PLAYNOTE 眠り姫と全裸の騎士

2012年03月08日

眠り姫と全裸の騎士

[公演活動] 2012/03/08 09:24
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"affection"

くろねこちゃんとベージュねこちゃん、稽古は進む。昨日は通しを3回やった。インターバル20分で3回も通しをやるというのは生まれて初めてだ。インターバル20分で本番を3回やるのは、何度もあったが。

カバンをなくしてとても身軽になった私。所有する物質に所有されるという文明人のくだらねぇ正体に唖然としたり、PCないとツアー先でどうやって仕事すんのまた新しいPC買う金なんかねぇよという生活人としてのくだらねぇ悲鳴を押し殺したり、まぁいろいろである。大丈夫。死にゃあしない。

数字を拾い集めるのがすっかり嫌になってしまった僕は、てんびん座の右と左に自分を座らせて、パンと絵筆とハリウッドムービーのことについて考える。しかしカバンを一式なくしても、目の前のことに集中する、演劇の基本、そいつをきちんとやると、雑想念を追い払えることに改めて気づいた。そういう意味で、演劇は救いでもある。

無駄な鉄砲が多過ぎる。さくら水産は一つの象徴である。無駄をなるべく多く詰め込むことで、人間は何とか呼吸が出来る。酸素しかない世界に人間は住めない。

以前イギリスで読んだ変な童話、ドン・キホーテと眠り姫が出会うみたいな、風車の竜はどこ行った。原色鮮やかなPOP文字による子供向けの装丁を開けば、そこはシュールレアリスムも世界である。眠り姫は茨の城ではなくて、水道管の絡まった古い1Kのフラットに閉じ込められていて、ドン・キホーテはロンドンを全裸でぶらぶらし、ビッグ・ベンに戦いを挑む。しかし彼の正体は水道局の公務員だ。

水道局の公務員であるところのドン・キホーテ氏は、ロンドンの中心にそびえ立つ巨悪と戦うことを使命と認識しているのだが、しかし水道局から渡されたスマートフォンには次々と業務内容を指示するメールが届く。まずい。大変まずい自体である。

眠り姫の眠るフラットは、水道局の魔の手、つまり年度末に余った予算を消化するための公共事業として行われた、水道管延長工事の被害者だ。眠り姫とドン・キホーテは恋に落ち、ドン・キホーテは一つの提案をする。君のフラットを取り囲む水道管をやっつけるには、基礎工事からやり直さなければならない。安く見積もって1万5000ポンドは必要だ。そのために彼はビッグ・ベンと戦う準備を念入りに進めながら、水道局職員としての業務を淡々と遂行していく。月給は約1200ポンド。家にはオウムを一匹飼っているが、この機会に売った。PS3も売った。彼にはサンチョ・パンサはいない。食あたりで療養中。

そしてドン・キホーテのスマートフォンに、恐るべき皮肉、水道局からフラットの水道管延長工事の指示が届く。これはドラマのお約束だ。ドン・キホーテはさらなる水道管延長工事を行うことで、1万5000ポンドの貯金計画を進めなければならないが、さらなる水道管延長工事の結果、基礎工事の費用は2万ポンドまで跳ね上がるだろうし、そもそも彼の使命はビッグ・ベン、みんなあれただの時計台だと思ってるだろうけど実はカオスドラゴンだってそれ、との戦いを忘れてはならない。

そこに犬が出て来る。犬は迷路のようなウォール・ストリートを自慢の肉球で踏み締めながら、縦横無尽にうろちょろする。犬はワープ機能を備えているので、角を曲がると六本木やムンバイに一瞬で飛べる。昨日はテヘランにいたらしい。犬はFAX番号がないためこのような長距離ワープを繰り返さねばいかんのだが、しかし犬はさして苦にも思わない。何故って犬にとって、歩くこと、走ること、ワープすることは自然の摂理、当然の行為、あまりにもありふれた当然のことだから。

最後はサーティーワンアイスクリームの進出した韓国の地方都市における地上げ屋VSアイスクリーム少女の戦いが描かれ、奥付にはこう書かれている。紀元前211年出版。講談社。落丁はお問い合わせ下さい交換します。いつの間にか日本語だ!

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もういいだろ、この辺で。ねじれた道を歩いていると、自分までねじれてしまう。物事は直線には進まない。しかし石ころは真っ直ぐ水底へ落ちる道を知っている。