PLAYNOTE 競泳水着『NOT BAD HOLIDAY』

2009年05月24日

競泳水着『NOT BAD HOLIDAY』

[演劇レビュー] 2009/05/24 09:13

次回DCPOPでご一緒する百花亜希さんが出演しており、愛しの涼くんや玲央くんが出ており、他にもいっぱい何だか知り合いがいるし劇団的にも大変世話になっている競泳水着の新作公演。池袋シアターグリーンBASE THEATERにて。

何だかんだ言って競泳水着はもう四作連続で観ており、ちょっとした常連みたいな感じがする。ピザナイトから。

怪我しちゃって戦力外通告受けた社会人野球選手と、その家族と、手術恐怖症の医者と、その周囲と、の生活と意見を、ふわっとファンシーに描く。CoRich! では評価がバーストしており、はっきり言って違和感があった。上野さんの書く本には生活における感情の機微をしっかりと拾い上げる確かな腕とセンスがあるが、今回のこれが最高傑作とは思わない。ラストのクロスワードパズルでの落とし方は安易に感じられたし、お話としても深さや広がりを感じるものではなかった。「つかみ」になる部分がなく、全員を均等に観ているうちに、感情移入せずに終わった印象。コミックリリーフが効き過ぎたがために、斜に構えて観れちゃう感じになったことも一因だと思うが、それ以上にやはり題材の深刻さに対して描写がぬるかったのではないか。

一生を費やしてきた野球という目標を捨てる瞬間の男にはもっと何かがあるように思うし、誰かのために自分を犠牲にしている女にはもっと語るべき言葉があるように思う。堀越涼演じる医師が百花亜希演じる患者の娘に土下座するシーンが心に響いたのは、そういう「語るべき言葉」がきちんと語られていたからだと思うんだ。玲央くんは変態的にいい役者だから、野球をやめる、その決断にまつわる台詞を一つ用意してやるだけで、ぐっと持ってきたろう。古い話だが、2006年末?とかに王子で観た『俺の屍を越えていけ』のラストで、四つん這いのポーズになってわんわん言っている玲央くんに甚く心を打たれたのを覚えている。

とか言う書きづらいことを書いているのも、上野氏自ら当パンに「全ては作品の出来だけで評価・判断されるべき」「どんな感想やご意見も受け止められます」とあるから。俺だってヒヤヒヤしてんだよ。ただ、俺が演劇に要求しているものと、上野氏が演劇に要求しているものが、随分離れているのだろうということはわかる。俺は劇場で日常の延長を見たいと思わない、日常の裏側が見たいし、人間の陰部暗部をポップに描きたい。上野氏は劇場に日常の美しい瞬間や切ない瞬間を持ち込むことや、見過ごしてしまいがちな日常を別の角度から見ることが大変上手い作家である。

俳優的にはまず堀越涼がクソバカにいい仕事をしていた。本当に彼は要求されていることを汲み取って、判断して立ち回ることの上手い役者だな。もちろん演出指示も多いのだろうが、シーンによって表情やスタイルをきっちり切り替える器用さ。何だ、あのカルメン流れて踊るシーンは(笑)。あれは俺が見た限りでは過去の競泳水着にはなかった要素だから、ある意味では最も今回胸が躍るシーンであった。

普段は地獄の番犬のような怪演を見せる玉置玲央はぐっと押さえたインナーな芝居で魅せる。細野今日子のけなげで自己犠牲的な姉の演技はGoodだと思うが、次回はもっとはっちゃけた役とか観たいところ。チャリT企画の高見誠二氏が素直で素朴ないい演技。ああいうの大変好き。百花亜希嬢は4x1hで見せたミミちゃんとかから打って変わって、ぐっと押さえた誠実で大人な演技。こういうこともできるのか。