PLAYNOTE 津田記念日『炭酸の空』

2009年06月08日

津田記念日『炭酸の空』

[演劇レビュー] 2009/06/08 11:21

昨年、4x1hにて作品を拝見し興味を持った、そしてマイミクになった冨士原直也(冨士原直哉改メ)氏の脚本と、黒色綺譚カナリア派の看板女優・牛水里美嬢が観たくて観に行った。王子小劇場にて。

地上は核の冬。地下のシェルターに集う人々。地球はもうすぐ滅亡する、という状況下。回避不能な死を前にして疑心暗鬼が生まれ、人間同士の軋轢がそれを育てる。

作者本人が当日パンフレットに書いていた通り、どん底に病んだ話であった。女は裏切る、男は襲う、叫ぶ、刺す、泣き崩れる。何が彼をしてここまでの苦痛を描かせたのだろう、と思うほど。これほど凄惨な話でありながら、悪人がいない。皆が皆、弱さゆえに道を踏み外し崖を降りていく感があって、きっと作者はこの弱さを慈しみたいのではないかしら。そんなことを感じながら見ていた。

セットがあまりに秀逸。青年団の濱崎賢二氏によるデザインだそうだが、手すりくらいの高さに楕円形のサークルが浮かんでいて、さらに一本のパイプと天井だけが切り取られてそこにある。ただ単純にカッコいいが、硬質でクールで、この芝居のソリッドな輪郭を完璧に支えていた。

出演者もよかったし、演出も的確。素晴らしいクオリティだったが、「やめてくれ」と思った。特に牛水嬢がレイプされているシーンは、演劇だとわかっているし、途中で止めるか暗転するかだろうと準備はできているのだが、「やめてくれ」と思った。結構どぎついの平気なタイプの僕で、初めての体験だったが、それはきっと何て言うか、人々の弱さが伝わってきていたからだと思うんだ。

冨士原氏の本に漂うあの終末感は何だろうなぁ。二作しか拝見していないが、この先どんなものを書くか、気になる。