PLAYNOTE 鳥の劇場・鳥の演劇祭4に行ってきた

2011年09月26日

鳥の劇場・鳥の演劇祭4に行ってきた

[公演活動] 2011/09/26 20:27

青年団のアンドロイド演劇『さようなら』随行スタッフ(演出助手)として、ここ4日ほど、鳥取は鹿野町にある鳥の劇場に行ってきた。鳥の劇場とは廃校となった小学校・幼稚園を改造して2006年に設立された劇場/劇団で、地方発信の演劇モデルとしては最も成功した一例であるとは聞いていた。うん、聞いてはいた、聞いてはいたんだが、行ってみて、ちょっと感動してしまった。こんなにいい演劇祭は初めて観たかもしれない。

写真は町の薬屋さんが店先に貼っていた、鳥の演劇祭を応援するポスター。愛されてる!

鹿野町はお世辞の言いようもないくらい、田舎である。城下町の町並みが残る美しい町であり、温泉もある、うまい蕎麦もある。

     

しかし、裏を返せば他に何もない。そんな田園風景のど真ん中に、鳥の劇場は建っている。

 

左が鳥の劇場の主劇場の写真。元は見ての通り、小学校の体育館だ。右は体育館の入り口のところで運営している鳥のカフェ。広々としていてコーヒーのうまい、いいカフェである。

演劇祭自体の雰囲気がとても・とてもよくて、滞在期間中、鹿野の町のおっとりとした空気や、ゆっくり流れる時間、遠く近くに屹立する青い山脈の美しさを堪能しつつ、しかし演劇祭にかけるアツさにすっかりほだされた。相当な数のボランティアスタッフが協力しているようだけれど、チームワークがとてもよくて、みんな自分の手の届く範囲に暖かい気持ちを届けようと動き回っている。大都市的にマニュアル化されて人間の顔が消えたスタッフではなく、笑顔の明るさや汗や吐息を感じる人々で、どなたもとても気持ちのいい方々だった。

演劇祭って何だろう、って考えたときに、ラインナップをひたすら充実させて、ショーケース的にあれもこれも見れるお得な詰め合わせ、という発想に、資本主義のナイフに喉元を脅かされた我々はどうしても行き着いてしまいがちだけれど、鳥の演劇祭は、演劇という一本の柱を中心に、みんなで場所と時間の共通性を楽しむ、そんな贅沢な時間が味わえた。

鳥の劇場の芸術監督である中島諒人さんにご挨拶させてもらって、少しお話を聞くことができた。この中島さん、傑物である。自身でも鳥の劇場の演目である『剣を鍛える話』を演出しているはずなのに、すべての演目の会場に毎ステージ現れ、必ず前説をやっている。すごい仕事量・移動力だ。「ホストとしての使命というか、責任でね」と笑っていたが、僕はそこに底知れぬ誠実さと愛を感じた。

けれど、もちろん手放しで万々歳とやっていらっしゃるわけではない。「生き残らなくちゃね」とつぶやいて、一瞬すごく静かな目をしてテーブルに目を落とした表情が印象的だった。現状、中島さんの実感として、鳥取県内から来るお客さんが八割、県外が一・二割だそうだが、もっともっと県外からの客層を厚くして、逗留してもらえるようにしたいとも仰っていた。僕なんかは地元の人がこれだけ集まる演劇祭という点にすごいすごい魅力を感じるのだけれど、資金的にも助成金的にも、県外客を呼ぶことは重要なんだろう。

中島さんのインタビューがこちらで読めます。これ、ぼく、半年くらい前に読んで衝撃的だったインタビューです。是非どうぞ。

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観た作品のメモなんかも残しておきたい。

『The Return -帰還-』劇団ノトル [韓国] 。元は体育館の広い広いメインステージを隅々まで空間的に使い切った壮大な作品。ややコミカルで戯画的な身体表現を多く使うのは韓国の劇団っぽい。照明と空間演出が美しく、パフォーミングアーツの醍醐味を味わったが、展開的に引き込まれるものが少なくて後半はやや退屈した。

『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』チェルフィッチュ [神奈川] 。チェルフィッチュを観るのは三回目? だけど、今回が一番面白かった。ドラマチックな音響・照明とカッコいい気味の身体動作、それと全くそぐわない日常会話過ぎる日常会話の現代口語台詞が笑いや爆笑や哀愁を誘う。

『剣を鍛える話』鳥の劇場 [鳥取] 。広大な山河の風景をバックにした特設野外劇場にて上演。ロケーション最強。野外で暗転、したと思ったら今度は天空に一面の星空。存在圧力の強烈な手練の俳優らによるコラボレーション、打楽器系の音響効果が鼓膜と肌を震わせ、否が応にも引き込まれる。

『土地/自傳』劇団こふく劇場 [宮崎] 。全く楽しめなかった。感情移入や興味が起こる前に苦痛や苦悶の声が次々発せられ、観ていて全く移入できず、しんどかった。

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土地の質感を保ちつつ、ホスピタリティにあふれた演劇祭として、完全に成功していた。また行きたい。