PLAYNOTE DART'S『ロング・ミニッツ』

2009年06月02日

DART'S『ロング・ミニッツ』

[演劇レビュー] 2009/06/02 23:12

よく知った仲であるfeblabo/ギリギリエリンギ・池田智哉くんと、エビス駅前バーっていうバーが合同で企画してるっぽいイベント。いろいろ興味深かったので観に行ったが、えらい面白かった。場所は当然エビス駅前バーにて。

会場は、通常営業なら15人も入ればいっぱい、というような小さいけれど落ち着いたバーで、そこに客が20人と出演者が6~7人で、まさにいっぱいのお運びで目出度い目出度い。

こういう劇場外での企画公演を、自分は実はあんまり好いていない。やっただけじゃん! みたいな場合がとても多いと思うので。劇場外だからこそのわくわく感だったりスリル感だったり、いけないことしてるような感じだったりはあることはあるけれど、いくつかそういう企画を観ているうちに、慣れてしまった。自分の中でそういう劇場以外での公演で、一番強烈だったのは、イギリスの二大主教座であり世界遺産でもあるカンタベリー大聖堂で行われた聖史劇である。あれ観ちゃうと、他はあんまりわくわくとかはない。

が、今回のDART'S公演『ロング・ミニッツ』は、そういうわくわく感とかではなくて、場所をきちんと有効に使った演出・演技でいい攻め方。リアリズムの極地である、実際のバーを使ってやるバーの芝居。バーカウンターや椅子はもちろん、グラスや棚や、トイレや店のドアまで使いまくる。すんなり世界観に入っていけるし、すんなり主人公の違和感を理解できる。

一見、すべて現実なのに、どこかおかしい。どう見てもおかしくないのに、確実にどこかおかしい。そういう現実と違和感の間で揺れる主人公の心理に、かなり楽に、すっと入って行けた。

物語の構成力が素晴らしい。脚本の力で客は舞台上の一挙一動に釘付けになり、その後の展開をはらはら予想する。かなり上質の推理小説であった。ラストで絵解きをせず、ループな雰囲気で終わった点だけは解せない。個人的にはアガサ・クリスティの最後の数十ページを読むときのような快感と驚きを味わいたかった。

同じ場所、同じ出来事、七分間がそっくりそのまま繰り返される。主人公だけは前の記憶を持ったままループし続けるメビウスの輪。最初は慌て、混乱し、戦慄する主人公だが、やがて考え、働きかけ、その螺旋から抜けだそうと動き出す。と、彼女や親友の隠していた秘密が明らかになったり、人畜無害そうなカップルの傍らが犯していた恐ろしい犯罪が露見したり。うまい。同じ出来事が、主人公の働きかけ方次第で、ちょっとずつ違う感じで起こっていく。だから観客も、次はどうなる、これは吉と出るか凶と出るか、どこかにヒントが隠されていないか? と、物語に引き込まれる。構造としてもうまいし、ディテールの描き方もうまい。面白い。smokersの広瀬格さんによる脚本。smokers自体は失礼ながら未見であるが、ギリギリエリンギにてその確かな筆致を感じていた。今回は70分油断できない、素晴らしい本だった。

役者も好演。まず熱量と瞬発力で大きく芝居を引っ張った、主人公・桐野役の島田雅之氏が良かった(ダブルスチール)。桐野の感じる恐怖や焦りや驚きが手に取るように伝わってきた。桐野の彼女である弘美役を演じた川田希氏(カニクラ)も、嘘っぽく笑う意味深げな女、よくいるムカつく感じの女を嫌みなくさらりと演じており特に印象に残った。下手側のカップルのうち女性側を演じた萱怜子氏は、以前15mmで観たときとは打って変わってぐっと艶やかな印象。伊神くん・ロックさんは「いるいるwww」と「ねーよwww」の中間を行ったり来たりするくらいのコミカルさでいい立ち位置であったと思う。まさかの出演、池田くんは、違和感なく俳優として観れました。

ずっとDoorsが流れていたのが印象的。『The End』は原曲自体が恐ろしいリピートの曲構成だが、芝居にもよくあっていたし、俺もDoors好きだからいい気持ちになれたし、Doorsカッコいいし、うん。