PLAYNOTE チェリーブロッサムハイスクール『愛妻は荒野を目指す』

2009年06月07日

チェリーブロッサムハイスクール『愛妻は荒野を目指す』

[演劇レビュー] 2009/06/07 23:04

知的だが野性的な脚本が魅力のチェリーブロッサムハイスクールの新作公演。本当に本当に楽しみにしていて、初日に拝見。シアターグリーン Box in Box にて。

大震災により首都機能が壊滅した東京が舞台。無政府状態に陥り、特権的な地位にいる「教師」たち、「あいつら」と呼ばれるテロリストグループ、マスコミ情報網が壊滅した中、デッドストック・トーキョーという雑誌を発行する民間人、震災のPTSDに苦しむ人々などが、ある晩廃墟と化した遊園地の一角で営業している東京最後のレストランで鉢合わせる。

久しぶりに演劇作品を観て涙した。震災で壊れた東京、壊れた心を引きずる人々が、こぼす心の涙や叫びが生々しい。雨貝という「教師」が、「もう朝なんて来なければいい」と呟いた瞬間と、キュカという詩人の詩(実在なのか創作なのか、恐らく創作)が読まれる瞬間で、あんまりにも痛々しくて美しくて、目が潤んだ。

設定ややこしそうに見えるし、実際ややこしい。人物も多いし、把握は大変。なんだけど、すごく直感的に観れた。切り落とされた身体の一部が、床の上でまだ鼓動している様を見るような、有無を言わさぬ力のある、まっすぐ心や感覚を突き刺してくる芝居であった。

脚本構成が実にユニークで面白い。まずAngle_A~Cと題された3つのシーンが上演されるのだが、これが同じ時間のレストランをそれぞれ別の角度から観る、というもの。舞台が回り舞台でぎゅいんと回り、それまでAngle_Aの背景でサイレントの会話をしていた人々がクローズアップされ、何を喋っていたのか、どう噛み合っていたのか、段々とわかってくる。『その夏、十三月』の倒叙形式も秀逸だったが、この回り舞台とアングルの切り替えで物語を重層的に見せるというのも、唸った。

演出面では転換時のダンスが素晴らしかった。あれは一体どういうジャンルに括られるのかわからないけれど、手をひらひらと掲げたり身体をひねったり、という美しい動きもあるが、人間同士がひたすらぶつかり合っているような動きもあって、混沌としている。混沌としていて、観た印象は悪魔的、悪夢的。台詞や演技と同じくらい、世界観を語っていたように思う。ただ、演技に関しては相手の台詞を聞くということがもう少しあってもいいだろうとは感じた。チェリーの、押しつける台詞、投げつける台詞、相手にぶつける台詞というのは脚本内容とも合っているとは思うのだが、違和感のあるシーンがいくつかったのも確か。

こんなにヘヴィでこんなに残酷で、でもこんなに愛らしい人間たちを描く。チェリーブロッサムハイスクールらしい良い舞台でした。もう一度観たいと思わされた、今年はじめての体験でした。