PLAYNOTE ワリス・フセイン監督『小さな恋のメロディ』

2009年12月18日

ワリス・フセイン監督『小さな恋のメロディ』

[映画・美術など] 2009/12/18 21:39

ベンジーがこう言うんだ。小さな恋のメロディという名の映画を見たことがないなら早く見た方がいいぜ。俺の血はそいつでできてる、12才の細胞に流れ込んだまままだ抜ききれちゃいない。ちょうど今向き合っているプロットの参考になればと藁にもすがる思いで見た。

主人公はちっちゃな男の子と女の子だ。男の子の方はまだ走ったり飛んだりすることで一日中遊んでいられるくらいの年頃で、背伸びをすることや人を裏切ることなんかとは無縁なきらきらした日々を生きている。女の子の方もまだ恋に恋するってくらいの年頃で、夕日が綺麗なこととか花が揺れていることとかを全然まだ当然のことと思っていて、ぬいぐるみとおしゃべりだってできちゃうくらいの雰囲気だ。

二人は好き合って罪のない遊びを続ける。学校を抜けて遊園地や海へ行ったり、二人で結婚しようと誓い合ったりする。大人はそれを認めない、なぜなら二人は若すぎるから。二人は学校の友達と一緒に廃屋に集まって結婚式を挙げようとするが、それを先生たちが止めにくる。大騒ぎになる中、二人は友達の協力もあって抜け出して、トロッコに乗ってどこまでも遠い草原に滑り出していく。そういうところで映画は終わる。

ベンジーがこれを好きだという理由がすごく素直にわかった。とても素直な気持ちになれる映画である。もう忘れてしまって、二度と思い出せない、そのくせずっと憧れているような純朴さに満ちていて、取り立てて驚くべき筋立てがあるわけではないんだけど、画面の一瞬一瞬がきれいで、ハッピーで、輝いている。まるでそういう日々が永遠に続くかのように、幸せな日々はさらさらと過ぎていく。もちろんそれを見ている僕たちは、そんな時代がいつの間にかオイルにまみれて汚れビル風に吹かれて崩れ去ってしまうことを知っているんだけれど、それを知っているのは僕たちだけ、映画のフレームの中にいる彼ら彼女らは絶対にそんなことは知らない。ずっとそんな日々が続くと信じている。

子供の頃のきらきらした気持ちを思い出せる、いい映画であった。「もうああいう日々には二度と戻れない」なんて、そんなことは、エンドロールが終わってDVDを取り出してコーヒーを一杯飲むくらいの時間が経つまで思い出さない。自分もあの二人のトロッコが草原を走り抜けるのを一緒に遠く眺めているクラスメイトの子供みたいな気持ちになれる映画であった。