PLAYNOTE 原発への不信感を拭うためには

2011年03月16日

原発への不信感を拭うためには

[トピックス] 2011/03/16 03:49

もちろん今は原発の是非を問うている場合ではなく、被災地支援と復興に全力を注ぐべきタイミングである。だけど、と言うか、原発を今後も存続させたいならさ、ちょっと今の体たらくはないんじゃないか。

2chのコピペより。

避難の必要はない→避難地域がどんどん拡大
放射能漏れはない→大量の放射能漏れ
水蒸気爆発はない→大規模な爆発
被曝者は発生しない→多数の被曝者
東京は大丈夫です→

このコピペ、いろいろツッコミどころはある。放射能は漏れたが、現状決して「大量の」と形容するべき量ではないだろう。爆発は確かにあったが、水蒸気爆発ではない。被曝者も数十名に及びつつあるが、いずれも健康被害には至らない程度のものらしい。

だがしかし、「~~に至る可能性は低い」と言われたことがほぼすべて実際に起こっている、という現状に、俺は正直うんざりしている。爆発はない。あった。海水注入は午前1時には終わる。今でも終わってない。燃料棒の溶融はない。溶融しまくってる。言ってることいちいち全部真逆に出てるし、爆発の報告にせよ被曝者の発生にせよ発表がどれも3時間遅れ、4時間遅れは当たり前だ。

そこに来てこのニュース。

放射能汚染の懸念が一層高まる事態に、自衛隊側からは怒りや懸念の声が噴出した。関係機関の連携不足もあらわになった。

3号機の爆発で自衛官4人の負傷者を出した防衛省。「安全だと言われ、それを信じて作業をしたら事故が起きた。これからどうするかは、もはや自衛隊と東電側だけで判断できるレベルを超えている」。同省幹部は重苦しい表情で話す。

自衛隊はこれまで、中央特殊武器防護隊など約200人が、原発周辺で炉の冷却や住民の除染などの活動を続けてきた。東電や保安院側が「安全だ」として作業を要請したためだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110315-00000496-yom-soci

続いてこちら。

政府は、原子力安全・保安院の職員らを福島第1原発からおよそ5キロのところにある「オフサイトセンター」で待機させていましたが、15日午前、第1原発からおよそ50キロ離れた郡山市まで退避させました

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4674605.html

前線で働いている東電職員や自衛隊員を置き去りにして後方へ撤退ってこれ、どういうことなんですか。

理屈としては、わからんでもないよ。例えば戦場で、前線に出る司令官はあまり褒められたもんじゃない。いつ矢弾に当たって死ぬかわからない、そんなとこに司令官がいるのはナンセンス。でも、今回の原発は違うんでしょ? 「健康被害はない」「洗えば平気」って、政府まで太鼓判押している。そこから、原子力保安院というブレーンが逃げる、しかもその指示を出しているのが政府って、一体どうなってんだ。「やっぱ危ない」って、大声で叫んでいるのと同じだろう。

百歩譲って、「万が一のことがあったとき、首脳部が消えたら現場が混乱する」という判断だったとしても、それは理屈としては理解できるが、感情としてはちっとも理解できない。引用したように、「安全だから」とだまくらかして自衛隊を最前線に投入しておきながら、自分は「万が一」と言って撤退、なんて、アニメや漫画の悪役より酷い。

東電の前線職員は本当に、本当に頑張っていると思う。「死ぬかも」とわかっていながら、しかし、それでも作業を続ける一兵卒に、僕は心から敬意を表するし、もし可能なら国民栄誉賞でも生涯支給される年金でも勲章でもあげたいくらいだ。(もちろん、死んでから勲章もらって、浮かばれるわけはないのだが)

でも、上の連中は違う。東電の上役たちと、原子力保安院は、どうしてこういう判断を下したのだろう。そして、どうしてこんなに情報を隠蔽しているのだろう。「安全だ」という言葉は、確認も取らず推測で口にするのに、「やばいかも」という言葉は確定するまで絶対に口にしない。民衆がパニックに陥るのは、そういう姑息なやり方に勘づいていて、おかしいぞ、おかしいぞ、と思いながら、突然「やっぱり!」と思ったとき、その時こそ一番のパニックが発生する。

海外からも非難の声が上がりつつある。

ワシントン・ポスト紙は「日本の当局筋は『原発周辺の放射線の増加は微量』と強調していた。しかし、影響が及ぶ地域は拡大しているる」と指摘。

15日も連鎖的に広がった爆発に、CNNテレビは「東電がまたウソをついた」と憤りを隠さない。

これまで抑制的な報道に努めてきた保守系のウォールストリート・ジャーナル紙も「原子炉格納容器は堅牢(けんろう)で大量の放射能漏れは防いでいる」と強調した当局者の発言に、「今や復旧作業は大きく後退した」とかみついた。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/110315/amr11031522560008-n1.htm

最初は「日本がんばれ!」一色だった海外メディアの顔色が、徐々に変色しつつある。そりゃそうだ。嘘つきが好きな人間なんかいないよ。そして日本は世界から見放される。それでいいの?

反原発じゃねーから

ここまで云々書いたのを読んだ読者からはどうせ、「反原発め」と煽られるのだろうけど、そうではない。俺は親父が原子力関係の施設に出入りしていた技術者で、ある程度原発に理解はあるつもりだ。どちらかと言えば「ゆるやかな脱原発」派だと思うけど、今後、日本の復興を考えたときに、原発ぜんぶ止めろとか言い出すつもりはないし、それは却って逆効果だろうとも思う。

ただ、原発を効果的に運用しようというつもりがあるんなら、もうちょっと東電上層部とか原子力保安院とかの対応はどうにかなんないのか。アンチを増やすだけだよ。

こんな記事も読んだ。中部大学教授の方が書いた文章だ(参考→武田邦彦 (中部大学): プロフィール

「保安院という化け物」

日本の原子力行政は、原子力委員会が推進、原子力安全委員会が抑制ということになっていたが、政府がいつの間にか、原子力安全・保安院というのを作り、「抑制機関無しの原子力行政」を始めた。

そのため、安全を考えて抑制する立場だった「原子力安全委員会」は国民に代わって、直接、原子力の安全を守ることができなくなった。

原子力安全・保安院は全権を持ち、電力会社や原子力安全委員会などに強い影響を持つようになった。これがテレビで見た保安院の人の傲慢な態度にあらわれていた。

保安院は常に原発に口を出し、俺の言うことを聞かなければ認可しないぞと言い、そして現場を知らないという状態で推移していた。

このことが「地震で破壊する原発」を作ってきた原因であり、さらに「震度6など想定していなかった」とか「地震対策はしてきたが、津波が起こるとは知らなかった」などという奇妙な言い訳を作り出す原因にもなっている.

(中略)

今、事故が進行中だが、保安院は登場しても混乱するだけだ。東京電力と政府だけで進めてもらいたい。

http://www.takedanet.com/2011/03/post_0cc6.html

で、こいつらが、前線職員をすてて、50km後ろまで後退したわけだろう。癌でしかない。

* * *

繰り返し書くが、反原発とか原発賛成とか、そういう話ではなくて、現状の運用の仕方、情報公開の仕方で、「安心しろ」と言い続けても、意味などない。

きちんと原発を運用するにあたって、東電上層部や原子力保安院に必要なものがある。理屈でもない。説明でもない。権威でもない。信用である。ここまで信用を落としてしまったツケは大きい。

俺もいち早く東北の生活が、そして日本の経済が復興するのを願っている。他人事じゃねーし。俺のばーちゃん、親戚は、今も福島に住んでいる。だから支援と復興はぜひとも必要。そして、そのためには、電力は絶対に必要なんだ。俺は「ゆるやかな脱原発」派だと書いたが、脱原発には少なく見積もっても十数年単位の時間が必要になるだろう。

だから、原発をきちんと運用するために、すなわち信用を取り戻すために、考えなおして欲しいんだ、東電と、原子力保安院と、政府には。