PLAYNOTE ショート7回想

2009年05月14日

ショート7回想

[公演活動] 2009/05/14 19:14

公演が終了してもう十日が経ちました。もうほとんどこの公演のことなど覚えていない人、二度とこの公演のことを忘れられない人、まだ負った傷から立ち直れずにいる人、様々かと思いますが、まずはご来場、どうもありがとうございました。おかげさまでDULL-COLORED POP史上最高動員、1111名(概算)もの方々に観て頂きました。また、この土方のようにハードで修道僧みたいにスピリチュアルな現場に携わってくれたすべての方々に、ありがとうより愛してるをぶん投げつけるぜ。

内容について(再演六作)

短編七つもあったら面白くね?

一つにはそういう単純な発想で企画した公演で、かつ、DULL-COLORED POPの作品をずっと観続けてくれているお客さんたちでも観たことがないようなレア作品を一挙上演しよう、というところから出発し、だったら短編だし、一本一本に小劇場のスター俳優さんを招いて主演してもらおうじゃない、っていう形を取り、ああいう座組が成立した。

再演モノに関してはそれぞれ様々感想が違うが、今正直に感じることは、僕はもう当分再演はやらないだろうということだ。バンドだってベストアルバム出し始めたらもうクリエイティビティとしては落ち目だし、作家もリライトなんか始めたら警戒した方がいい。結果的にどれもほぼ初演みたいな気持ちで臨んでいた、それは、どれも初演時の稽古回数が異常に少なく(『息をひそめて』なんかは三回しかなかった)、新しく作り直すというよりは「成仏させる」みたいな意図が強く働いた結果だろう。

『ソヴァージュばあさん』『Bloody Sauce Sandwich』なんかは自分で演出するのは初めてだったから、初めて作るも同然なんだけど、どちらも初演時の演出や演技にインスパイアされている部分も当然あって、でもオリジナルなものがやりたくて、一番「再演」って感じが強かったのはこの辺か。『ソヴァージュ』は最初からゴールが見えていて、心強くあったけれど、俳優たち、および演技指導のせりさんとの絡みで生まれ変わっていく様が新鮮であった。『Bloody』は珍しく演出で迷った作品で、本番一週間前にがらりと観せ方・やり方を変えたのは自分でもテンパったし出演者もテンパったろうが、自分が演出の仕方がわからない本という意味では、今後の自分が成長していくための種子が潜んでいるような予感のある作品だった。

手強過ぎたのが『アムカと長い鳥』『藪の中』の二本。いずれもDULL-COLORED ANTI-POPという「ポップじゃなくていいからやりたいことやろう」っていう企画公演で手掛けたもので、スタイル的に思い切りが良すぎる(『アムカ』の独白の使い方や、『藪の中』のミニマリズム)から、手強いのは予想済みだったんだが、一人芝居というフォーマットも大変だし、かつ、七作品中一番古い二作だったので、今と昔のギャップみたいなものを強く感じた。原石であるがために最も自分らしく、かつ愛着のある本だが、同時に自分らしいということは憎むべき対象でもある。そういう愛憎にまみれたクリエイションをよく助けてくれた清水・堀越両氏には足を向けて寝れない。

『息をひそめて』は四月の上旬にはあらかた仕上がっていた感があったが、そこから安定させていく作業が大変であったが、総じて稽古していて楽しい演目の一つだったな。佐野くん・のりちゃんという稽古場的に言ってポジティブな人たちがいてくれたおかげだろう。なっちゃんと二人の相性もとてもよく、最初にみんなでお茶をした三月の午後を俺はよく覚えているのだが、その空気が最後まで感じられた希有な作品であった。『15分しかないの』に関しては、まぁがらっと立ち位置・動き方を変えたが、変えるに至るまでの試行錯誤のハードさが大変記憶に残っている。が、全く同じ内容で、台詞や役の解釈を多少いじっただけで、『15 minutes made』と併せて二度観たお客さんにも新鮮な驚きを与えられたことには満足…と言うより救いを感じている。

総じていずれも一つの作品として観れば充実した稽古場であったが、七本もあるため、一個がうまくいってるときには他の二つがうまくいってなかったり、五個はゴールが見えた頃に一つが群れを迷い出す羊になって演劇牧場の広大さに投げ込まれたりで、いいか、正直に書くが、大変だった。誰だ、七本もやろうとか言い出したバカは? 俺だよ。

内容について(新作)

反響も大きかったことだし、新作だし、長めに書こう。

おしっこの話はいずれ書きたいとずっと思っていた。最初はもっとポエムな内容であった。『そして、私は神様にひざまづく』というラストの台詞が決まっていて、神、あるいは崇高なもの、あるいは愛のためにひざまづく女の子の話であった。一度はなぜかアメリカのデトロイドを舞台に書いたこともあった。自動車修理工のマークだかモーガンだか言う男が主人公で、メジャーリーグの応援と飲尿が趣味、グリースの染みついたズボン、低所得者特有の獣っぽさと愚直さ、そういうものと、小綺麗なフラットに住む画家志望の女の子と、そのパトロンをしている男が出てくる話だった。これは、ページ数にして十枚くらい、上演時間にして二十分くらい書いたところで破棄した。書いたのは、昨年の四月か五月、そう、『ソヴァージュばあさん』を書く以前に4x1hに渡そうと思っていた作品である。今思えば、『ソヴァージュ』にしておいて本当によかった…。デトロイドって。五大湖と自動車産業の関係性についての独白があったりして、実に混沌とした作品であった。

おしっこの話を書きたい。が、別に俺は飲尿が好きではない。おしっこの話を書きたい。が、シンプルで、ストレートな話にしたい。おしっこの話を書きたい。が、観た人にグロテスクな印象を与えない、ポップなものにしたい。どうしたものか、どうしたものかと考え続けて、ある日突然「飲尿×ミュージカル」という革命的なアイディアが閃いた。

結果は、大成功である。岡田あがさをDULL-COLORED POPらしく、かつ印象的な台詞とビジュアル(冷静に見るとすごい服と髪型をしてるんだ、ツインテールだぞバカ)を与えて劇化する。難題であったが満足である。ただ、あがさちゃんにはもっと複雑な役をいずれやってもらいたい。『小部屋の中のマリー』のマリーのような起伏のある役や、『セシウムベリー・ジャム』のナターシャのような複雑な内面のある役。彼女は役を愛してくれたようだが、僕はもっとひねくれた役の前で悪戦苦闘している岡田あがさと稽古場で会いたい。そういう叩き甲斐のようなもの、演出的にそそられるものを感じる女優であった。小林タクシー氏が参加してくれたことも大きい。以前のプランであったデトロイドの自動車修理工がおしっこを飲む様は、ポップではない。かつ、ミュージカル化するにあたって避けられない歌唱力の問題を、割と楽しみながら解決してくれた、かつシリアスにならずにやってくれる点は見事である。そして皆様、なおちゃん・千葉くんが何気にいい仕事をしてくれているのをお忘れではあるまい。DULL-COLORED POPの代表作の一つである『小部屋の中のマリー』はこの二人が中心となるストーリーだが、そのときのマリーと安城、今回のナコと店主のギャップに驚け。大変DULL-COLORED POPな役者である。

飲尿女神と呼び習わしていたスポット出演のおしっこガールズに、あれだけ豪華な布陣を迎えられたというのもありがたい点である。短編公演だからできた荒技。まさか他劇団の看板女優を呼んで、「すいません、出番は90秒くらいで、しかもおしっこする役なんですが…」とは言えない。いや、たまには言っていいかもしれないが、俺はまだそんな大物じゃない。ハマカワ・のりちゃんの二人は期待通りの仕事だし、なふちゃん・あきちゃんはもはやこちらがまるで想像していないレベルで立ち回ってくれた。まさかあきちゃんがあんな吹き飛び方(あの時の彼女の脳波を計測してみたい。何が起きてるのか?)するとは思ってなかったし、なふちゃんは台本の時点では面白くもない台詞(「計画的な人間はもともと借金なんかしないんだよ」)を、勝手に、かつ最善の形で演じ変える素晴らしさ。まさに飲尿女神たちである。

そして彼をクレジットし忘れてはならない、伊藤靖浩。『JANIS』が終わった後の頃(『JANIS』に彼は歌唱指導・音楽監督として参加してくれていた)、「次一緒にやるときは、いずれ、もっとでかい現場で会おうぜ」とか言ったのを覚えている俺だが、まさかPit北/区域で、しかもおしっこミュージカルで、さらにたったの半年後に再会してしまった。でもまぁあのキャッチーな作曲センス、アドリブ含めて見事な演奏対応力、しかも俺のくっだらないギャグ(「この店で一番おしっこが好きなのは僕です」や舌打ち、おしっこ一気飲み)を俄然受け入れてくれる仕事人パワー。ギャラ払ってんだから当然でしょ、ではなく、児童劇団いたそうだからわかる、でもなく、作品を解釈する能力に助けられたという実感である。

とまぁ、いろいろとうまくいった芝居ではあった。キャスティングもばっちりだし、プロットも明確だし、つかみ・くすぐりにしてもオチにしても、行動・反行動の描き方にしても、その他戯曲構造としてもうまくまとまっていたし、演出的にも結構テキトーというか、何やっても許されるみたいな土壌に持ち込めた(照明・松本大介の新たな、そして懐かしい顔を見た)のも良かった。

良かったのだが、同時にやきもきとしたものを感じてもいる。『エリクシールの味わい』は、DULL-COLORED POPでありながら、かつ自分の仕事・能力・キャリア・センスの着実な結晶でありながら、ちょっと違うのだ。例えばそれは騒動舎時代の俺だったり、ミュージカル演出を経た俺だったり、市民劇演出でバランス感覚を養った俺だったり、の結晶ではあるし、脚本の中にうごめく暗いもの、反骨的なもの、何かをバカにしている態度などはDULL-COLORED POPな俺なのだが、この先こういう作品をやっていく劇団ではない。いや、こういう作品はやってもいいのだが、観客の受容の形として、「面白かった!」と満面の笑顔で言えたり、「最高でした!」と素直な心で言えたりするものを、自分は演劇の最高の形として捉えているわけではない、というジレンマである。以前、『セシウムベリー・ジャム』という芝居で、ある回、大変すべてがうまく噛み合い、終演後、拍手が一切鳴らなかったことがある。端的に言えば、俺がDULL-COLORED POPで目指している演劇とは、そういうものなのだ。消化できないものを劇場から持ち帰って欲しいのであって、日常の辛さや苦しさを忘れるエンターテイメントにしたいのではない。いや、やってもいいし、やれたら素敵なんだけど、それは俺よりも他の人の方がうまくやれると思う。映画でも、お笑いでも、アニメでも。

だがこういうことをわざわざ明文化しているところに自分の迷いがあることも間違いない。自分はもともと非常に底の浅い人間で、最初に買ったCDはZARDだし、中学生の頃はご多分に漏れずMr.Children聴いて泣いてたし、好きな漫画は『ROOKIES』だし、『ライフ・イズ・ビューティフル』とか『ファインディング・ニモ』で号泣してしまうような類の人間だ。ポップなんだよ、大衆文化なんだよ、俺は。そういうのに背を向けて、眉間に皺が寄るような作品を作ることに、多少のためらいを覚えていることも事実だ。少しそこはこの先考えたい。

興行的に言って

こんな内幕、ふつう主宰がブログに書くこっちゃないが、赤字であった。

マジで!? って誰もが思うだろう。高額なセットも持ち込んでないし、衣裳費だって小道具費だってずいぶん節約したし、劇場費もお値打ちなところだし、一日三ステージもやったし、何よりほぼ毎回満席、1111人も動員したし。赤字は出なかったから、出演者やスタッフへのギャランティーは出せるが、劇団会計に全く残らない。当然、俺や劇団員のギャラなどない。ちなみに第六回公演以降、ずっと赤字である。バラしちゃった。

一体どうしたら小劇場経営はうまくいくんだろうか。もう全然わからなくなってしまった。ロングランで黒字化できるという夢はもとうに捨ててしまった。たとえば美術費・小道具費・衣裳費なんかはロングラン化で割合的には減らせるだろうが、すべての製作費を合わせても二日も劇場を回せば人件費で消えてしまうだろう。劇団的にうまくいっていると言っていいだろう。今回もCoRich!では十日近く一位だったし、話題性もあったし、何より劇場はほぼ常に満員であった。ありがたいことに次回も観たい、あるいは次回こそ観たいという声もよく聞くし、いいものを作っているという自信はある。将来性はある。ビジョンも夢もある。ないのは金だけだ。

助成金をとらなくちゃいけない。あるいは、スポンサーをつけなければならない。あるいは、どっかのプロダクションなり事務所なりに買い取ってもらったら状況は変わるかもしれない。やれることはいくらもあるが、一つ言えるのは、単純に興行収入だけでは回せない、という、確信に近い予想が立ったということだ。頭が痛い。

もう一つやれそうなことはと言えば、チケット代を上げる、割引を減らすなどの収入の増加だ。だが、今やっているDM割引はやめたくない。新しくDULL-COLORED POPに興味を持って観に来てくれた人々も大事だが、ずっと観続けている人たちを切り捨てたら劇団としての将来は暗い。学割も絶対にやめる気はない。うちみたいな小劇団が提唱することではないのかもしれないが、学生にこそ芝居は観せなくちゃならない。そうでなければ演劇の未来は暗い。かく言う自分も高校生・大学生のときに学割にずいぶん世話になったが、まだ将来の定まっていない学生や、これから演劇をやっていこうという若い奴が演劇を観る気になる状況を用意することは、劇団としてっつーよりも演劇人としての使命だろう。

最後に

長くなったが、いろんな意味で自分の立ち位置を考える公演であった。

作家的には、フライヤーの煽り文で書いた通り、在庫一掃セールなのだ。割とテキトーに第一期、第二期DULL-COLORED POPなんて言葉を使っているが、第一~三回が第一期、第四~七回が第二期だとしたら、『ショート7』は間違いなく第三期の始まりだ。正確には、過去の短編を在庫処分して、自分の作風なり力量なり方向性なりを見定めた上で次に行く。いい区切りではある。

次回公演、『マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人(仮)』では、今回とは真逆のことをやる。今回は俳優力に焦点を絞ったミニマリズムの演劇と言えるが、次回は美術も衣裳も含めて総合的にスケールの大きな演劇をやるつもりだ。演劇の根源は俳優の身体にあるが、かと言ってずっと実験公演ばかりやっていては先行き不安だ。次回公演ではうちの親父とお袋を呼ぼうと思っている。そういう層にも見せられる演劇をやりたいし、やれるようにならなきゃならない。内容的には相変わらずヘヴィなものを扱いたいが、そんな自分とエリクシールな自分との間で、どこに重心を置くか。

つい最近二十七歳になったんだけど、まだ悩むには早いとは思うんだな。作家性なんてのは三十過ぎてから勝手に定まってくるもんだと思うから、今から自分を規定する必要はない。でもでも、DULL-COLORED POPの大原則である、「やったことねーようなことをやる」に基づけば、次はこの舵の切り方は合っているのだと、割と強気に思える。

『ショート7』はお祭りのような公演であったが、その分いろいろ、冷静に物事が見えてくる公演であった。劇団的にも、自分的にも。次は八月、新宿シアターモリエールです。

感想など

頂いた感想、レビューなど。

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