PLAYNOTE 僕がこんなに酒を呑むのは

2011年12月04日

僕がこんなに酒を呑むのは

[雑記・メモ] 2011/12/04 03:25

僕がこんなに酒を呑むのは、何故なんだろうと考えた。

すぐ思い当たるのは、太宰治の『桜桃』だった。

……ヤケ酒というのは、自分の思っていることを主張できない、もどっかしさ、いまいましさで飲む酒の事である。いつでも、自分の思っていることをハッキリ主張できるひとは、ヤケ酒なんか飲まない。(女に酒飲みの少いのは、この理由からである)

太宰治は実にいい。ほんの一言の中に、錐よりもナイフよりも鋭い風刺を入れてくる。

毎朝、劇場なり稽古場なりへ向かう途上で、嘔吐をしながら歩いている。夜分の酒のやり過ぎで、胃がどうにかなっちまっているらしい。しかし道端に反吐を吐く度、むしろ戦意が昂揚して、いい気分になる。俺はいつ死んでも構わない。輝かしい一瞬さえ手に入れば構わない。

作家というのは最低のサービス業だなと思うときがある。誰も俺と真剣に議論をしようとしてくれない。どうやら現代の作家の使命は、皆さまを楽しませること、それに尽きるらしい。嫌だ、嫌だ。俺はただ、真理真実が見たいだけなのに。

演出家なんてやってると、人間の表情・仕草・一挙手一投足に凄まじく敏感になる。あぁ、この人は、自分の尊厳を守ろうとして、こんな卑屈なニヤニヤ笑いをしているのだな、とか、あぁ、この人は、自分の生の無価値を何とかして相殺しようとして人を嘲ることに全力を傾けているのだな、とか。僕は死ぬほど嘘がうまいのだけれど、その分、人の嘘を見破るのもうまい。口には出さないけど、大体すべて見透かしている。

しかし人にそれを伝えるというのは難しい。前述の通り、楽しい文章でなければ誰も読んではくれないからだ。一番簡単な手段は、自分を卑下するということだ。人間は誰かを自分より下だと認識したり、想定したりすることで、とっても簡単に自尊心を得ることができる。

俺もやってるだろう。そしてそれを自覚するたびに、俺は嫌気がさしている。

そうして酒を飲む。誰かに自分の思想を理解してもらうために、一番簡単なのは、「私はあなたのことが好きです」「私はあなたのことを敬っています」と伝えることだ。相手を持ち上げること、それをやれば、伝達・伝播は急に簡単になる。それくらい、演出家を長年やってきた俺からすれば、簡単な方程式として胸中に備えはある。

行き着くところまで行った、この娑婆苦の実感に、誰かとどめをさしてくれないだろうか?

現代に芥川龍之介が生きていたら、多分彼は、ライトノベルを書いているだろう。芥川の『邪宗門』を読んだことがある人なら、わかるんじゃないかな、

きちんと話がしたい。そう思いつつも、きちんと話ができる人が少なすぎるので、俺は永遠の迷路の中に迷い込んでいくだけである。

コメント

投稿者:通りがかり (2011年12月04日 10:00)

二日酔いの頭でこのエントリを読みました。こういう文、好きです。

投稿者:kyoko (2011年12月04日 23:20)

『俺はいつ死んでも構わない』
何を言ってるんだこの人は・・・奥さんいるのに。と思いつつ
『輝かしい一瞬さえ手に入れば構わない』には何だか同意。
輝きのないただダラダラと長い人生なんて・・・とも思うし。

谷さんは書きたいことが書けずにいるのですか?

投稿者:Kenichi Tani (2011年12月05日 22:52)

酔っ払いの戯言です。お騒がせしましたですにゃんにゃん。

投稿者:kyoko (2011年12月06日 00:27)

戯言なのですか?
文章から強いジレンマと、歯痒さを感じます。

投稿者:Kenichi Tani (2011年12月06日 00:29)

kyokoさんの読解は正しいですね。

だから酒を呑むのでしょうなぁ。