PLAYNOTE 犬と串『CASSIS』

2009年05月25日

犬と串『CASSIS』

[演劇レビュー] 2009/05/25 01:44

ちょっとした知り合いが出ているので観に行った。CoRich! 演劇まつりの厳選10団体に選出されたライバルでもあるわけだから、どういう顔して観たらいいんだろ、と思ったけれど、実に素直に楽しめた。今後の展開が必見な劇団である。

初っ端、何だか安っぽく投げやりっぽいハゲヅラを被ったオヤジ役の若者三人+新入社員役の女子二名で懇親会のコントから始まる。背景は暗幕一枚。セットはテーブルにパイプ椅子。全体的にどうしようもなく安っぽいのがたまらない。もちろんいい意味でだよバカヤロウ。そしてオチで突然オヤジ三人が頭から血を吹いて終わった。どうしようかと思った。

と、突然ミラクルポップな音楽が流れ、安っぽい空気感がぶっ飛び、パステルポップなお菓子の国のセットが現れ、ムービングライトがひらめきミラーボールが回り、きらびやかな衣裳の出演者たちが続々出演。どうやらお菓子のお店らしい。お菓子を食べてみんなハッピー☆

あまりに唐突だったが、この落差のセンスはちょっとしたもんだ。見物だ。「あっ」と言わされた。演劇観て「あっ」なんて思ったのって、サイモン・マクバーニーの『春琴』かこれくらいしか記憶にない。って、マクバーニーと肩を並べたか。それもすごい。他にも、頭に来るほどポップな音響の使い方や、割り切りのいいやたらとスピーディーな転換の仕方、モタつかないストーリー展開など、頭の足りないことをやっているような振りをして、きちんと考え尽くされていたりセンスがよかったりで侮れない。

その後は、脳みそが半分溶けているような多幸感溢れる王道ネタと、シュールと意味不明のスレスレを行くようなキチガイネタが交差し続け、客席を笑いの坩堝とぽかーんという穴に順番に落としていくのでありました。素直に笑える。

当日パンフレットには、「スイーツ」「妖精」「○○男子」の三つをキーワードに作った作品、とあるが、もうそんなのどうでもいい。大体何で↑の三つなんだかよくわかんねぇし。最後の方でうまくまとめたっぽい雰囲気にわざわざ持ち込んでいたのに、その後突然キキララとグラップラー・バキを題材にしたコント(意味不明)で混ぜっ返したり、メインの方のエピソードに戻って、今度こそ終わるんだ、と思ったら、最後にまた居酒屋コントが始まったりで、ストーリーなんかどうでもいいと思ってんだろ? と肩を叩きたくなる。

もはや、それでいいのだと思う。まだ初見なので何とも言えないが、あえて王道に乗ることをせず、キャッチーなんかクソくらえってくらいの意気で、自分だけが面白いと思うものをガンガン作って欲しい。心配せずとも根が相当キャッチーな人たちだろうから、突っ走って作っても十分人に伝わると思うし、そもそも感受性が誰かと共有できないような人間はいない。シャバには。

ベタ褒めみたいになってしまったが、例えばこれを王子小劇場で2500円払って観たら金返せって思うだろう。あ、でも、タイニイアリスで2000円でやってたら超応援すると思う。同じく神楽坂die pratzeで観たら「OK!」って思うだろうし、OFF OFFでもセーフ、でもシアターグリーンだとアウト、みたいな。わかるかな、この違い。毒と言うか、個性と言うかが強すぎて、溢れかえっていて愛おしいんだが、進む方向性次第ではそれが吉とも凶ともなり得るだろう。

勢いとゴリ押し能力が高いので、それに思いっきり引っ張られて俺は最高の気分だったが、劇団としての強みをきっちり自覚して、やりたいことを収束させていかないと、意味不明な団体にもなり得ると思う。難しい舵取りだけれども、心から応援したい。誰だ俺は。