PLAYNOTE 夜想雑記

2010年04月04日

夜想雑記

[雑記・メモ] 2010/04/04 05:14

雑記である。

ご承知の通りブレイクダウンしてからこの方、とにかく自分の心身をさっさと立ち直らせるべく、ぬるま湯とも熱湯とも取れない日常を送っている。原稿に向かう自分は熱湯の中にいる。その最中に放棄した現場を思い出すと熱湯である。その合間に煙草を吹かし昼間から酒を飲む自分はまだぬるま湯の中にいるが、想念が僕を襲う度にまた熱湯に突き戻される。

世間では僕がすっかりハッピーになったらしい、という根も葉もない噂が蔓延って人々の酒の肴になっているらしいが、それは全くの誤解である。口は災いの元とはよく言ったものだが、小劇場界の噂の電波の早さには全く持って驚く他ない。連中は芝居の稽古なんかしないで始終おしゃべりばっかりしてるんじゃないかと思うほどだ。稽古しろよバカどもが。

以前、服を脱いだときに、「あなたの胸には傷があるのね」「その傷は素敵だ」と言われたことがある。かつて僕は肺病を病み、三度ほど病み、胸には左右に6つほど傷跡がある。その人は「私は傷を見るのが好きだ」となかなかにイタいことを言って僕を苦笑させたが、わからんでもない。僕も、美しい女性の腹や背中に、堂々たる傷跡が走っていたら、きっとそれを優しく柔らかく舌で愛撫するだろう。

だが、肉体的な傷跡は鑑賞することも舐め上げることも可能だが、心の傷はそうはいかない。よく見ていれば気づくはずだろう? 不器用に笑う口元や、無理にこじつけた笑顔、凍りついたような真顔に。きちんと人間を見る目のある人々は、そういう傷跡をきちんと見ることができて、不用心な発言などしないものだ。

鈍感さが生きていくための力であることは異論を挟まないところだが、そういう連中が作った鈍感な作品を見て、よくできている、よく書けている、なんていうことに、1つの価値もありはしないのだ。きっと、本当の痛みを内包をした、それでいて芸術的に美しい作品を見たことのない人間が、そういううわっぺらな芸術を見て「いいね」とか言うんだ、パスタとか食いながら。シェイクスピアの『マクベス』を読んだことがあるか。アンドレ・ジッドの『田園交響楽』を読んだことがあるか。フランツ・カフカの『審判』を読んだことがあるか。ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことがあるか。アベ・プレヴォーの『マノン』を読んだことがあるか。ヘミングウェイの『老人と海』を読んだことがあるか。漱石の『門』を読んだことがあるか。読んでみるといい。読んでみるといいよ、一冊に100万円くらい払う価値のある本だから。

俺はお前が大嫌いだ。だけど、お前とお前のことは心から愛している。大地震が起こったら身を挺してかばいたいと思う。

ただ、そのとき、側にいれるかどうかは、わからないんだ。

コメント

投稿者:たのくち です (2010年04月04日 20:50)

おからだのお加減、いかがですか?
 谷さんは卒業してからものすごい速さでお仕事されていたので、今じっくり休むのがいいと思います。休め、という思し召しだと思います。

 嗜好品はほどほどに!

 田ノ口