PLAYNOTE ミームの心臓『ヴィジョン』

2010年09月06日

ミームの心臓『ヴィジョン』

[演劇レビュー] 2010/09/06 05:30

言ってみれば後輩、言ってみれば他人の酒井一途が作演出をしているので観に行った。神楽坂die pratzeにて。

若さ、をキーワードにして若い作り手の作品を評価することは、むしろ何よりもその若さに対して失礼であると私は思うので、一個の独立した演劇作品として感想を書くことにする。

結論から書けば、僕はかなり出来に不満である。脚本が? 演出が? 演技力が? 舞台美術が? スタッフワークが? いやいや、すべてが土俵に乗っていない。「荒削りだが将来性を感じる」なんていうおためごかしの言葉は、どこか一つ突き抜けたものがあった場合にのみ使っていいものだろう。「あの年齢にしては」なんて褒め方をしていたら、伸びるものもの伸びない。

とりわけ不満なのは舞台美術であった。いや、舞台美術と俳優のバランスと言うべきか。舞台美術が貧相であって、視覚的な感動や興味を惹かないし、劇世界を立ち上げる役割を担っていない。しかし俳優力で空間が見せられて、埋められていれば、例えば美術をあえて段ボールで全部作るなんて選択肢もありではある。しかし、空間を感じさせてくれる俳優はいなかった。人間の精神の極限や、崇高だったり邪悪だったりする部分を描きたいし観たいのであれば、やはりタル木の処理が気になる部分や布地がシワを寄せている箇所、出捌け口の暗幕を俳優が手でめくる所作などは、観客を現実に引き戻す圧倒的な違和感になってしまうし、不足であったと言えるだろう。

脚本にはディテールの甘さが目立ったように思うし、酒井一途ならではというきらめきや独創性を感じることも難しい。本でも演出でも演技でも、何か一つ、何か一つでいいから、突き抜けたものが欲しいんだ。

「俺の芝居は東京で一番面白い」と酒井一途が本気で断言したときに、また観に行こうと思う。

コメント

投稿者:酒井一途 (2010年09月06日 12:53)

いつか言ってみせます。

今はただの遠吠えにしか聞こえないでしょうけれど、必ず。必ず言ってみせます。