PLAYNOTE elePHANTMoon『成れの果て』

2009年05月24日

elePHANTMoon『成れの果て』

[演劇レビュー] 2009/05/24 08:56

次回DCPOP出演の酒巻さんが出ているっつーだけでなく、個人的に大変好きな俳優さんである方が仰山出ており、かつ再出発の記念碑的公演であるからして観に行った。サンモールスタジオにて。

当日パンフレットにも堂々と書いてあったので今さらタブー視することもないのだろう。elePHANTMoonは前回公演を、本番数日前にキャンセルするという、演劇界で言えばA級戦犯なことをやってしまった。そこからどう立ち直るか、と注目が集まる中での、相当なプレッシャーでの上演であったが。

そういうプレッシャーを感じさせない鮮やかな作劇。堅実かつ堅牢な俳優陣の演技。elePHANTMoonらしさの象徴ですらある美しくリアリティ溢れるセット。センスのいい音響。実にバランスのいい公演であった。

脚本の塩梅がとてもよかった。elePHANTMoonらしい、人間のどうしようもなく陰な部分をくっきり描いている。例えば人物同士の口論のシーンとか、ちょっとした捨て台詞とかに、あぁ、こいつイヤな奴だなぁ、でも俺もこういうことするな、ってか○○にされたことあるなぁ、○○死んじゃえばいいのに、的な感情を呼び覚まされて、はっとする。

反面、思うことはと言えば、elePHANTMoonらしさの一つでもある直接暴力的なシーンはもはや不要なのではないか、ということ。今回も、男二人が男一人をレイプしようとするシーン、それに続いて木像で頭を強打・連打するシーンがあったが、そこよりも言葉による暴力の方がずっしり胸に刺さったし、直接暴力はどうしても演技です、安全確保してますって感じがしてしまう。他の言葉の暴力の方が、安全確保してない感じがして全然胸に響いた。直接暴力、あってもいいが、なくても十分やれる作家と俳優陣だと思うから、たまには「脱線」したelePHANTMoonが観てみたいとも思う。すごくロマンチックなelePHANTMoonとかね。

一つ言えるのは、この集団はきちんとした自分たちの演劇様式を持っており、それをプロと呼べるレベルに高めている劇団だと言うことだ。前回の公演中止で「アマちゃんがよー、本番つったらやるんだよ、俺らはさ」的な酒場の高言を吐かれたことだろうし、俺も吐いた。公演中止の咎はきっちり責められるべきではある。が、同時に、こうも見事に立ち直った、例えるなら怪我で降板した野球選手が復帰第一線で場外ホームランみたいなものだ、こういう場合には、きっちり褒められるべきでもあると思うんだ。

出演者的には、酒巻・永山両氏は相変わらずいい仕事しまくっていた。あの二人のドライな表情とウェットな絡み方、つまり、見た感じのさらっと・さっぱり感と、内実のどろっと感は、elePHANTMoonになくてはならないエッセンス。KY小説家の卵(死ねばいいタイプの女)をやっていた山口オン嬢も目の据わった電波キャラで前に出ており好感触。人物造形として素晴らしかったのが、デブのボイラー技師だか配管工だかやっていた保田康志氏。脚本的な描写としてもこのキャラクターは、ステレオタイプでないが「いるいる、こういう奴」という感じがして素晴らしかったが、俳優的にも見事に汲み取って芝居しており、良い。オカマやっとった江ばら大介氏、ひたすら歯を磨いていた石井舞嬢もナイスアクト。どの人もそれぞれの個性がありながら、elePHANTMoonっぽい世界観を構成している点は、演出の妙でもあるのだろう。

面白かったっす。今週観るならelePHANTMoon。復活、場外ホームランおめでとうございます、皆様。