PLAYNOTE アイサツ『桜の三人おじさん』

2009年06月04日

アイサツ『桜の三人おじさん』

[演劇レビュー] 2009/06/04 11:35

以前 15 minutes made vol.4 で観たとき、嫉妬するほど面白かったので今回観に行ってみた。渋谷ギャラリールデコ5階にて。

桜の三人おじさん、ということで、こういう企画らしい。

三か月ごとに、
三回連続で古典作品をリメークするぞというシリーズ
その名も三顧の礼シリーズが始まります!

三顧の礼シリーズとは?
古典作品に敬意をはらって上演するという意気込みから三顧の礼シリーズという名前にしました。同じ場所で3ヵ月ごとに三回連続でやります。コミュニケーションを大事にするという演技スタイルはそのままに、古典作品のこととかよく知らないというメリットを活かして、先入観も含めてバッサリザックリ面白い作品にします。
今回はシリーズその1です。どうぞよろしくお願いします。

桜の三人おじさん、って言うくらいだから、桜の園+三人姉妹+ワーニャおじさん、ただしかもめはどうでもいい、みたいなリミックスなのかと思ったら、『三人姉妹』を基本そのままの筋書きで上演していた。

すごく、面白かった。言葉をすべて現代口語に書き換えているおかげで、難解さはないし身近だし、それに何より登場人物のダメさ加減がよく伝わってきて、実にチェーホフ的である。チェーホフ的な喜劇の雰囲気を出すには、現代口語と、イケメン揃いでない俳優たちっていうのはポイント高いのかもしれない。

どう観てもカッコいい人たちのお芝居じゃなくて、どう観てもダメダメな人たちを描いたのがチェーホフで、そういう人たちがもっとどんどんダメになっていくのを観て笑ってくれ、というのがチェーホフ劇だと断じてみると、今回のアイサツ版三人姉妹は、一見おちょくっているように見えてかなり忠実にチェーホフを現代に持ち込んだと言って構わないと思う。

いろいろとチープな部分が垣間見えてしまって残念、というところがあったはあったし、俳優力も落差が激しい感じはするけれど、そういうちょっとダメっぽいところまで何だか好意的に見れてしまう、変な芝居であった。面白かった。

ラストの演出が圧巻。最後になって、三人姉妹が揃い、街を去る楽隊の音を遠く聞きながら「生きていかなくっちゃ」と繰り返す有名なシーン。楽隊の音、のモチーフとして、まず軍靴の音が響き渡り、それがやがて早くなってノイズのようになり、いきなり『It's a Small World』が流れ、それまでトゥーゼンバフだったりソリョーヌイだったりナターシャだったりした俳優たちば、「私バカです」と絶叫しているような脳天気な衣裳を着けて出て来る。万国旗を掲げ、変な太陽のオブジェを空に飛ばし、踊りながらティッシュで作ったような花を、センターで悲嘆を続ける三人に投げつけている。

チェーホフがこのラストシーンをどう考えて作ったか、それは想像の域を出ないが、ラストのこの演出で演出家の意図が非常によく伝わった。徹底的に登場人物たちを異化しこき下ろす。感情移入してつらい、悲しい、とかでなく、哀れで間抜けでみっともない人間たちをきちんと見せる。最後、三人が「生きていかなきゃ」なんてのをすごく重厚にやったとしたら、あの三人姉妹が偉大な悲劇の主人公に見えてしまいかねないが、あの三人姉妹も含めて喜劇的人物なのだ、それに気づいていないのはあの三人だけなのだ、ということをはっきりと描いていて、ただどんちゃんしたいだけかもしれないが(笑)、いいラストであった。

次は9月にロミジュリ、12月に源氏物語だそうだ。僕が市民劇の題材で取り上げた二作が連続するってのは何だか因縁を感じるが、楽しみにしている。