PLAYNOTE 範宙遊泳『東京アメリカ』

2010年09月06日

範宙遊泳『東京アメリカ』

[演劇レビュー] 2010/09/06 05:48

前から気になっていた劇団であり、知人友人のラヴラヴ俳優も出ていたので観に行った。横浜STスポットにて。

以下、CoRich 舞台芸術!に書いた感想からひとまずは転載。

もしかしたら今年観た中で一番の芝居だったかもしれない。いびつ&フリーダムな笑いに満ちた台詞・演出・演技、大胆な空間演出、そしてシンプルながら的確かつ無駄のないメタ構造を、頭でっかちに構築するのではなくさらっとやってるところが凄い。妖怪百鬼夜行のような出演者陣の個性と、それを的確にさばいた演出家の判断力とセンスは至高のもの。超面白かった。

笑いのセンスが合わない人には楽しめないかもしれないが、小劇場にありがちなダサいギャグが一切なく、観ていてちっとも恥ずかしくない。「演劇」という古めかしい用語でカテゴライズしてしまうことが惜しいほどだ。かなり高度に「演劇」をパロディにしていながら、演劇への愛が滴る作品。必見です。

劇場の壁一面・床一面・椅子に到るまでがピカピカの銀世界。近未来っぽくて安っぽい空間に、ちょっと前のクラブみたいな自己主張の強いミラーボールが回って大音量の音楽が流れている。という導入の演出の時点で、あぁ、何かが始まりそうだな、という印象はあった。

山本卓卓という作家・演出家は、これはキモイ、これは面白いというリア充的判断感覚を持った人なのだろう。演劇の稽古場をパロディ的に上演しており、登場人物の一人一人が「いるいる、こういう奴」「こういう風潮、キモいよなぁ」「こういう奴、うざいよなぁ」という「あるある」を見事に突いており、演劇界の変な気持ち悪さをきっちり戯画化している。CoRichの評の中にも「山本卓卓は批評眼がある」という書き込みがあったが、自分らが腰までどっぷり浸かっている演劇というメディアの異常性や可笑しさを、ちょっと離れて見る、見せることに成功している。メタ演劇として完成度が実に高い。彼らも演劇に腰までどっぷり浸かっているはずだが、首までどっぷり浸かっている痛い感じの人とは違うバランス感覚をしっかり持っているとも言える。

こういう作品はどんどん好き嫌いが別れればいいと思う。僕は熱狂的に面白いと感じたし、そういう印象を持った観客も多かったろうが、同時に「え、よくわかんない」という人も出てくるはずだ。そこでありきたりなバランス、万人受けするバランスに、是非この劇団は向かって欲しくない。

とか何とかいろいろ書いているけれど、例えば普段演劇をやっていない僕のお友達や家族なんかに見せても「演劇って恥ずかしい」と思わない・思わせないセンスに支えられていた、という点が何よりもキュートだ。むしろ演劇=ロミジュリとかでしょ? みたいな人々にとっては、「へぇ、演劇ってこういう風なこともやれるんだ」と既成概念をぶち壊してくれるだろう。

同じく演劇を題材にして演劇やってる人々のクレイジーさを描いた作品に、ハイバイの『おねがい放課後』という超名作があるが、それに通ずる面白さを感じた。手法も趣味もまるで違うんだが、演劇を題材にしていながら、演劇的な恥ずかしさがない、演劇をちょっとコケにしながらも、あぁ好きなんだよね、わかるよ、っていう部分がちゃんとある。それに、範宙遊泳のユルい笑いや悪ふざけは、ハイバイの脱臼したような笑いと似た、おしゃれな笑いとして受け止められるんだ。未だにあるからね、本気でノリツッコミとかやってるような劇団。

次回作に激しく期待。あと開場中・劇中で流れていた曲が全部好きなので全部知りたい。あとあの踊り俺も踊りたい。スッスッスッ! だーけーど!