PLAYNOTE ひょっとこ乱舞『ブリキの町で彼女は海を見つけられたか』

2010年07月03日

ひょっとこ乱舞『ブリキの町で彼女は海を見つけられたか』

[演劇レビュー] 2010/07/03 01:07

最近広田淳一が気になるので観に行った。「水」の方は観れないよ。吉祥寺シアターにて。

以下、批評ではなく感想です。

と断り書きをしてから書くのには理由があって、こういう作品こそきちんと「批評」が存在しないといかんと思うんだ。いかんと思う、というよりは、きちんとした批評があって欲しいと思うんだ。僕は今回、終演後のロビーで上演台本を探したが、残念ながら販売していなかったし、あとひょっとこ乱舞自体を観るのがこれでえーと3回目くらいなので、批評的なことが書けない。それが実に悔しい。

僕の感想は「面白いしステキなんだけどよくわかんないし消化不良だった」という酷いものです。ド素人の感想以下だ。だけど他にいい言葉も見当たらない。理性の面ではうまく枠組みを捕らえられなかったし、感性の部分では感じることが多々あったけれど、それを言葉にするだけの材料が僕にはないから批評も書けない。もやもやする。

まず物語の作り方として大変乱暴であったと思うが、それ自体が作品の主題性と関係している印象がある。「これから、こういう話をはじめます」と言って始まって、最後には「おしまい」なんて台詞もある入れ子構造のお話で、その入れ子の中でも「ブリキの町の物語」を考えた人、語る人がいて、そのブリキの町に住む人達がいて。ブリキの町のお話は、かなり乱暴な形であっけなく終わってしまい、にゃんこを閉じ込めた何とかいう宝石がどうして不良品を出すようになったのか、とかは解決されないし、登場人物たちの恋模様も、ぶつかり合ったまま終わってしまう。最後には猫の死体が街中に山と積まれた、ということが語られる。

劇中、ブリキの町の物語を「語る側」にいた男の一人が、過去に自分が受けたいじめの話をするんだ。いじめがどれだけ酷かったか、って話じゃなくて、いじめを受けた自分が復讐しようとしてやりすぎちゃってドン引きされる、という話で、それがそのままブリキの町の物語のいびつさを引き寄せている要因になっている。作家が作家の話を書くというのはやっぱり観る側は必要以上に疑い深くなってしまうのが常で、僕もそういう物語の運び方を見ていて、乱暴に放り出された物語と、その裏側にあった個人的体験の関係性と、無関係性に特に気を惹かれた。だって、お前が鉛筆でいじめっこのおでこを血まみれにした、っていう話と、ブリキの町が失敗しちゃって海も見つかったかどうかわからない、という話の間には、直接的な関係はないし、だけど全く無関係であるとも言い切れない。

そういう、物語がどうやって生まれどうやって続いていくか、という点や、物語の研究として作家や語り部の個人史をどう捉えるか、という問題について、かなり皮肉めいた形でえぐっているように見えたけど、これは完全に頭で見る見方の話で、どちらかというとくだらない感想である。こういうことを書くのなら、きちんと「批評」するべきであって、それができない自分は何だかモヤモヤしている。さっきも書いたことだけれど。

観ている最中の僕は、いいタイミングで扇情的に入って来る音楽のインパクトや、綺麗に構成された立ち位置やミザンスの美しさ、そして群舞が引き起こす得体の知れない直感的な興奮とか、演出の剛腕さと、作家としての言葉の選び方を楽しんでいた。現代的な言葉を連ねながらもきちんとおとぎ話世界を現出させる筆力は並大抵のものではない。コピーではなく、きちんと自分の言葉を持っていないとできないことだ(その上、ださい奴がやると果てしなくださくなってしまう)。そういうセンスの良さを感じた反面、こちらの頭をかく乱させる直線的ではない筋立てと放り投げるような幕引きの仕方の中で、俺は割と理性的に物語を捉えていた。完全に「広田語」が自分の感性をじゅんじゅん濡らしちゃうような相性だったら、たぶん演劇ドラッグでもキメてるみたいにグラグラ酔っ払えちゃうのだろうが、俺は感性に酔って理性に目覚めて、だけど高度なことをやっていることだけはわかっていて、難しい気持ちで舞台を見ていた。

それを集約すると、冒頭に書いた「面白いしステキなんだけどよくわかんないし消化不良だった」という微妙な地点に着地してしまう。文としての力点は、もちろん前半の「面白いしステキ」なんだけど、後半の部分、「よくわかんないし消化不良」という理性の声も聴こえてくる。

だから誰か、まとまった、きちんとした批評をしてくれないかな。基本的には俺は今回完全なるお客さんなので「面白かった、素敵だった」でいいんだろうけど、同業者としては単にそれだけで「まぁいいや」とも思えないんだ。

ただ、わざわざこうやってこんな長文書くくらいだから、今まで観たひょっとこ乱舞の中では自分の中ではナンバーワンだった。そして、今同時期に上演してる柿喰う客も青年団もクロムモリブデンも競泳水着も「ちょっと待ってごめん」と思いながらひょっとこ乱舞を観に行ったというのは、たぶん一番刺激が強いだろうという予想からだったんだけど、(他の舞台観ていないから比較のしようがないが)ふだんアタマで演劇を観る自分のハートのところをダイレクトに触ってきたという点で、予想通り刺激的だったんだとは思うんだ。

モヤモヤしてっけどもう一回観てる余裕は残念ながら全然ない、けどできればもう一回観たいと思わせる、挑発的な舞台だった。10月に一緒に企画公演をやるのでそのとき問い詰めてみたい。

コメント

投稿者:広田 (2010年07月04日 01:38)

とにかくありがたい。同業者という大変言いづらい立場でこんなことをいってもらえるのは本当にうれしい。まだ谷君に答えられる言葉をもっていませんが。とりいそぎ謝意を。どうもありがとう。