2009年06月10日
椎名林檎『Unconditional Love』勝手訳
椎名林檎がこうまで女子の支持を受けているのは何でだろう。初期の名カバー『Unconditional Love』勝手訳。
unconditional love - 椎名林檎
作詩:CYNDI LAUPER・BILLY STEINBERG 作曲:CYNDI・BILLY STEINBERG
あなたの中に落ちて行きたい
あなたの望む全てになりたい
でもどうしていいかわからなくて
不安で足場がなくなるあなたに会うと 思い出す
絶望的な愛何を言っても無駄
いつだって誤解されるから
でも私の心が読めたらわかるはず
いつだってもがいてる私をあなたに会うと ひれ伏してしまう
絶望的な愛愛
荒れ果てた海辺に立ち
曇り空の下で首をもたげる
もう方向感覚がないあなたの隣で眠りたい
何だってしてあげる
でもどうしていいかわからなくて
ただ抱き締めて欲しいのあなたに触れると ひれ伏してしまう
絶望的な愛あなたが必要としてるもの
世界が必要としているもの
それは愛
『Unconditional Love』とは直訳すれば「無条件の愛」なんだけど、あえて「絶望的な愛」と訳しました。「無条件の愛」とか言うと「無条件で愛してあげる」みたいな甘ったるい感じがあるけれど、むしろ「無条件で愛してしまう、逃げられない」という絶望的なニュアンスが強いように感じるからです。なぜ深夜五時にこんな文書書いてるのかは、俺にもわからん。すべての犬は天国へ行く。
椎名林檎がこうまで女子の支持を受けているのは何でだろう。愛だの恋だの歌ってる点では旧来のシンガーとあんまり変わらないんだけど、圧倒的にリアルだと思うんだな。
それまでのラブソングって、どこか少女漫画的な綺麗さがあったと思うんだ。愛だの恋だのが持つ暴力的なものだとか、身勝手でカミソリみたいなところとか、花も恥じらうように見えて毒持つ蜂のようであるところとか、自虐的だったり自傷的であったりするくらいの自意識だとか、そういうのを真っ正面から描いたのは林檎の勇敢なところであると思う。
日本語ロックはどうあるべきか、みたいな話題って、GSは置いといて、日本語フォークロックやはっぴいえんどやRCサクセションの頃からの問題で、どいつもこいつも自分なりの答えを歌ってきた。だが、女性ロックシンガーでそれをちゃんとやった人は、僕は不勉強ながら知らない。いるんだろうけど。椎名林檎は、キャッチーでコマーシャルで、そして消費文化的で軽薄でありながら、キャッチーでコマーシャルで消費文化的で軽薄だが圧倒的に荒々しく過剰な現代女子の感覚を、日本語の淫らな音感を実に巧みに持ち込んで歌詞化した。さらに、漢字や当て字を使うことで、スタイル上の特殊さや、暗号っぽさをも持ち込んだ。どえらいオリジナルであったわけだ。
戸川純なんかも面白い歌詞いっぱい書いてると思うけど、それでも戸川純の過剰さは男性に支持される類の過剰さであったように思う。椎名林檎はいろいろセンスがよかったので、かつ、まぁ変なカッコとかエキセントリックな何かとかいろいろやっているけれど、男に媚びたものというよりは女子の感性を挑発するものであったように思う。
初期の林檎のインタビューで、「アルバム三枚出したら死ぬ」「カート・コバーンが云々」と言っているのを聞いて「とんでもない奴が出てきたものだ」と思った。確かラジオでまだ売れる前の『無罪モラトリアム』を聞いてどひゃーと思ったのも覚えている。ロックであった。
俺は亀田誠治のプロデュースとアレンジは結構好きで、スピッツとか平井堅とかDo As Infinityとかが有名だけど、びっくりすることに俺がかなり好きなんだが恥ずかしくて言えないSOPHIAとか○○○○とかも超ポップでいいセンスだと思うは思うが、林檎の1stアルバムの生楽器なアレンジが今でも一番好きである。ジャズっぽいまで行かないが、生音が絡み合う感じのアレンジはかなりクールであると思う。
とかあれこれ書くと、俺の身近の林檎女子が黙っちゃいない、バカそんなんじゃねーよ林檎ちゃんは死ね、くらいのことを言い出して夜が騒がしくなりそうだが、僕は結論として言えば、林檎はすごいと思う。
で、『Unconditional Love』は、『歌舞伎町の女王』のカップリングとして収録されております。
さらに、椎名林檎がこの曲を元に書いた詩とやら言うものがネットに転がっていたので、厚顔無恥にも転載しておく。
アンコンディショナル・ラブ
あたしは常に飢えている
何の依頼も無しに突如
与えられた身体・時間・意識
それらが奪われるのが何時なのか
はっきりとは
誰も
知らされていない其れが故
あたしは常に飢えているのだ
自分自身にも
他者に対しても
何の説明も要さない
感じるだけの愛情に
「飢え」「奪われる」、そういうネガティブな面から見ることで、愛の絶望的な強さを描いており、痛々しい。「When I see you I surrender」という感覚はよくわかるので好きな曲であったが、こうして全訳してみて、さらに林檎の詩を読んでみて、自分の彼女にはこういう感慨は持って欲しくないものだと、寝る前の徒然で始めたはずの勝手訳の続きでこんなことを書く自分は、どうかしていると思う。
勝手訳シリーズ、楽しいのでまたたまにやりたい。
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