PLAYNOTE ダメ出しであり、激励であり、祈りであり

2010年10月10日

ダメ出しであり、激励であり、祈りであり

[演劇メモ] 2010/10/10 17:39

本番スタンバイ中の演出家は孤独で、本番中の演出家はもっと孤独だ。何もできない。手が出せない。手を出したら多分すっごい邪魔なので、客席の椅子に縛り付けられている。

今はProject BUNGAKU千秋楽のスタンバイ中。当然、何もできることがなく、楽屋への通路も塞がれるほど押せ押せ満員の回であるから、出演俳優たちと作っているMLにメールを送った。本番前の演出家がどういうことを言うのか興味のある向きもあるだろうから、せっかくなので掲載しておく。

千秋楽おめでとうございます。17ステージ、あんな撒き散らし系の演出をして今のところケガ人ひとり出ていないというのは、ひとえに俳優各人の努力のおかげと思います。

作品的に完成されてきていて、ダメ出しの向かう先が俳優より自分自身に向かっています。いい作品に仕上がっていると思うし幸いにも評判は大変いいけれど、自分の中では戯曲構造や演出・表現の仕方について、ダメ出しはあります。俳優向けのダメ出しが少なくなってきたのは、そういう意味です。

しかし最後に演劇のクオリティや力強さを担保するのは間違いなく俳優力です。こういう手数の多い演出をしたからか、かえって今回、痛感しました。演出はいくら手出しをしても、演劇の支えにしかならない。せいぜいが、文章で言えば太字にするとかアンダーラインを引くとかで、あくまでも主役は表現の中枢は俳優なのだ。

千秋楽、ミスがなく、活力のある、新鮮な演技になってくれることを望みます。それだけで今作品の出来は二倍、三倍よくなる可能性を持っている。

確認:

  • 他人の音を聞く、自分の音を聞く
  • 常に見えている、常に
  • 舞台上で思考する、判断する
  • その場で出てきたものや音、反応をきちんと使う。自分の生理を大事にする。
  • 舞台上で自由になるために、段取り、小道具、プリセット、台詞など、徹底的に前確認
  • 楽日だから変える、というのは必要ないが、毎ステ毎ステ新しく

あとは、楽にやって下さい。力まずに、力まずに。挑戦的に前のめり、なのはいいけれど、力んで前のめりにならないよう。この20数分にすべての集中力を注ぎ込んで、いいステージを見せて下さい。僕に、というより、お客様に、ですが。

演劇たのしー!

僕の定番の稽古方法に、空間全体を使って歩く、というものがある。俳優の判断力や瞬発力が如実に試される訓練だ。ガリガリと台詞を覚え、ざくざくとミザンスを振っているときには、あぁ、空間使って歩く時間を削っていいから、具体的な演出をしたい、立ち位置決めたい、段取り詰めたい、と思ってしまうのだけれど、こうして本番が近くなるといつも、やっぱり最後は空間歩きだな、というところに行き着く。

空間歩きは恩師・黒澤世莉より受け継いだ必殺技だが、歩く、反応する、ということの中に、演劇のすべてを詰め込めるような気がして、一番好きな稽古方法である。

最初は脚本、途中から演出、最後は俳優。お芝居作りっていつもそうなんだな。

いい千秋楽になってくれよ、という、ダメ出しであり、激励であり、祈りである。