PLAYNOTE 青☆組『雨と猫といくつかの嘘』

2011年02月05日

青☆組『雨と猫といくつかの嘘』

[演劇レビュー] 2011/02/05 01:11

青☆組2008年上演の名作を再演。「2008年アトリエ春風舎で初演され、翌年、劇作家協会新人戯曲賞にノミネートされた」そうですが、確かに青☆組エッセンスのぎゅっと詰まった名作でした。アトリエ春風舎にて。

青☆組を単に耽美で流麗で美しいお芝居の劇団と思い込むのは酷い誤解だ。大抵の場合、ブラックユーモアや黒いシニシズムを多分に内包し、そして酷く生々しく、体臭のする位生々しく、女というもののうららかなどす黒さを見せつけてくる。今回も怖かった。

風太郎という還暦を迎えたおっさんの一生をあれこれの角度から振り返る70分ほどの中編なのだが、内容はぎゅっと濃密。コンテやスケッチを並べたようでありつつも、人間のダメダメさや醜さをごろごろ放り込んであって意地が悪い。

終演後、小夏さんとお話して、主人公の風太郎は死ぬのかと思った、と言ったら、面白い答えが返って来た。若いお客さんは死ぬんじゃないかと思う人が多く、ご年配は比較的「さて、これから」と生きていくだろうと思う人が多いという。へぇ。

僕は無理だな。あんな熾烈で薄汚い人間地獄にまみれたまんま、そして60を迎えて1人アパートで寂しく生きていく、というのはちょっと無理だ。息子と娘はそれなりにハッピーになっているようだから、まぁそこを頼みにも楽しみにもして生きていけるのかもしれないけれど、ああいう家庭環境やら夫婦関係やらの記憶を生々しく持ったまま、生きていくのは僕にはちょっと無理に思える。だから僕は、誰にも看取られずに死ぬだろう、風太郎は、と思っていた。このお話ではひとりで死ぬか、だれかと死ぬかが大きな仕掛けになっているので、その文脈に合わせて言えば、風太郎は一人で死ぬしかないだろう、と思った。

脚本の完成度が高い。台詞一言、短い一句に大変濃密な意味がこもっておる。演出的にも洗練されているし、リアリズムを脱した表現を臭みなく軽やかに取り入れている辺りは吉田小夏の変態的なこだわり、手先の細かさを感じる。俳優も凄い。おじいさんから若旦那まで柔軟に演じわけた荒井志郎、ブッチギリに可愛かったが相変わらず歌舞伎みたいな芝居をしやがる木下祐子、無邪気そうな女が一番ムカつくという真理を生々しくもさっぱりと見せる福寿奈央、この辺が揃うと吉田小夏は城の一つくらい落とせる気がする。一個師団に相当する。

今後、個人的には、やらねーだろうとわかっちゃいるし、やりたくもないんだろうと思っちゃいるけど、青☆組のイメージをぶち壊すような新境地の作品を期待したい。質的なきめの細やかさは日々年々磨かれているのだから、ブレイクスルーが訪れてもいいはずだ。ミュージカル少女の小夏さんなのだから、ミュージカルとか、いっそチャンバラとかやったらどうかしら。西部劇とかも上手いと思う。西部劇もあれロマンの世界だからね。

8日までアトリエ春風舎にて。

コメント

投稿者:小夏 (2011年02月08日 02:28)

ちなみに、死ぬと思うと明言してたのは谷君と某PPTゲストのみでした。30前後の男性演劇人という点が共通項なのが面白いです。
その回は、他に死ぬと思った方は?とPPTゲストが観客にに質問したところ、誰も手をあげなかったのでゲストが衝撃を受けておりました。
トータルでは、生き続けると思った派がかなり多かったみたいです。
ラストシーンの印象が様々になるのって、演劇ぽい感想な気がして作り手としては楽しいです。