2009年11月05日
The Beatles"Across the Universe"勝手訳
ビートルズ最高傑作の1つに絶対挙げられる名曲、ジョン・レノンの作詞における最高傑作の1曲、中後期ビートルズを象徴するインド哲学およびオノ・ヨーコがもたらした日本文化の影響が色濃く反映されている傑作、"Across the Universe"を、恐れ多くも勝手訳してみた。
リクエストされてないが、こなちゃんとメールしてる最中に話題になって、気になって気になって仕方がなくなって、自分で翻訳してしまった。吉田小夏と実家に置いてきたアライグマのぬいぐるみに捧げます。
じゃあ訳と曲とビートルズについて熱く語るよ。黙ってろバカヤロー。まずはアクロス・ザ・ユニバース - Wikipediaより。
「アクロス・ザ・ユニバース」はレノン=マッカートニー作品であり、実質的にはジョン・レノンの作とされる。ジョンの楽曲の中でも特に歌詞が印象的な作品で、"words are flowing out like endless rain into a paper cup" という一節が浮かんだ後、しばらく考えた末に一気に書き上げた、とジョン自身は語っている。
このエピソードは以前にも聞いたことがある。するっと口をついて出た言葉、そこから続く世界、魔法、そういうものにジョンは魅了されてしまったんだろうと思う。元々、空想に遊ぶことの得意な彼であったから。
日本の俳句に影響を受けているとされるが、英詞を読むとその影響がよくわかる。が、それを日本語に移し替えるのはなかなかしんどい。未熟ながら、一発、訳してみました。
世界の向こうがわまで - Across the Universe
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唇からこぼれ落ちていく言葉たち それは紙コップにそそぐ雨だれのよに なだれ落ちる すべり去ってゆく 世界の向こうがわまで |
Words are flowing out like endless rain into a paper cup, They slither while they pass, they slip away across the universe |
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悲しみの水たまり 喜びのさざ波 澄みわたるこの心を抜け 流れ出てゆく 僕を包みこむよに 抱きしめるよに |
Pools of sorrow, waves of joy are drifting through my open mind, Possessing and caressing me. |
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かみさまどうもありがとう |
Jai guru de va om |
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わたしはわたし わたしだけ わたしはわたし わたしのまま |
Nothing's gonna change my world, Nothing's gonna change my world. |
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目の前にちらつくかすかな光たち 無数にきらめく瞳のよに 僕を呼び続ける 呼び続ける 世界の向こうがわまで |
Images of broken light which dance before me like a million eyes, That call me on and on across the universe, |
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心はあてどなく寄り道を続ける 郵便箱の中で そよぎ続ける風のよに 道を探しながら 足を滑らせながら 世界の向こうがわまで |
Thoughts meander like a restless wind inside a letter box They tumble blindly as they make their way across the universe |
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かみさまどうもありがとう |
Jai guru de va om |
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わたしはわたし わたしだけ わたしはわたし わたしのまま |
Nothing's gonna change my world, Nothing's gonna change my world. |
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誰かの笑い声が聞こえて 命のかたちを教えてくれる 目を覚ました心の中で響き続ける 食事に誘うよに ベッドに誘うよに |
Sounds of laughter shades of life are ringing Through my open views inviting and inciting me |
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尽きることのない 果てることのない愛が 僕を包み輝く 無数にのぼる太陽のよに 僕を呼び続ける 呼び続ける 世界の向こうがわまで |
Limitless undying love which shines around me Like a million suns, it calls me on and on across the universe |
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かみさまどうもありがとう |
Jai guru de va om |
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わたしはわたし わたしだけ わたしはわたし わたしのまま |
Nothing's gonna change my world, Nothing's gonna change my world. |
翻訳にあたって、いろいろ悩んだが、一番悩んだのが、“Through my open views”というところ。第2聯でも“through my open mind”という似たフレーズが使われていて、"mind"の方が精神・こころって感じがする(厳密には精神と心も違うものだが)のに対し、“View”の方がより思考・分析に近い感じがする。かと言って、「思考」はこの流れるような詞に登場する言葉としては固すぎるし、「考え」は何だか日本語として中途半端。結局、「目を覚ました心の中で」と意訳しました。べ、別にこないだ自分がサラ・ケインのテキストを翻案するにあたってつけたタイトルが『心が目を覚ます瞬間』だからってわけじゃないんだかねっ!
あとは問題の「Jai guru de va om」は、もう神さまサンキュー、みたいなことでいいだろう、と。我らが神と我らが導師に勝利あれ、オーム! とか、そんな意味で多分ジョンは使ってないと思う。単純にインドで覚えてきた印象的なフレーズで、あるいは印象的な単語を並べてつるっと歌ったんじゃないかしら。そしたらもう、「かみさまどうもありがとう」でいいじゃん。
この曲の主題とも言える「Nothing's gonna change my world」というフレーズ、何度も何度もリフレインされるフレーズをどう訳すかも大きな問題だった。直訳すれば「何者も私の世界を変えることはできない」「誰だって私の世界を変えられない」みたいな意味になるが、それじゃ思考停止だ。翻訳は、原文の意味・イメージを理解した上で行われるべきもので、単語を移し替えればいいんではない。
今回は、「わたしはわたし わたしだけ/わたしはわたし わたしのまま」という、ともすればちょっとイタめのフレーズを選んでみた。
ジョンの透き通って澄み渡った、晴れ晴れとしているけれどどこか遠く淋しい歌い方や、情景描写に心情描写を重ねようとする孤独と言うか寂寞なイメージを考えると、「俺たぶんずっと大丈夫!」とか「誰にも邪魔はできないぜ」みたいな方向ではないだろう。ジョンは「Strawberry Fileds Forever」でも「No one, I think, is in my tree / I think it must be high or low」(僕の木には誰も座ってない、きっと高過ぎるか低過ぎるかするんだろう)という印象的なフレーズを残しているが、流転する万物、諸行無常の風景の中に身を置いてみて、そこに静かな喜びを見出していて、かつ精神的に不思議と充足していて、という情景を考えてもらうと、今回の翻訳の意図が少し伝わるんじゃないかしらん、と思います。
この歌詞を書いている側にヨーコがいた可能性は否定できないが、少なくともこの歌詞を書いている瞬間のジョンの魂は完全に世界の中で一人ぼっちで、でも不思議と不安でも孤独でもない、そういう瞬間は、僕のようなちんぴらアーティストにも感じられる瞬間があるくらいなのだから、ジョンはもっと深くて遠いとこに行ってるんだろう。
Freedom is just another word for nothing left to lose という歌詞を歌って死んだジャニスという歌手がいた、婚約相手へラブラブのラブレターを書いた直後に「でも芸術の方が結婚生活よりどれだけ自分を魅了するか今からわかってる」なんて手記に残しているクソナルシストな芥川という作家がいた、そいつもこいつもどいつもこいつも、本当に芸術的なインスピレーションに満ちている瞬間に、人間は実に孤独な場所へいざなわれる。でもそこは不思議とあんまり冷たくなくて、どうにでもなる気がするんだが、例えばトイレに行きたいとか呼び鈴が鳴ったとか、そういうつまんないことで雲散霧消したりする。
この歌詞において、ジョンは、身近な風景の中に広大無辺な宇宙への旅を見つけている。「神の御名において、いったん仕事をやめ、周りをよく見ろ」、これはトルストイの言葉、「あたらしい気持ちで世界を見直してみると、世界は美しかった、驚きに満ちていた」、これはヘッセの言葉、どっちも曖昧だけどな。そういう状況下において彼が呼んでいる「Love」は、「All you need is love」で歌われているような意味での「Love」に近いのだろう。愛情や情愛ではない、もっと何つーか、愛だ。外に引っ張られる感じじゃなくて、内側から溢れて、しかもそれが矢のようにひゅんとどこかへ行くんじゃなくて、ほらそこに子犬を連れてる可愛らしいおばあちゃんが、とか、子供が自販機の前で遊んでいるのを見てるだけで微笑んでしまう、とか、そういう気分。わかるか。わかんなくてもいいよ別に。
Half of what I say is meaningless But I say it just to reach you. 俺の言ってることの大半はすっからかんで空虚で無意味、でもそれも、君に触れたくて言っていること。これもジョンの詞、「Julia」より。本当、ビートルズには20世紀の発明の大抵全部が詰まっている。ポップカルチャー万歳。お前殺す。
聴きたい奴
The Beatles名義のものだけでもAcross the Universeは、シングル版(バード・バージョン)、アルバム版(Let It Be収録)、アンソロジー版(The Beatles Anthology 2収録)、Naked版(Let It Be ... Naked収録)と4つもあって、俺的にベストなのはアンソロジー版なんだが、そいつがYouTubeで見つからないから、代わりにフィオナ・アップルのブリリアントなカバーとPVを貼っておく。
余談になるが、このPVでのフィオナは、『プルーフ/証明』のキャサリンのイメージとも、サラ・ケイン本人のイメージとも重なったので、前回公演の最中に煮詰まったときよく見たものだった。
ビートルズ版は、もう探すのもめんどいから買ってくれ。アンソロジーは初心者は絶対手を出しちゃいけない魔のアルバムだが、アンソロジー2は1~3の中でも一番聞きやすいと俺は思うし、一番ビートルズのロックアイドルからアーティストへの変貌を味わえるいいアルバムでもある。
収録されている中では、“Across the Universe”はもちろんだが、“Strawberry Fields Forever”の初期テイクがあまりにも美しく、素晴らしい。また、“And Your Bird Can Sing”のボツテイクが秀逸。薬でラリってゲラゲラ笑ってて演奏できない馬鹿4人の様子をそのまま収録しています。本当にポールとジョンがゲラゲラ笑い続けてて、歌えなくなってる。面白い。
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投稿者:アライグマ (2009年11月06日 02:03)
アリガトウ。
キミノヌイグルミデアルコトニ、ホコリヲカンジテイルヨ。
ツギハ、イツ、カシワニモドッテクルノ?
モドッテキタラ、マタ、イッショニネムッテクレル?
キミノウデノナカガ、ダイスキ。
スコシトオクカラダケド、イツダッテ、
キミノ、ケンコート、カツヤクヲ、イノッテイルヨ。
アト、ゴハンノマエニハ、チャント、テヲアラッテネ。
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