PLAYNOTE ジャック・ケッチャム『襲撃者の夜』

2010年03月23日

ジャック・ケッチャム『襲撃者の夜』

[読書] 2010/03/23 14:20

療養中に読んでいた本。ジャック・ケッチャムの作品を読むのはこれで何作目だろう? もう何か意地になって全部読破してやるみたいな気概になっている。新しい一冊を手に取る度に、新しい絶望や失望を味あわせてくれるから、飽きはしない。

『襲撃者の夜』は傑作『オフシーズン』の、まさかの続編。前作で恐怖と戦慄を振りまいた食人一族が新たな犠牲者を捕食するところから物語は始まる。

『オフシーズン』『隣の家の少女』『老人と犬』なんかは本当に傑作だと思うが、この『襲撃者の夜』はそれらに一歩劣るかな、という印象。

よくないね、人が作り出したものを優劣で語るって。あっちのが面白い、こっちのが面白い、そんな比較に意味はないってことはよくわかってんだが。

『襲撃者の夜』の読みどころは、言わば360℃どこから敵が襲ってくるかわからない、その臨場感。主人公側には女性や子供がいるばかりで、彼女らが身を寄せている山荘に、「ウーマン」と呼ばれる野獣のような女に率いられた6~7人の食人一族が這い寄り、彼女らとは別に、頭のネジが2・3本抜けたような元夫のDV野郎も姿を現す。そして、通報を受けた刑事たち。10名以上の人間たちが、暗い山中を駆け回り、360℃四方どこから襲ってくるかわからない驚異から逃げまくる。

ただ、その複雑さが病床の僕にはちょっと荷が重かったのも確かだ。文章の美しさや残虐さに快感は覚えられるのだが、人物や地勢図の把握が追いつかなかった。朦朧とした意識の中で読むような本じゃなかった、ってことだ。

だが、朦朧としていたからこそ味わえた感覚もある。確か散歩に出たときか何か、「ラビット」とあだ名される野生児の姿をありありと妄想できた、いや、白昼夢のように目撃できたことがある。泥と土にまみれてざらざらにひび割れた肌を天日に晒し、雑木林の広葉樹の影からこちらをじっと見ていた。身長は160cmほどだろうか、まだ子供の体躯である。腰巻き1枚身につけず、両手が地に着くほど猫背で、身動き一つしていなかったが、両目だけが午後の日光を跳ね返して爛々と輝いている。彼はこちらを伺っていた。飛びかかるタイミングを探っていたように思えた。

なんてね。どうせ死ぬならこういう奴らと、お互いの肉を噛み千切り合うような格闘をして死にたいものだ。