責任な羨望に対する防衛本能もあっただろう。

実際、彬とあがさという、2人の完全な演劇狂とだけ稽古を続ける、という環境が、確かに僕の楽しさを担保していたのだろうと思う。そこにはいない、ダルそうな奴とか、ナメてる奴とか。いや、大抵の僕の現場にはそんな不届き者はいないのだが、たまに外部で引き受けた仕事なんかで、一人か二人、混じっていて、どうやったらオフが増えるかとか、どうやったら入り時間が遅くなるかとか、そんなことをばかり考えているキャストやスタッフが一人か二人、混じっている。これからもいるだろう。仕方ない。だってみんな、仕事でやってるんだから。365日、演劇をやっているんだから。

だけど自分は決然と、ピュアっピュアな演劇をやり続けたい。俺だけは決然と、ピュアっピュアな演劇をやり続けるぞ。という養分をあいつらから補充した。あいつらもまた、演劇地獄の輪廻に再び巻き込まれ、いろんなトラブルに首を真綿で締められたりもするのだろう。でもきっと、2年後、3年後、俺とあがさと彬と酒とvol.2があるときには、また同じようなピュアっピュアな演劇バカヤロウ公演をやり、演劇バカヤロウたちの楽しさを体感できるだろう。

2012年を締め括るにふさわしい大バカ公演であった。ご参加、お手伝い、ご来場の皆さま、本当にどうもありがとう! またどこかで!

おまけ: 俺と彬の公演シメ

大入り袋を渡したところ、東京の我々と京都の彼らたちの間で、中に入っている五円玉の扱いについて作法が異なることがわかった。

「もらったらすぐ、中の五円玉、近くの人と交換するんだよね」
「え、なるべく早く、どっかのお店で使うんじゃない?」
「また新しい御縁が入ってくるように、フタを開けた状態で保存しておいて……」

結局どうにも結論が出なかったので、せっかくだし初詣へ行ってお賽銭に投げてくることにした。2012年のシメ公演である俺とあがさと彬と酒との大入り袋五円玉を、2013年初詣のお賽銭にするなんて、何だかとってもステキじゃないか!

そして俺と彬は、花園神社境内にある、芸能浅間神社へ行った。俺がここ5~6年、毎年必ずお参りしている場所だ。

俺と彬の公演シメ

颯爽と五円玉を取り出す俺たち2人。

俺と彬の公演シメ

その後、おみくじ引いて、出店で最後のメンバーである「酒」と再会してきた。

俺と彬の公演シメ

彬は腹を壊していたので、俺が一人で黙々と食べた。

2013-01-03 17.58.32

この場所は僕にとって特別な場所だったので、彬を連れて行けてよかった。

* * *

俺と彬と

俺には友達が少ない。彬とは友達になれた気がする。しかし公演が終わってしまったので、もう遊べなくなってしまった。奴がまた東京に来たときなんかには、「よぉよぉ久し振り! 元気でやってる?」なんて会いに行って、話題のなさに驚くだろう。遊ぶ、と言っても、あいつとは、演劇でしか遊ばなかったので、演劇がない公園では、遊び方がわからない。

BLANKEY JET CITYの歌詞を思い出す。

星が見える時間まで 遊び続けても
これっぽっちも少しも 飽きなかったはずなのに
サンドイッチを食べたら やることがなくなっちまった俺たち
でも今日は特別さ 俺はまだここにいるよ

(BLANKEY JET CITY『公園』より)

俺たちはサンドイッチを食べ終えてしまったので、明かりの消えた公園に、無言で佇むだけ。また新しいサンドイッチを買いに行く日まで、大人しく一人でポテチでも食べていよう。