PLAYNOTE 架神恭介・辰巳一世『よいこの君主論』

2009年05月30日

架神恭介・辰巳一世『よいこの君主論』

[読書] 2009/05/30 23:25

Amazonのおかげでほとんど書店へ足を運ぶことがなくなったが、例外的によく行く本屋がいくつかある。新宿だったらジュンク堂。売り場面積が広く、演劇関係書や児童文学のコーナーが広いのがいいし、立ち読みならぬ座り読みを容認している懐の広さが良い。もう一つが渋谷PARCO地下にあるLIBROおよび洋書ロゴス。渋谷の中心地にありながら洋書や画集がふんだんに置いてあり、かつ店員のオススメ本のセンスが非常にいい。ベストセラーランキングのパクリみたいなオススメコーナーはどこにでもあるが、ここの本屋は店員の意地とプライドと愛を感じる。

そこで今日発見したのがこれ。本屋へ行く最大のメリットは、こういう予期せぬ出会いである。絶対検索しないもん、こんなの。小学校でクラスの覇王を目指し権謀術数をひらめかせる子どもたちを通して、ニコラ・マキャベリの名著『君主論』を紹介しよう、という、頭のいかれた一冊。素晴らしく面白かった。

目次が終わるといきなりこんな序文が。

よい子のみんなへ

この本では、クラスを制圧するために役立つ知識や、下々の者どもの心理などを分かりやすく解説しているよ。

2002年に目立小学校5年3組で実際に起こった、クラスの覇権争いのお話を題材に、5年3組のみんながどのような政略や奸計を用い、どのように盛衰していったか、ふくろう先生が詳しく教えてくれるんだ。

そしてそこから、君主を目指すきみたちにとって、ためになる普遍的な真理を引き出すことができるよ。

さあ、みんなもふくろう先生と一緒に、立派な君主になるための方法を学んでいこうね。

この後に続くページには「保護者の方へ」。素晴らしいセンスである。ふくろう先生! 見事なB級キャラクター、平易な「~だよ」口調と覇権や奸計といった言葉のギャップ、行間から滲み出る知性。たまらない。

14ページ、たろうくんとはなこちゃんがふくろう先生に会う、最初のシーンを抜粋。

たろうくん「うーん、困ったなあ」
はなこちゃん「どうしたの? たろうくん」
たろうくん「ぼく、こないだ4月にクラス替えがあったんだけど、あれからもう二ヶ月も経つのに、いまだに新しいクラスで君主として覇を唱えることができないんだ
はなこちゃん「それは困ったわね、『配下の友達』は何人くらいいるの?」

こんな調子で、ふくろう先生コーナーと、5年3組での争いの記録が交互に進む。たろうくんは割とマイルドでいい奴なんだが、はなこちゃんは三度の飯より争いが好きで、愚劣な平民を虫けらのように見下す毒の強い女の子で、大変面白い。

ただのバカ本かと思いきや、全300ページ・23章立てというボリュームでマキャベリズムをクラスでの覇権争いに当てはめて解説している。元々マキャベリには大変興味があり、彼の箴言や思想をちょいちょいメモったりはしていたんだが、『君主論』そのものを読む機会に恵まれず、にゃーにゃー言っていたのだが、こういう形で読むことになろうとは。

とにかく素晴らしいセンスです。本屋で見かけたら是非手に取ってみて下さい。

コメント

投稿者:ハマカワ (2009年05月31日 18:56)

この本が15年前にあったなら、クラスで覇を唱えるまでいかないにせよ私いじめられっ子じゃなかったかもしれませんわね!笑顔
マキャベリ私も興味ありました。読んでみます。

投稿者:Kenichi Tani (2009年05月31日 19:11)

はっはっは、全く持ってそうだな!俺もこの本があれば小学生で童貞捨てて今ごろアメリカの大統領にでもなっていたかもしれないな!ちくしょう!ちくしょう!

苛々しているので勢いだけでレス。