PLAYNOTE 三谷幸喜監督『THE 有頂天ホテル』

2009年05月15日

三谷幸喜監督『THE 有頂天ホテル』

[映画・美術など] 2009/05/15 13:20

何を今さら、な鑑賞。風邪が治らなくってうんうん唸りながら、ベッドに寝ながら。次回公演の参考に。もはや説明する必要もない、三谷幸喜作による超豪華キャストによる正月映画。

泣きました。どこだかあんまり覚えてないが、香取慎吾が西田敏行と歌うとことか、そういうベタベタなとこで。

三谷作品としては別段いい出来ではないように思う。群像劇って言っても人物が多過ぎる感じ。きちんと伏線は回収してるしプロットの入り組み方も巧緻だが、ケーキで言ったらデコレーションはおいしい・美しいが、中のスポンジがちょっと固いな、みたいな。主人公であるはずの新堂に関するプロットが甘く、むしろ脇筋であるはずの代議士・武藤田とかベルボーイ・只野とかのプロットの方が感情を終えちゃう点は、見終わってみると残念。

でもそんな映画で泣いてしまう。ベタベタだから素晴らしいんじゃなくて、人間の純粋なところが描かれてるから泣いちゃうんだと思う。絵本とか読んで泣いちゃう感じ。だから、これは、人生のパロディであって、人生の戯画化であって、別段ひとつもリアルじゃないんだが、こういう正月映画にリアルは要らないんだ、ということもよくわかる。

すごく感情移入して観てしまったのは、主人公が「新堂」だから、だろう。もともと、演劇の世界で舞台監督をやっていたらしい。ご存じ、三谷幸喜の傑作、『SHOW MUST GO ON』の主人公も新堂である。こういうパラレルリンクにやられちゃうとかどんだけ単純なんだよ俺の脳は、と思うが、あれだけ舞台に熱を注いでいた男が、その後「食えないから」と言ってすっぱり舞台を辞め、ホテルに勤めている…ということがさらっと語られたとき、何だか自分が年を取ったような気もしたし、三谷幸喜の中で時間が流れたことを感じたような気がした。かつて、がむしゃらで血気盛んな舞台監督であった男が、今では夢を捨て現実的な職に安定を得て、ベルボーイが歌をあきらめようとするのを止めようとしたりする。「若者が夢を捨てるのを見ると、口を出したくなってしまう」。そんなことを新堂が、あの新堂が言っていた、ということに、軽い衝撃を覚えたり。よろずはどうなってしまったのかしら。

新堂の立ち位置の変化は、三谷幸喜の立ち位置の変化ときっとリンクしているのだろう。かつてサンシャインボーイズでがむしゃらに突き進んでいた若い男が、若者を達観し背中を押す初老の男になったということだ。感慨深かった。

とかいう与太話は置いておくにしても、ストレートに笑えてストレートに感動できる、よくできた「日曜日のための」映画であった。