PLAYNOTE 恩田陸『中庭の出来事』

2011年10月12日

恩田陸『中庭の出来事』

[読書] 2011/10/12 14:25

某先輩からオススメ頂いて読んだ。

感想を書くのが難しい。すさまじく凝った構成をしているんだけど、俺が心惹かれたのは構成よりもディテールだった。例えばのっけから、とれてしまったコートのボタンを探そうかどうしようか、そんなところに心理描写をさらりと混ぜ込んでくる当たりは小説を読む醍醐味を味わった。

演劇関係者の端くれとして、この小説が演劇を題材にしている点については興味がそそられる。はっきり言って、読んでいて、あ、この作者は(執筆当時は))演劇経験がない人だな、ということがすぐさまピンと来た。かなり取材をしているだろうし調べてもいるだろうし、いろんな話を聞いてもいるだろう、でも演劇のモノ作りの内側にいた人ではないな、と。

しかしそれは不快ではなかった。なるほど、演劇なり演技なり役者なりという要素には、外側から見るとこんなにたくさんの夢や神秘の匂いがするのだな、と。ある特定の仕事を続けてきて、現実や矛盾にうんざりして、でもお客さんから「どうもありがとう」「素敵な仕事ですね」と言われて生き返ったような気持ちがする、そういう体験は演劇業界の人間でなくともよくある話だろう。こそばゆい感じはあったが、自分のいる業界を外側から覗き見るようで面白くもあった。いろいろと「それはあり得ねーよ!」ってこともあるんだけど。

お話の中核をミステリと思って読むよりは、俺は女心というものにフォーカスしてこの話を読み直してみたいと感じた。ある意味で大胆な劇中劇の使い方、『夏の夜の夢』(劇中では『夏の』と古い通名だが)をぶち込んでくる当たりのダイナミズムは、演劇業界の中から見るとあまりに大胆かつストレートでできないもんだが、小説というフレームの中では効果的に機能している。読者層にも演劇マニアはそうそういないだろうし。夏の夜の夢のヘレナという強烈な愛の人物に重ね合わされた女心は、毒々しいまでに色濃い生命を持っていて、小説ならではの自由な跳躍、現実では会ったことのない誰かに会えた感じがして、ドキドキした。